剃るのもよし
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第一章
剃るのもよし
古代エジプトの話を聞いてだ、和田大樹は顔を顰めさせた。黒髪をロングにしていて太い眉ときりっとした目鼻立ちにやや面長の顔と長身で逞しい身体をしている。
その彼がだ、家でその古代エジプトの本を読んで言うのだった。
「ねえよ、こんなの」
「あんたの髪型が?」
姉の麻里子が言ってきた、小さい丸顔でやや吊り目で唇は小さい。茶色の髪をショートにしていて背は一六九程ですらりとしたスタイルだ。
「いい加減切ったら?」
「切るかよ、ロングは俺の命だぞ」
「県道で防具着ける時邪魔でしょ」
通っている高校で剣道部に入っている弟に言った、尚麻里子は三年で大樹は二年だ。
「その時はまとめるからいいんだよ」
「そうなの」
「ああ、しかし古代エジプトって皆ヅラだったんだな」
鬘をしていたことを言うのだった。
「それも剃ってな、信じられねえよ」
「何言ってるの、清潔さの為よ」
「それどういうことだよ」
「昔は皆然程頭洗わなかったでしょ」
姉はこのことを話した。
「シャワーなんてなかったし」
「そういえばそうか」
「それで洗わないとね」
「フケ出るし髪の毛に脂が付いて汚くなるな」
大樹もそれはと答えた。
「そうなるな」
「あんたもわかるでしょ」
「このロンゲ禿げるのと清潔には気をつけてるんだよ」
「禿げ?髪の毛伸ばしてるとなるわよ」
姉の返事は無慈悲なものだった。
「残念だけれどね」
「いや、それわかってるから気を使ってるし」
「そうなのね」
「ああ、それで清潔さか」
「そうよ、フケに脂にね」
それに加えてというのだ。
「虱よ」
「それか」
「それでかなり不潔になるからね」
「古代エジプトじゃ皆剃ってか」
「鬘被ってたのよ」
「そうだったんだな」
「そしてそれがファッションになったのよ」
こう弟に話した。
「それはそれでいいことでしょ」
「そうだよな、そういえば日本のちょん髷とかモンゴルとかの辮髪もだよな」
「あれも兜被っていてむれるからね」
「暑いし不衛生だしな」
「剃ってたのよ」
「そうだったよな」
「剃るのは悪くないのよ」
姉は言い切った。
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