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チートゲーマーへの反抗〜虹と明星〜

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L6話 Demon【魔王子】

 
前書き
タイトル通りですよ…… 

 



「どこだ……?この辺から匂いが———」


那由多は先ほどまで行動をともにしていた速人たちと別れ、1人で校舎の外を探し回っていた———理由は1つ。禍々しい匂いがしたからだ。バカバカしい理由ではあるが……

この世界は馬鹿馬鹿しさで構成されている。


ふと那由多の近くを男が通る……その時。


「う、うわぁぁぁぁ!!」
「!!!!」

男の体はみるみる異形の存在へと変貌を遂げ、その声を尖らせてゆく———エンジンを擬人化したような怪人 モータスバグスター。


【グゴオオオオ!!!】

「マジかよ……早く元に戻さねぇと!!」


那由多はすぐにショットライザーを手にして変身準備をしようとした……が、那由多はもう1人の気配に気づく。

現れた壮年の男は那由多と面と向かう。


「そこの君、下がってろ。」
「あ…?誰だお前?」
「———君も仮面ライダーか。でも変身する必要はない……こいつは俺1人で十分だ。」


男は黒いドライバーを腰に装着する。


【デモンズドライバー!】


「この葉月稔(みのる)……この身を捧ぐ。」
「葉月…?」


【スパイダー!】


蜘蛛が描かれた特殊なハンコ———その名もバイスタンプ。そのハンコをデモンズドライバーの上部に押印する。


【Deal…】


天から垂れた蜘蛛が、糸とともに垂れる。稔はバイスタンプを天上高く突き上げ、神に祈るようにその願をかける————そして。


「変身!」


【Decide up!】

【Deep.(深く) Drop.(落ちる) Danger…(危機)】

【(仮面)Rider Demons!】


蜘蛛が糸をぐるぐると穂へと巻きつける……やがて蜘蛛の巣が出来上がり、それを装甲と化かす。蜘蛛の如く複数の複眼と蜘蛛の巣のような胸部————仮面ライダーデモンズ。



〜〜〜〜〜


【俺のスピードについてこれるかぁ!?】


モータスはバイクの如くスピードで移動して変身したデモンズを翻弄しようとする。

しかし……


「はぁっ!!」


デモンズの大きな蜘蛛の巣が周りを移動するモータスの身動きをストップさせ、そこに思い拳がクリーンヒットする。


【ぐはっ!】

「スピードの速い者の防御は脆い…悪いがすぐに決めさせてもらう。」
【まだまだ…!】


デモンズは糸に絡まったモータスをそのまま蜘蛛の巣の中央にして、完全に晒し者……捕食を待つ獲物と化す。余裕のできたデモンズはドライバーの盤面にスパイダーバイスタンプを再度押印する。


【Charge…】

そしてベルトの両側を押し込む。

【デモンズフィニッシュ!】


「はぁぁぁぁっ!」

助走をつけてジャンプしたデモンズは、8本の蜘蛛足を自身の右足に覆わせたジャンピングキックをモータスへと直撃させる。

【グワァァァァ!!!】


その威力は凄まじいもので、モータスの体はそのまま10数メートル飛んでいってしまい、その姿を元の人間へと戻すことに成功する。


「ふぅ…」


デモンズはそのまま変身を解除し、その戦いを息を呑んで観ていた那由多に近寄る。


「君、名前は?」
「名前?———中川那由多。すぐ近くの結ヶ丘高校に通ってる。」
「そうか……結ヶ丘の———私は葉月稔。またの名を仮面ライダーデモンズ。」
「デモンズ…」


『どうだ?デモンズドライバーの調子は?』


「「!!!」」


突如割り込んできた声……2人はその声の方へと振り向く———と、那由多が叫ぶ。


「エルシャム王!?」
「よ、バルカン。久しぶり……でもないか。」
「何でアンタがここに……?」
「デモンズドライバーは元々俺が持っていたものだ——それをコイツにあげたんだよ……なぁ、稔。」


エルシャム王 小原魁は穂の方を向いて人たらし感を漂わせるが———穂の顔は曇り、先ほどまでは微かにあった愛想の笑顔も消え失せてしまう。


「俺はアンタから奪ったんだ。もらった覚えはない。」
「何言ってんだ。俺が城への侵入者に気づかないとでも思うか?ましてやそこで物を盗るなんて行為が俺の許しなく行われることはない———そうだろ?息子よ。」
「息子…?」


