おっちょこちょいのかよちゃん
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236 不眠で突き進む
前書き
《前回》
かよ子は杖を取り返すのに必死で食事も忘れていた。そしてフローレンスが赤軍の西川を回収にさり達の元を訪れた時、長山は眼鏡で杉山の動向を探るようにフローレンスから指示を受ける。長山は杉山が今どうしているのか確認してみると、彼の姿が戦争主義の世界の長と同体化している事を知る。そしてさりは彼が自分の護符を何れ狙いに来ると危惧するのだった!!
東部の領土を取り返しに動く大阪の大学生、上市と高田はやや西へと進路を変更していた。
「はて」
同行するラクシュミーは考え事をしていた。
「ところで奪われた杖はもう少し西の方にあると言う事か」
「そ、それがどないしたんねん?」
「我々も行くぞ。私はそこに住む女と因縁が深いからな」
「杖・・・」
二人の女子大生は思い出す。杖の所有者の少女と戦った時を。
「うちらも手伝うたるか!」
「せやな」
かよ子の父はこの日も寂しい夕食を過ごしていた。その時、外から誰かが呼んだ。
「おうい、山田さん」
「羽柴さん」
「今日はウチでやりませんか?」
「ああ、いいですね。丁度寂しいところだったんですよ」
かよ子の父は羽柴家に入った。
「それにしても異世界での戦いは何か長引きそうですね」
「はい、特に連絡は来ていないので何とも言えませんが・・・」
かよ子の父は少し曇った顔をしていた。
「何かあったんですか?」
「娘の学校の友達がまた一人いなくなったって連絡が来たんですよ。名前は笹山かず子って言いましてかよ子から聞いた話では行方不明の藤木茂って子から好かれていたとの事です」
「そうですか、もしかしたらその藤木って子を探しに行ったのかもしれませんね」
「ええ、でもどうやって異世界に行ったのか・・・」
二人はその話をしながら酒を飲んだ。
かよ子は皆が寝ている中、眠らずに羽根を進めていた。
「お、かよちゃん、まだ起きてたのかい?」
関根が起きていた。
「う、うん・・・」
「あまり寝ないと動けなくなるよ」
「あ、はい、ごめんなさい。私、またおっちょこちょいしちゃって・・・」
「いや、いや、謝らなくていいよ」
しかし、関根は見抜いていた。
(おっちょこちょいが理由じゃないな。どうしても杖を取り返したくて急いでいるんだ・・・)
かよ子は兎に角寝る事にした。しかし、なかなか眠りにつく事ができなかった。
(早く杖を・・・。そして藤木君を連れ返して、杉山君を元の杉山君に戻すんだ・・・!)
かよ子は早く杖を取り戻して本来の目的に戻りたいと思っていた。
冬田は大野の元へ辿り着いた。
「大野くう〜ん!!」
「冬田!?」
大野は嬉しそうな顔をしていた。
「冬田、お前が来てくれて嬉しいぜ。俺もやっぱりお前が好きだ!」
「え、そおう?あ、ありがとう」
「ああ、俺と一緒に行こうぜ。転校前の最後のデートを楽しみてえ!」
「うん!」
「おい、いつまで寝てんだ!飯だぞ!」
冬田は三河口に起こされた。今までの事は全て夢だったのだ。既に羽根の上には朝食が配膳されていた。
「何が『大野くう~ん』だ。夢の中まで大野君でいっぱいになりやがって」
「え、あ、う・・・」
冬田は恥ずかしくて何も言う事ができなかった。
「好きだらけなんだな」
三河口と湘木はそのまま朝食を食べ始めた。
「い、いただきまあす・・・」
かよ子はこの日の朝が来るまで殆ど眠る事ができなかった。
「お、おはよう・・・」
「山田かよ子、あまり眠れていないようだな」
「あ、うん・・・」
かよ子の顔に隈がついていた。石松はそこから見抜いていた。
「やっぱり杖が気になって眠れなかったんじゃないかブー?」
「あ、いや・・・」
かよ子は否定か肯定、どうすればいいのか声が出なかった。
「まあ、まずは飯を食うとよい」
「う、うん・・・」
この日の朝食の献立は玉子焼きに沢庵、御飯に澄まし汁、お浸しに焼魚と和風だった。
「ちぇ、もっと美味しいのが食べたかったなあ」
まる子はメニューの当たりはずれの勘定をしていた。かよ子はそのまる子をよそに黙って食べる。
(兎に角今日中に杖のある所に追いつかないと・・・!!)
