チートゲーマーへの反抗〜虹と明星〜
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
R4話 Birth【誕生】
前書き
最初は神話パートです。
徐々に全貌は明らかになっていきます……無論、ストーリーにも絡んで———
遠い昔———宇宙は開闢され、地球が4度無に帰った後のお話。
最も気高く美しい天使長 ユエルは自ら造った人間への愛ゆえに、父なる神 ハイパーロード/ムテキの命に背き、反抗した罰として9次元を追放され、地球へと追いやられた。
しかし地球へ行くことこそ神々の決定であった。
「ここは…」
目を覚ましたユエルは…否、ユウは自分についてきた天使たちとともに地球に落とされたことを悟る。
堕天させられ、翼を奪われた天使たちの取る感情はさまざまであった。
何をすればいいのかわからない者。かえってこの地上で楽しく生きていくことを決意した者。そして……神に恨みを抱く者もいた。
ユウは自分1人生えている18枚の翼で世界を見回した———すると、1人の女性を見つける。
彼女は地上でユウが造った人間たちに崇められていた女神のような存在であった。崇められると同時に彼女も人間たちに恩恵を与え、同時に死後の道標を示していた。
彼女の名はナンナ———そう、ユエルの妹である。
そんなことも知らないユウは踊る彼女へと近づいた。
「君は何者?」
「私はナンナ。この世を統治するように言われた神の御子です。貴方は?」
「僕はユウ。僕もまた気高き名前を頂いた神の御子。」
いずれも神の御子であることは間違いないのだが、両者ともにその出生を知る事は天界でも地上でもなかった。
そこで両者は同じく生えた翼をはためかせて大空を駆けた。
地球には海とポツンとした島が数カ所だけが存在し、そこにユエルとアユムエルが粘土で創造した人間たちが住んでいた。彼らは4度目の滅亡を迎えた後の人類であり、数は数えられるほどだった。
まさに土台だけが残された地球———
地球を一周したのちに2人に天啓が降りる。
『ユウとナンナ、聞け。』
「「ハイパーロードM様!」」
ユウは自分を追放した父なる神———ハイパーロードMが自分に啓示したことに驚く。ナンナもまた、生涯に一度しかなかったハイパーロードの啓示に驚きを隠せない。
ハイパーロードMは2人に言う。
『ユウよ。お前は罪を犯した。故に神界でも最上位たる9次元から追放せざるを得なかったが……地球を再生させるのをお前の使命とする。これからは俺が地球に送っていたお前の妹 ナンナとともに新たな世界を作り出せ。』
「ハイパーロード様……僕にできるでしょうか?』
『お前は俺とAqoursの子——紛うことなき神の子だ。自分を信じれば自ずと道は開けるであろう。』
ハイパーロードMは2人に宇宙の青さを体現したような剣を授ける。
『これは創造を司る剣 刃王剣クロスセイバーである。本来は最高神しか持つことが許されていない剣だが、その10分の1の力を授ける。今からお前たちは夫婦となり、地球を創造せよ。』
父なる神が決めた唐突な結婚……しかし2人は満更でもなかった———これもまた神の思し召しだろうか。
「僕は君をもっと知りたい——あなたの美しさも、性質も、すべてが愛おしい。」
「私もです!!あなたとともに世界を作りたい……!」
こうして2人は夫婦になり、一つの大きな大陸を作り出した———それこそ超大陸パンゲア、またの名を……ニッポン。
この大陸、そして何より美しい自然を作り出した2人はイザナギ・イザナミなどと呼ばれるようにもなったとか。
希望を見出した半分ほどの天使たちはその大陸に住み、狩猟や採集を行い、豊穣と自らの命があることを神に感謝するようになった———
そしてユウとナンナに子どもが誕生する……その子の名を、ナユタと言った。
————※————
「ぐぬぬ…どうもあの社長にうまく泳がされている気が———」
虹ヶ咲学園内のコンビニ前の屋外スペースにてボヤくかすみ。ここにいるのは紛いなく、社長と呼ぶ伊口イフトの差し金だ。その言葉を半信半疑の中で実行したかすみには当然モヤモヤが残る。胡散臭いさも否めぬのは多くの人が感じるのではなかろうか。
しかし……お目当ての2人がやってくる。
「(むむっ、あの2人は……?)」
「結局スクールアイドルってどうやって始めるんだろう……?」
「スクールなんだから部には入らないといけないんじゃ————」
