八条学園騒動記
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第六百七十一話 野上君の戻る先その八
「わしは好きじゃ」
「人間お好きですか」
「そうじゃ、だからこれからもな」
「人間とですか」
「何時になるかわからぬがいなくなるまでな」
「滅亡ですか」
「それまで一緒じゃ、言っておくが滅亡せぬ生きものはない」
博士はクールに述べた。
「世界にあるならな」
「あらゆる世界ですか」
「左様、それぞれの宇宙におるどんな生きものもじゃ」
「滅亡するんですね」
「最終的に宇宙がなくなればじゃ」
その生きものが存在している宇宙がというのだ。
「終わりであるな」
「そればそうですね」
「宇宙もはじまりがありじゃ」
「ビッグバンですね」
「そして終わりがあるのじゃ」
野上君にワインを飲みながら哲学者の様な目で話した。
「大体四百億年でじゃ」
「宇宙は終わりますか」
「それぞれの宇宙がな」
「それでどんな生きものもですか」
「そこで滅ぶ」
「住んでいる宇宙がなくなれば」
「それで終わりじゃ、それで人間もじゃ」
ホモ=サピエンスと呼ばれるこの生きものもというのだ。
「やがてはじゃ」
「滅亡しますか」
「この宇宙がなくなればな」
その時はというのだ。
「そうなる」
「何か果てしないことですが」
「そうであるな」
「この宇宙を出る技術はまだないですからね」
野上君は冷静に応えた。
「人類は」
「そうであるからな」
「このままだとですね」
「まあ二百億年位後にはな」
「この宇宙がなくなって」
「そうしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「人間もじゃ」
「いなくなりますか」
「それまでにいなくなる可能性もあるが」
それでもというのだ。
「どうしてもな」
「この宇宙がなくなればですね」
「一緒じゃ」
「人間はそこで滅亡しますね」
「あらゆるものが生まれて滅ぶ」
博士はここでも哲学者の様な目で語った。
「それは避けられぬ」
「絶対にですね」
「それで人間も何時かは必ず滅ぶが」
そうなるがというのだ。
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