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展覧会の絵

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第九話 聖バルテルミーの虐殺その三

 そのことを言ってからだ。十字はあらためて和典に話した。
「これでどうかな」
「そうだね。いいと思うよ」
 和典は十字のその言葉に頷きだ。そのうえでだ。
 果物だけでなく花も共に描くことにしたのだった。そうして食堂だけでなく華道部にも向かった。そのうえで林檎やバナナに葡萄、それと薔薇の花を貰ってきてだ。
 早速席を用意してスケッチブックにラフ画を描いていく。それを見てだ。
 十字は描く彼にだ。横からこう言ってきた。
「特にね」
「遅いよね、やっぱり」
「いや、そうは思わないよ」
 そうだとだ。彼は和典に対して言ったのである。
「あまりね」
「そうかな。遅いと思うけれど」
「それは田中君の主観だと思うよ」
 主観、それ故にだ。彼は遅く感じているというのだ。
「僕が見た限りではね」
「特に遅くはないんだね」
「うん、むしろ速い方だよ」
「そうかな。僕はどうしても」
 だが、だった。和典はだ。首を捻ってだ。
 絵を描きながらそうしてだ。こう十字に話したのである。
「遅く感じるけれど」
「どうしてそこまで遅く感じるのかな」
「佐藤君と比べるとね」
 彼と比べるとだ。そうだというのだ。
「遅く感じるんだよ」
「僕となんだ」
「そう。佐藤君物凄い速いじゃない」
 描くことがだというのだ。十字の筆の速さを見てそうしてからだ。和典は言っていたのだ。
「それを見てたら」
「僕は。確かにね」
「描くの速いよね」
「うん、そのことは認めるよ」
 自分でだ。そうだと答える十字だった。
「速いよ。ただね」
「ただ?」
「僕は描くことも務めであり」
「務め?」
「そう、務めなんだ」
 まさにそれだとだ。十字は和典に話した。
「それも常に多く描かないといけないから。それに」
「それに?」
「務めは他にも多くあったから」
 それでだというのだ。彼の筆の速さが培われたことは。
「それでなんだ。速く描かざるを得なかったから」
「じゃあそれは特別なのかな」
「そう。僕はまた特別な事情があったから」
 それでだ。彼の速筆は培われたというのだ。
「そうなったんだ」
「ううん、それでなんだ」
「そう。だから」
 それ故にだというのだ。
「僕は描くことが速くなったんだ」
「そうだったんだ」
「そう。それに僕は僕で」
「僕も僕だね」
「そこに劣等感を感じることもよくないよ」
 このことはだ。十字は確かに表情はないが強く戒めてきた。
「そして嫉妬や憎悪は」
「それは特にだね」
「そう、よくないよ」
 こう言ったのである。
「それは闇の世界の感情だから」
「嫉妬や憎悪。それは」
「劣等感を感じることは当然あることだけれど」
 人間ならばだ。それはどうしてもある感情だというのだ。 
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