那由多は不思議そうな面持ちをしていると、魁は那由多の方を向いて事の経緯を説明する。


「コイツは俺の息子——正確には俺の二男だ。」
「俺はもうアンタの息子じゃない。俺は家を捨てて葉月家に婿入りしている……だから息子って呼ぶな。俺だってもう30過ぎだ。息子って呼ばれる歳じゃない。」
「ま、好きにすればいいさ……」


不敵な笑みを浮かべながら魁はその場を後にする。それに続いて穂もその場を立ち去ろうとするが、那由多はそれを止める。


「ちょっと待て!———アンタも仮面ライダーなら俺たちと戦ってくれ!!」
「……お前は何のために戦っているんだ?」
「は?」


突然の質問に那由多は困惑するが、穂はそのまま話をすすめる。


「戦う理由もないのに仮面ライダーになるべきじゃない——もし理由がないのなら、今すぐそのベルトを破棄するべきだ。」
「何…?」
「理由もなく異形の力を振るうのならばそれは悪人とほぼ変わらない……それを心に留めておけ。」


穂はそう言うと、一枚のメモを渡される。


「俺の連絡先だ。困ったら掛けてこい。それじゃ。」


覚悟ある男の背中は一般よりも広く…大きく…強く見えた。


そんな男を……陰で見る者がいた。


「中川那由多に葉月穂か……雑魚だな。」




————※————




「一位!?!?」


千砂都の驚きが響く。


「ハイ。この近くのスクールアイドルが揃って行われるフェスで……」
「それが代々木スクールアイドルフェス?」
「その大会に出て結果を残すことで部の活動を認めるって。」
「うわー!いきなりのステージで結果を残せって……王様も無茶なことを———ドンマイ!」
「「まだ終わってない!!」」
「ごめんごめんw」


あたかも部の設立の計画が失敗に終わったかのような口調に、かのんと可可は全力で否定する———正確にはそういう願望。

ところでそんな話に一向に混ざらない速人……千砂都も困惑しながら、声をかける。


「で…速人くんどうしたの?」
「——————」
「速人くん!?」
「負けた……」
「負けた?」
「あ、いや——何でもない。」


我に帰った速人は早速、千砂都に相談をする。


「それで千砂都……少し頼みがある。」
「頼み?」
「さっきも言ったが、俺は仮面ライダーとしてスクールアイドルを守る役に就く。かのんと可可で作詞作曲衣装を作るわけだが…」
「私たち振り付けとかダンスとか全然知らないし、最近スクールアイドルのレベルってスゴいらしくて——もしよかったら!」
「モシよかったら!!」
「ダンスを教わりたい……って、2人が。」


かのんと可可の意思を察知した速人が2人よりも先に頼み事を言う。少し息を吐いた千砂都……すぐさま2人に向かって返事をする。


「わかった!ちぃちゃんの授業料は高いよ〜?」
「いいの!?」
「うん!私でよかったら是非!」
「これでダンスは百人力だー!」


交渉成立———というよりここまで速人は何ら問題なく未来が見えていた。彼にとってはただの通過儀礼、いわゆるフォーマルな頼み事の形態……面倒な話だ。

話はさておいて、千砂都は先ほどの速人の言葉の意味を聞いてくる。


「速人くん、さっき負けたって言ってたけどどういう意味?」
「え、速人くん負けたの!?誰に!?」

速人は常勝無敗が当たり前———彼女らとて負ける様子などほとんど見たことがなかった。故にその単語が出てくること自体が非日常であった。

幼馴染2人と可可が興味津々に聞く中、速人は思い口を開ける。


「あぁ……負けたよ。エルシャム王 小原魁に。」
「王様に?——でも何もしてなかったデス。」
「?……気づかなかったのか?アイツが部屋に入ってきた時、一瞬でその部屋の温度が下がったんだぜ?」
「またまたハヤトさん冗談がお上手デスね〜!」
「「………」」


可可は嘘かと思うかもしれないが……幼馴染2人にはそれが嘘とは到底思えなかった。


「でも武器も何も持ってなかったよ…?」
「俺が恐れたのは武器じゃないさ、かのん。俺が恐れたのは底知れないオーラだ———普通のやつならすぐに跪いていたような圧倒的な威圧感……」
「「「……」」」ゴクッ
「それに武器なら背中に背負ってた。あの武器も相当ヤバい———鬼に金棒、龍が翼を得たようなもんだ。」

