| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

レーヴァティン

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二百六十一話 夜に語り合いその五

「その人の何処がどう偉いのか」
「わからないですね」
「人は偉いのか」
 そもそもというのだ。
「神仏と比べて」
「そんな筈がないですね」
「まずはこのことがあります」
「人間は神仏の前には小さい」
「何の力もありません」
「実に無力ですね」
「はい」 
 こう言うのだった。
「これ以上はないまでに」
「これがイスラムですとさらに顕著ですね」
「人はアッラーの前では実に小さい」
「この世の全てを司るアッラーの前では」
「等しく小さいです」 
 そうした考えであるのだ。
「ですから」
「自分がこの世で一番偉いなぞ」
「思う方がおかしいです」
「全くですね」
「どんな本を読んで知識を得ても」
 今度は源三が言った、刺身を食べつつ顔を顰めさせている。
「そうした考えに至れば」
「何の意味もないですね」
 良太は酒を飲んでから源三に応えた。
「そこまで勘違いをすれば」
「まして何も為したことがなく」
「何も出来なく」
「何も持っていないのに」
 それでというのだ。
「何が偉いのか」
「まして人様に迷惑をかけてばかりで」
「人を助けたこともですね」
「したこともないそうですが」
 二人もこの輩のことを聞いていて言う。
「それで何処がどう偉いのか」
「全くわからないですね」
「だから奥さんにも逃げられたというのに」
「それを自覚せず反省もせずにですから」
「理解出来ないですね」
「まことに。何でも家の長男で」
 源三はここでこう言った。
「ずっと親に甘やかされてきたそうですが」
「それはあるといえばありますね」
「ですが母親が相当碌でもない人で」
「その様ですね、その母親に徹底的に甘やかされ」
「それでそうなったとか」
「おかしな親はおかしな子を育てる」
「そういうことでしょうか」
「そうなりますか」
 良太は首を傾げさせた、そうして酒を飲んだ。酒の味も酔いも今は感じずそのうえでさらに言うのだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