八条学園騒動記
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第六百七十一話 野上君の戻る先その十
「絶対悪ではな」
「悪であり善でありますね」
「そうじゃ」
「だからですね」
「それを主観でな」
言う者のそれでというのだ、創作でもそうしたことを言うキャラクターは主観に凝り固まっている場合がある。
「そう言うことはな」
「ないですか」
「そうじゃ、だから人間は面白いのじゃ」
「悪でもあり善でもあるので」
「その両方を持ちじゃ」
そうしてというのだ。
「愚かでありじゃ」
「聡明でもあるので」
「とてつもない愚行も犯すが」
それと共にというのだ。
「素晴らしい善行もじゃ」
「行うからですね」
「それでじゃ」
だからだというのだ。
「非常にじゃ」
「面白くてですね」
「わしも観ておるのじゃ」
「そうですか」
「だからな」
それでというのだ。
「そうしたことを言うのはな」
「よくないですね」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「少なくともわしは好かん」
「善悪両方持っているから人間ですか」
「ただ人の心をなくしてな」
「人の心とですか」
「あまりにも浅ましく卑しく下劣になるとな」
その場合はというのだ。
「邪悪じゃ」
「そうなりますか」
「左様じゃ、小悪党に多い」
「人の心をなくした様な奴は」
「非常にな、そうした奴はな」
こう言うのだった。
「わしが殺すのはな」
「博士がお嫌いなのは」
「わしはそうした奴は嫌いじゃ」
「浅ましくて卑しくて下劣な奴は」
「そうした面も人間にはあるが」
それでもというのだ。
「しかしじゃ」
「それがあまりにも強いと」
「人間でなくなってな」
「人間でなくなると何でしょうか」
「餓鬼じゃ」
それになるというのだ。
「それになり果てる」
「餓鬼ですか」
「そうじゃ、つまりわしが嫌いなのはな」
「餓鬼ですね」
「人間は好きであるがな」
それでもというのだ。
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