かよ子はこの日の自分自身の目標を決めた。
こちら戦争主義の世界の本部。房子はトランシーバーで各々に連絡を取る。
「晴生、公三、利明、あや子、ヴィクトリアの援護しっかりやるのよ」
『こちら和光晴生。了解』
通信を終えると房子はその場にいる山田義昭を見る。
「義昭。工房ならまた造り直せるわよ」
「ああ。だが、あいつらに工房を破壊された事がどうしても悔しい・・・!!」
山田はレバノンにある赤軍の本部に隣接している自身の工房を剣の奪還に訪れた高校生達に破壊されていた。
「そういえば剣を持っていった連中がまたこの世界に飛び込んでるわ。リベンジのチャンスがあるわね。それに今スターリンがそちらに向かっているからそこを狙うといいわ」
「ああ」
山田は復讐に燃える。
(はて、おっちょこちょいの杖の所有者。杖を取り返しに来てもすぐ死ぬ運命よ・・・)
かよ子達は火山の多い山脈を通過していた。気温が高くなり、かよ子達は暑さで来ているコートを脱いだ。寝不足のかよ子もその暑さで眠気が吹き飛んでいた。
「なんか暑いのお〜」
「ああ〜、暑くて何にもする気がないよお〜」
まる子とその祖父は暑さで倒れていた。
「なんとしてもここを抜ければ杖の在処に近づくはずだ」
次郎長も暑さに耐えていた。
「うん・・・」
かよ子は杖を取り返す事に集中しており、暑ささえも忘れていた。その時、下方から炎がかよ子達を襲撃した。ただかよ子の羽根から結界が出現した為、防御できたが。
「ちいっ!」
椎名の玉とブー太郎の水の石で水を出して迎撃する。
「何者だ?!出てこい!」
だが、同時に大波がかよ子達を襲う。これも結界で防御する。
「ええ!?」
「これはオイラ達の能力によるものじゃないブー!」
「俺がやる!」
大野が草の石を出して巨大な木の根を出して大水を吸収した。そして雷の石の能力が発動された。放電されさらに水がある影響で電撃が強くなる。下から焦げに対する悲鳴が聞こえた。
「あいつらか!」
石松、綱五郎は刀を振るい、大政は槍を発した。巨大な風の刃が放たれる。そして山脈の谷に一群の集団を確認する。
「攻めて来たのはあいつらだ!」
大野は確信した。
「それじゃ、降りるよ!」
かよ子は羽根を降下させ、接近戦で望む。
「やい、お前らだな!さっき俺達を襲ったのは!」
「ほう、こっちから来てくれるとはな。貴様ら、杖を取り返しに行くのか。だが、この私、アルフレートがここで片付けさせて頂く!」
「アルフレート・・・!?」
「その小娘が杖の所有者か。生憎だが、杖は取り返せぬ。ここで領域を侵した罰を受けて貰うぞ!皆の者、地を爆破せよ!」
アルフレートの兵達が地面を爆破させる。土埃のみではない、別の物質がかよ子達を襲う。
「な、岩漿だ!羽根から降りてはならぬ!」
「無理矢理降ろしてやるさ!かかれ!」
アルフレートは兵に槍を投げるように命じた。槍は金剛石のように無数にかよ子の羽根の結界を襲う。だが、それでも結界は金剛石の槍を弾き、岩漿もかよ子達に浴びせる事はなかった。
「馬鹿じゃのお〜。この結界は何も通さないのじゃ!ハハハハハ!!」
友蔵は呑気に笑っていた。しかし、一本の槍が結界を貫通した。
「え?な、何い〜!!」
友蔵は顔が真っ青になった。
「この結界が破られるのも時間の問題だ。結界の中から総攻撃するぞ!」
「う、うん!」
かよ子も杖がないのを理由に怠けられなかった。己の武装の能力を可能な限り出し尽くし、結界を強化させた。金剛石の槍を弾く。
「よし、皆の衆、行くぞ!」
次郎長が刀を振るう。岩漿を吹き飛ばしてアルフレートの兵に当たらせた。しかし、敵の兵も対抗策を施していた。盾を装備して防御される。さらにかよ子達の方へまた撥ね返した。
「くそう!」
ブー太郎は水の石で波を出して何とか岩漿を消した。しかし、アルフレートの軍が次の攻撃を始めていた。電撃を放っていたのだった。
「ブ、ブヒョー!」
「ブー太郎!!」
ブー太郎は感電しそうになったが、かよ子の武装の能力が働いた。ブー太郎へのダメージは回避されたのだった。
「あの小娘か。杖がなければ異能の能力しか使えん・・・。一部の者、あの小娘を狙え!!」
「了解!」
一部の兵が何処からか大砲を用意してかよ子のいる方向へ向けて砲撃した。
「わ、私の所に!?」
かよ子は回避を試みる。羽根の結界とかよ子の武装の能力で何とか防御した。しかし、爆発の振動で羽根が大きく揺れる。
「わ、わあ!!」
かよ子は羽根から落ちないようにした。
「ひ、ひええ〜!!助けてくれ〜!!」
友蔵も悲鳴を挙げる。
「山田かよ子、ただ結界で防御するのみではなく、羽根を動かして回避するのだ!」
「う、うん!!」
かよ子は羽根を動かして砲撃を回避する。だが、アルフレートの軍も電撃や火炎放射、地面の爆発、岩漿など様々な技を駆使してかよ子達を攻め込み続ける。
「こ、これじゃあ、埒が明かないよ・・・!!」
かよ子はここで逃げても相手は追い続けると考える。そうなるとここで倒さないと後が楽にならない。その時・・・。
「ぐあっ!」
「な、何だ!?」
「皆の者、かかれ!」
別の軍勢がアルフレートの軍を襲撃した。
「あ、あれは・・・!!」
かよ子はその軍を指揮する女に見覚えがあった。クローマー伯爵との戦いで共闘した嘗ての女王だった。
「ラ、ラクシュミーさん!!」
後書き
次回は・・・
「杖と似た短刀」
杖の奪還に進む冬田達はある人物と遭遇する。そしてラクシュミー達が加わった中でアルフレートと交戦するかよ子達はアルフレートが短刀を使用して竜巻を作り出す。それはあまりにも強力で大野はかよ子の杖の能力と似ていると考えだすが・・・!?
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