あまりの仰々しさに流石の千砂都も疑いの声をあげてしまう。

「そんなに強いの…?」
「俺が本気で怖がったのはこれで2人目だ——やっぱり生半可な気持ちじゃ戦えない。お前らを守れない。」
「速人くん……」


そこで千砂都は思いついたように手を叩く。


「そうかわかった!」
「ちぃちゃん?」
「その王様があの黄金の戦士なんじゃない?」
「確かに。でもなぁ……この前会った時は剣なんて持ってなかったし——」
「え、かのんちゃんたち黄金の戦士に出会ったの!?」
「うん——だから…」


かのんが話を紡ごうとすると可可が間に割って入る。


「違いマス!あの黄金の戦士はもっとスバラシイ……そう、天帝様です!」
「天帝様——神様ってこと?」
「ハイ。あの星のような輝きは天帝さま以外アリエマセン!!」
「「うーん……」」


3人が予想をしているが……速人にはその正体に目星はついていた。



————※————




さて今日の買い物を済ませたところで、俺 伊口才は自宅へと戻ってきた。


「さ、店番はオートメーションに任せてるし、ゲームでもする………ん?」


2階に上がると物凄くいい匂い。いわゆる心こもったご馳走の匂いがする。

ダイニングを見てみるとあら不思議、ホームパーティのような量のご馳走が置かれているではないか。



さらに台所側に行くと……置き手紙付きのカレー———それも高級食材ひしめく。このカレーを俺は知っている。


「『貴方のために作ったの♡残さず食べてね♡』———うわぁ……」

さてさてさて……まずこのカレーライスを素直に食べるわけにはいかない。食べれば間違いなく不都合なことが起きる———

「よし、これはどこかに捨ててしまおう!」

俺はカレーの入った皿を持って焼却炉へと向かおうと脚を動かそうとした————



「何……してるのかな?」
「!!!」


刹那、どこに隠れていたのか現れた女性———声からして、みかん色の髪にアホ毛の生えたあの女だ。俺はとんでもないスピードで振り返る。

後ろにいたのはあの高海千歌———当然「あの頃」とは違って、現実離れしたグラマラスボディの持ち主に成長してますが……ハイライトオフの時の怖さは「相変わらず」。


「うわ……」
「私『たち』才くんのために愛情たっぷり込めて作ったのになぁ——それを何の躊躇いもなく捨てるなんて…」
「あのなぁ———」
「でも私はやーさしいから、そのカレーその場で食べてくれたら許しちゃうよ♡」


コイツ———待ち伏せして上がったな……が、別にそんなことどうでもいい話だ。


「ったく、この毒入りカレー…その他変なトッピング付きのコレを食べろと?」
「そうだよ♪」
「なるほど———『断る。』


俺の眼はパッと見開き、先ほどまで身につけていた黒スーツが一瞬にして、漆黒の袈裟と変化する———ハイパーロード/ムテキ(M)の降臨だ。

そしてそのままカレーをツンとつつき……光の粒子にして消す。


『こんな穢らわしいモン喰えるか。』
「なんてこと……あーあ。『時間切れだよ。』


千歌のオレンジの髪が白く輝く虹色の髪に変化していく……そう、彼女の人格が完全に表に出る時間は切れた——というわけだ。

そう目の前にいる彼女は——ハイパーロード/Aqoursだ。

早速彼女は激怒して俺に近づく。


『この私が作った料理を今この場で破壊するなんて——いい度胸ね?』
『お前の唾液入り…正確には毒液入りカレーなんて食いたくないな。』
『別にいいじゃない。どうせ毒なんてあなたには効かないんだし。』
『俺に効かずとも、お前の毒液はヘタすると世界を滅ぼせるんだから、自重しろバカ。』
『ふん……!』


ぷくーっと顔を膨らませて不満げなハイパーロードA。しばらく2階のダイニングを歩いていると、額縁に入った写真——ちょうど速人・那由多・かのん・千砂都の写ったそれを手に取る。

すると先ほどまで怒っていた彼女は一転して恍惚な表情を見せる。


『はぁ…かわいい♡あの子たちの姿を見るだけで私は幸せだよ…♪』
『その意見だけは、少し賛成だ。』
『へぇ?それは違うでしょ?貴方はあの子たちを傷つけて楽しんでる———愛する子供達を傷つける人がそんなこと言う資格はないわ。』
『バカ、俺をサディストみたいに言うんじゃねぇ。この地雷女神。』