そう、この2人 高咲侑と上原歩夢。夫婦になる運命が決まっているかのような2人……当然同性なので夫婦とは言えないのかもしれないが、まさに運命の相手であると言って差し支えはなかろう。
その2人話す間に…かすみはポンと肩を叩く。
「せんぱぁ〜い♪スクールアイドルにご興味あるんですか〜?」
突如間に現れたかすみに対し、2人は少しばかり引いてしまう————
かすみは2人を椅子に座らせて、得意技(?)の自己紹介を始める。
「スクールアイドル同好会二代目部長の『かすみん』こと!中須かすみでーす♪」
「スクールアイドル同好会!?本当に!?」
「はい!みんなの大好きプリティーキュートのかすみんです!」
可愛いといえばぶっちぎりで可愛いのかもしれないが、俺に言わせれば痛々しい少女ともいえなくはない。まぁ俺の場合、もっと痛々しくて嫉妬深い妻がいるんですが———その話は置いておこう。
侑と歩夢はそれぞれ名乗る。
「私、高咲侑です!」
「上原歩夢です———でも同好会って廃部になったんじゃ……」
「諦めなければ同好会は永久にフメツです!!」
そう言うとかすみは側に置いた鞄から何かを取り出す……2つのコッペパン。レモン塩カスタードのコッペパンを発売するあの店のに似ている。
「お近づきの印に♪どうぞ♪」
「うわぁ〜いいの!?」
「はい!」
もらったコッペパンをゆうぽむは一口その特製コッペパンを齧る。
「「おいしい!!」」
「これあそこのお店の?」
「ちっちっち〜それはかすみん特製コッペパンですよ♪」
「へぇ〜!流石スクールアイドル!こんなに可愛くて料理もできるんだ!!」
「えっ……カワイイ!?」
単純明快な性格の侑は自分の感情をありのままに伝える。直球な言葉に素直に喜んだかすみは、にやけて自信に溢れたような返答をする————
「そんな〜♪確かにかすみんは可愛くて料理もできちゃいますけど〜」
「………え?」
「侑せんぱーい!見る目ありますね〜!」
「えっ?」
「そうかな?誰が見たってカワイイって思うよ♪」
「…………は?」
「いや〜それほどでも〜!」
この鈍感で天然な侑とデレているかすみには気づかれていないだろうが……歩夢の目の明かりが常夜灯レベルまで堕ちているのはお気づきいただきたい。
以前、侑がエグゼイドに完敗した際に歩夢は呪詛のような言葉を投げかけた。その時の殺気は人間のものとは思えぬ波動、それこそ悪魔か化物でも憑いているかのようであった。しかし、ここで恐怖を抱かれてはいけない。すぐさま感情を消して素面に戻る。
ここでかすみは話を次に飛躍させる。
「じゃあ先輩方、こんなカワイイかすみんとスクールアイドル始めてみませんか?」
「うーん……」
「侑ちゃん(この娘)大丈夫かな…?」
「任せてください!かすみん、サイキョーにカワイイスクールアイドル同好会にして見せますから!!」
「!…かわいい……!」
「かわいい」というワードに反応する歩夢。自信のなさ故に目を逸らしながらも、返答する。
「だったら……始めてみようかな?」
「入部決定ですね!!」
かすみが歩夢の手を取って、その返答を確実なものへと押し進める。と、ここで隣に座っている侑がかすみに向かって言い添えをする。
「ちなみに私はアイドル志望ってわけじゃないんだ。歩夢を応援したくて!!」
「それって専属マネージャーってことですか!?」
「そうなのかな……?」
「ずるいです!それならかすみんのサポートもしてください!!スクールアイドルとしてはかすみんが先輩ですからね〜?部長には絶対服従ですよ♪」
「えっ!?」
てへぺろ顔で甘え気味なかすみ。しかしその行為は割って入ったことで、後ろにいる歩夢の目をますます曇らせるだけである。
そんな顔とは対照的に侑は笑顔で返す。
「わかったよ中須さん。」
「もっと砕けた呼び方で呼んでくださいよ〜!」
「だったら『かすかす』だね♪」ニッコリ
「げっ!何で小学校でのあだ名知ってるんですか!!『かすかす』はダメ!!かすみんです!!」
「中須かすみだから『かすかす』かなって……!」
「もう!2度も言わないでください!!——『かすみん』で売り出してるんだから、それでお願いしますよ!!」
「「そういうことなの……?」」
「さ、これから早速同好会を始めますよ!!ついてきてください!!」
————※————
「さてさて……どうするかな———」
