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展覧会の絵

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第九話 聖バルテルミーの虐殺その十四

「噂をね。町で」
「それでどう思われますか」
「悪質な組織だね」
 藤会についてだ。十字はこう述べた。
「それもかなりね」
「だからこそ麻薬を扱っているのでしょうね」
「そうだね。麻薬は人の心も身体も蝕み」
「そして破壊する」
「そうした悪魔のものだから」
「その悪魔の所有物を扱う輩もまた」
「そう、悪だよ」
 だからこそだ。その藤会もだというのだ。
「許してはいけないね。じゃあ資料を読ませてもらってから」
「動かれますか」
「そうするよ」
 淡々とだ。十字は述べていく。
「是非共ね」
「わかりました。それでは」
「うん、ではね」
「それにしてもです」
 神父はここでだ。こんなことも言った。
「ああした組織は何処にでもありますね」
「そうだね。イタリアにもあるし」
「そして日本にも」
「悪のない場所はないよ」
 これもだ。世の摂理だった。
「そしてそれと共に」
「善もですね」
「僕は自分を善だと信じているよ」
 十字は言った。今度は自分自身について。
「そしてそれと共にね」
「裁きを代行されることも」
「正義だと思っているよ」
 それもまた、だというのだ。そしてだった。
 十字はそのファイルを読みはじめる。そうしたのだった。
 この日はファイルを読んでそれで日を過ごした。そしてその次の日。
 昼に学校の食堂で一人で食事を摂っていた。だがそこにだ。
 また雪子が来た。そしてこう言ってきたのだった。
「また会ったわね」
「そうだね」
 雪子をちらりと一瞥してだ。それから出した言葉だった。
「こんにちは」
「ああ、挨拶ね」
「そう。今日はじめて会ったから」
 だからだ。挨拶をしたというのだ。
「こんにちは」
「こんにちは。礼儀正しいのね」
「礼節もまた」
「それもまた、というのね」
「人として必要だと思うから」
「真面目なのね」
 雪子は十字の言葉を受けながら笑顔を見せてきた。一見すると美貌の笑顔だ。そこには少女に相応しい愛らしさもある。だが、だった。
 その奥底にあるものは闇だった。大抵の者はわからない。
 だがそれでもだ。十字はそれを見てだ。こう言ったのだった。
「真面目ではないよ」
「真面目だと思うけれど」
「僕は人間だから」
「人間だからって。礼儀が?」
「そう。正しい礼儀は身に着けていないといけないから」
 そう思う故にだというのだ。
「こうしているんだ」
「そういうのを真面目っていうと思うけれどね」
 雪子はその十字にまた言った。
 そしてだ。十字の向かいの席に座った。そして今度言うことは。
「洋食ね」
「うん」
 十字が今食べているのはハンバーグにレタスと海草のサラダ、それにコンソメスープだ。付け合せにトマトを切ったものもある。デザートはプリンだ。 
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