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イベリス

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第六十九話 恋愛について考えだしてその二

「まさに」
「やっぱりそうですよね」
「在原業平も失恋しています」
 六歌仙の一人であり美形として知られている彼もというのだ。
「中原中也も有名ですね」
「詩人の」
「あの人もです」
「失恋したことがありましたね」
「このことはご存知ですね」
「はい」
 咲もこう答えた。
「小林秀雄さんと何か」
「三角関係の様になり」
「女の人に去られたんですね」
「そうです」
 速水は咲に話した。
「写真を見ると美形と言っていいですが」
「中原中也も」
「ですがそれでもです」
「失恋するんですね」
「どんな美形でも地位やお金があろうとも」
「失恋はするんですね」
「源氏物語でもそうです」
 誰もが知っている一大恋愛絵巻であるこの作品もというのだ。
「源氏の君ですらです」
「失恋しますね」
「そうです」
 まさにというのだ。
「誰でもです」
「失恋しますか」
「若し人の失恋を嗤い」
 そしてというのだ。
「自分がそうなった時はどうなるか」
「自分もそうなる可能性があるからですね」
「そうです、人を嗤う者は自分も嗤われます」
 速水は遠くを悲しさを以て見る目で話した。
「まさに」
「因果応報ですね」
「そうです、人の行いは自分に返ります」
 そうもなるというのだ。
「ですから」
「それで、ですか」
「その様なことは最初からしないことです」
「やっぱりそうですね」
「そしてまことに人を失恋で嗤うと」
「下手すれば一生怨まれますね」
「どんな人からも怨まれないに越したことはないです」
 速水はこうも話した。
「その時どれだけ低いと見ていても」
「それでもですか」
「人は常に変わるものなので」
 だからだというのだ。
「その時は駄目でもです」
「将来はですか」
「わかりません、落ちこぼれのエジソンは発明王になっています」
 そして有名な実業家でもあった、ただし事業の方では何かと経営の失敗もあり順調ではなかった。しかも社員の扱いも酷いものだった。
「誰が子供の時の彼から予想したか」
「お母さんだけでしたね」
「見捨てなかったのは」
「そう考えたら」
「その時は如何に駄目に見えても」
 それでもというのだ。
「その人を決してです」
「馬鹿にしないことですね」
「嗤わないことです、そして特に」
「失恋のことでは」
「そうしないことです」
「相手を傷付けるので」
「それも特に酷くかつ生々しく」
 そうなるのでというのだ。
「しないことです」
「その言葉覚えておきます」
「人からは怨みを買わないに限ります」
「それは特に恋愛のことで、ですね」
「そうです、ですが小山さんが恋愛に興味を持たれたことは」
 速水はそちらの話もした。 
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