アタッシュケースを持ってお台場を歩く男 伊口イフト。整った顔立ちの天才社長は、色々な理由で虹ヶ咲学園の講師をしている。
そして今、スクールアイドル同好会のために暗躍しているとかすみにレッテルを貼られているが……真相は不明である。
そんな彼だが……その前に妨害が現れる。
「伊口イフト。伊口ファウンデーションのCEOがボディガードも付けずとは…DUCKだぜ?」
「ほう……何者かは知らないが——こんな街中でそんなにゾロゾロと引き連れて大丈夫か?」
「どんな繁華街の中であろうとも、我々はただ任務を遂行するのみ……さぁ、死んでもらおうか。」
黒ずくめの男たち———いわゆるメンインブラック6人は一斉に何かのロゴが描かれたバックル付きのベルトを腰に装着する。
『変身!』
【Complete】
6人の男が変身した姿……その名もライオトルーパー。正体不明だが、目撃例が稀有ながら報告されているライダーである。
当然、イフトもその件は耳にしている。
「いいだろう…ちょうどミニゲームでもやりたいと思っていたところだ。」
イフトは……ピンクのレバーがついたライトグリーンのドライバーを装着する。その名も———
【ゲーマドライバー!】
このドライバーにセットできるガジェットは限られている……そう、ライダーガシャットだ。
彼は自分専用のであろう、紫のガシャットを取り出す。
【マイティアクションX!】
「グレード2……変身!」
【ガシャット!】
【ガチャーン! レベルアップ!】
黒いライダーのパネルを蹴って選択する。
【マイティジャンプ!マイティキック!マイティ〜アクション〜X!】
「あぁ…!」
首を回し、風呂上がりのような心地よさを声に出すこのライダー———その名も、仮面ライダーゲンム。通常のエグゼイドとは対称的なカラーリングのライダー。
早速、ライオトルーパーたちがそれぞれにゲンムに襲い掛かる。
しかしゲンムは体を予測外にくねらせてその襲来を交わしていく。そして最後にかかってきたトルーパーの腕を掴んで、地面に打ち付ける。
「ポゥ!」
「舐め上がって…全員で抑えるぞ!!」
しかし今度は一斉に飛びかかってくるライオトルーパーたち……しかしゲンムは地面に打ち付けた1人の体を5人に放ち、ボーリングのように転かしてしまう。
「ブハハハハァッ!これが神のォ才能だぁぁぁ!!」
「ぐっ……」
テンションが普段の振る舞いからは想像だにできない。そのテンションがまさに、ゾンビよりも予測不可能な動きを可能にしているのかもしれない。
さすがは天才プレジデントか…
「さぁ、もはやキミたちは用済みだ……」
【MIGHTY CRITICAL STRIKE!】
6人にそれぞれにキックをお見舞いする。たまらずライオトルーパーたちは爆発四散する……跡形もなく。
「機密保持のために敗北後は強制死亡か……少しペナルティが重すぎる気もするが———」
バン!
銃声が鳴り響く。
特殊な銃弾がゲンムの眉間を掠める————正確には、掠めるように避けたと言ったところか。
当然、ゲンムは発射位置の方を向く。
「あ…?」
「貴様…何者だ!?」
撃ってきた人物…もといコウモリのような複眼をしたライダーがベルト兼用の銃を構えて、ゲンムに警戒している。
得体の知れぬ者に正体を明かすわけにはいかないので、ゲンムは自分の声にエコーをつけて、身バレを防ぐ。
「何者かと人に聞く前に…自分から名乗るべきじゃないか?」
「いいだろう。俺は仮面ライダーライブ。特務機関ヘラクレスの高等部にて選ばれた仮面ライダーだ!!」
「ヘラクレスか……」
「改めて問う。貴様は何者だ!!」
「私は———仮面ライダーゲンム。」
「じゃあ変身を解除しろ。悪意がないのであれば……!」
「————断る。」
「!!!」
【チュ・ドーン!】
ガシャコンバグヴァイザーのビームガンによる不意をついた攻撃で、仮面ライダーライブの視界を曇らせ、ゲンムは撤退に成功する。
「チッ……逃したか———」
残されたライブは悔しくも変身を解除する。
するとちょうど良く、プライベート用の電話が鳴る。
「はいもしもし?」
『あ、もしもし「はる」?おばあちゃんがネギと卵と豚肉買ってきてって言ってるんだけど頼める?』
「姉ちゃん……俺一応仮公務員なんだけど?」
『まぁまぁ。この電話に出られるってことは暇になったんでしょ?ほら買った買った♪』
「ばぁちゃん怒ると怖いからなぁ……仕方ない。」
「はる」と呼ばれた彼は一体……?
ページ上へ戻る