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イベリス

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第六十八話 午前と午後でその十二

「そうしたことをして」
「もうね」 
「その時からおかしかったんですね」
「有権者もそれを当然とする位にね」
 そう考え認識するまでにというのだ。
「おかしくなっていたから」
「変な人達を選ぶ様になったんですね」
「そうだよ、今の僕達から見ればおかしくても」
 そうした状況に陥っていてもというのだ。
「当時のアテネの人達はね」
「思わなかったんですね」
「おかしいとおかしいと思うことも」
 そのこともというのだ。
「今の日本と当時のギリシアではね」
「違うんですね」
「十字軍でも魔女狩りでもそうだよね」
「どれもおかしいですよね」
「ナチスの時のドイツもスターリンの時のソ連もね」
 こうした国々もというのだ。
「今から見るとね」
「おかしいですよね」
「そうだけれどね」
「当時のそれぞれの人達から見ると」
「おかしくなかったりするんだ」
「そうですか」
「ヒトラーやスターリンが独裁者になって」
 そうしてというのだ。
「法律を無視したり大虐殺やってもね」
「おかしくないですか」
「当然わかっている人達はいたよ」
 ナチスやソ連の異常性についてだ。
「それで指摘したけれど」
「ドイツやソ連の中では」
「そのおかしいことが常識になっていて」
 それでというのだ。
「ああなっていたんだ」
「粛清とか収容所とかですね」
「秘密警察があってね」
「もう酷いことになっていたんですね」
「その時その場所で正しいことおかしいことも変わるけれど」
「それでもですか」
「誰がどう見てもおかしなこともあるよね」
 部長は咲に問うた。
「そうだよね」
「ナチスやソ連ですね」
「ああした国はどう見てもだよ」
「おかしいですよね」
「ああした国をおかしくないって言う人がいたら」
「その人がおかしいですね」
「そうだよ、もっとも日本にも北朝鮮をおかしくないって人もいるよ」
 この実在する者達の話もした。
「世襲制の共産主義をね」
「ナチスやソ連も世襲じゃなかったですよね」
「ヒトラーもスターリンもそれはしなかったよ」 
 ヒトラーに至っては身内を全く重用しなかった、それどころか閑職に就けて遠ざけていた。スターリンもあまり変わらなかったと言える。
「彼等でもね」
「そうだったんですね」
「それがね」
「北朝鮮は世襲ですからね」
「だからナチスやソ連よりおかしな国と言えるけれど」
 それでもというのだ。
「あの国が理想とか言う人もいるし」
「あんなトンテモ国家がですか」
「日本の皇室は反対で」
「あそこの世襲の国家元首はですね」
「そんな人もいるからね」
「そうした人もお話は聞きますけれど」
「小山さんはリアルで会ったことないんだね」
 咲を見て問うた。
「そうなんだね」
「はい、実際には」
「それはいいことだね、けれどね」
「そんな人もいるんですね世の中」
「僕も信じられないけれどね」 
 部長は咲にそれでもだと話した。 
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