俺がアイツらを愛していないなどと宣うのには、流石に俺も怒る。
確かに楽しんでいるし一部否定はできないところもあるのだが……しかし俺の中で、傷つくこともまた成長であると確信している。

しかしハイパーロードAはなおも俺を批判する。


『貴方がドSなのは紛れもない事実でしょう?』
『俺が一体お前に何したってんだよ?』
『私も貴方に散々弄ばれました……私は身も心も貴方に依存しているというのに、貴方はどうせ私を孕み袋程度にしか思ってないのでしょう?そして都合が悪くなったら私をヤリ捨てて何処かへ自由気ままに旅立ってしまう———ほんと、最低の男ですわ!!』
『……盛りすぎだ。』


俺があたかも倫理観のぶっ飛んだ頭のおかしい神に見られるデマを言うので、コレは訂正したい。
実際事実なのはドSであることと勝負を楽しんでいることくらい。それ以外は全部彼女の妄想だということを理解してほしい。


『そして今現在も———貴方は【あの子】の体に傷をつけた。全く…どれだけ私を怒らせれば気が済むのかしら。』
『……ったく、それは成り行きでああなったんだから仕方ねぇだろ。』
『次あの子を殺すようなことがあれば……ふふっ、お覚悟を♪』
『俺と戦おうって言うのか?』
『ご想像にお任せするずら♪』
『思い出したかのように方言使いあがって……』


9人の人格が統合した存在ゆえに喜怒哀楽がコロコロと変わる。正直俺が1番苦手なヤツと言っても過言じゃない……無論、彼女にとっても俺は1番腹が立つ存在だろうが。

さて……そろそろ時間だ。


『最後に忠告しておくわ———私の可愛い子供たちを傷つけないで。』
『はいはい。』
『聞いてるの?もし破ったら……わかってるよね?』
『うーん。』
『死んじゃえばいいのに……じゃ、また会いましょ。』



そう言って彼女はどこかへ転移してしまう———俺は元の人間の状態へと戻る。


「死ぬ、か…..やなこった。」



————※————



「はぁ…はぁ…はぁ…」


街中を体操着で駆けるかのん。今絶賛千砂都によるレッスン中である。そしてそんな彼女の横を猛烈なスピードで横切る陰……そう、速人だ。


「速人くん!」
「俺もちょーっと鍛えなきゃいけねぇんでな。ちなみにこれで20週目な。」
「まだ3分くらいしか経ってないけど…」
「じゃお先!」


そう言って速人はかのんを抜き去って、彼方へと飛んでいく———一方。


「あぁ…はぁ……」
「えっ、可可ちゃん!?」
「まだまだ…デス……!」


ちなみに可可は未だ3週目……つまりかのんから2周遅れである。これは後先が思いやられる。

さて監督として3人を見ている千砂都の隣で、座禅を組み瞑想しているのは戻ってきた那由多———これは彼が1番苦手とする鍛錬だ。


「(心を鎮めて無にする……雑音を耳に入れるな。)」


何か瞑想の趣旨を間違っているような気もするが……


〜〜〜〜〜



「きょ、今日はこのへんでカンベンしてやるデス……く、苦しい…パタリ」
「可可ちゃん……まさかの体力ゼロ———」
「もう全然ダメじゃん!!なんでそれでアイドルやろうと思ったの!?」
「『キモチ』デス!!スクールアイドルで一番大切なモノはキモチですので!!」
「な、なるほど……」


千砂都の苦言をたった一言で吹き飛ばす可可。これでは諦めるように促すのも不可能。


「ちなみに…リズムゲームなら完璧なダンスコンボを繰り出せますヨ〜あ、それシャンシャンシャン!」
「それはいいかな…」
「でもリズム感はあるってことだよね。」
「—————」


速人はある事を考える……可可の奏でるリズムゲームの音の中で———

ちなみにこのゲーム……伝説のスクールアイドルの歌が収録されたリズムゲーであることは余談である。


シャンシャンシャン!シャンシャン!


「あー!!!うるせぇお前ら!!」
「え那由多くん!?まだ瞑想してたの?」
「ああそうだ!!俺が苦手な瞑想してる中で妨害すんな!」
「———そうか!わかったぞ!!」


速人が急に思い立つ。かのんが尋ねる。


「どうしたの速人くん?」
「リズムゲームにダンス……そして体力増強。ちょうどいい方法がある!」





速人の考えとは……?




 
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