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展覧会の絵

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第八話 絞首台のかささぎその十二

 そしてこのことについてだ。十字はさらに述べた。
「それでだけれどね」
「その地獄についてですね」
「悪が生み出している地獄は潰さなくてはならない」
 表情がないがだ。それでもこう言ったのである。
「何故なら地獄は裁きが行われる場所だから」
「神が悪人に報いを与える場所。それが」
「地獄だよ」
 今度はだ。キリスト教、カトリックの考えだった。仏教でもこれは同じであるがダンテの神曲にもあるだ。十字はそのカトリックの考えに基いて言ったのである。
「決して。悪人が善人を苦しめる世界じゃないんだ」
「むしろその悪人を、ですから」
「その地獄は完全に潰すよ」
 十字は言い切った。神父に対して。
「その為に僕がいるのだからね」
「では。枢機卿は今回も」
「動くんだよ。手は打っていくよ」
「畏まりました」
「ところで。麻薬についてだけれど」
「藤会ですね」
「何かわかったかな」
 そのだ。全国規模の広域暴力団についてだ。十字は言ったのだった。
「彼等については」
「おおよそですが」
 神父はすぐにだ。十字にこう答えたのだった。
「わかりました」
「麻薬のルートはどうなっているのかな」
「あのテロ支援国家から仕入れていました」
「ああ、この国の北西にある」
「そうです。あの国からです」
 仕入れているとだ。神父は十字に話した。
「様々な麻薬を仕入れてそうして国内で売っています」
「この国じゃオーソドックスなルートなのかな」
「そうなっています。何しろあの国はです」
「どんな悪辣なことでもやるからね」
 十字もその国のことは知っていた。麻薬だけでなく拉致や弾圧、粛清、核開発と悪評には事欠かない。恐ろしいことに世襲制の共産主義国家である。
 その本来は有り得ないシステムの国家についてだ。十字はこう言った。
「あそこからとはね」
「様々な。実に様々な種類の麻薬を入れてです」
 そしてそのうえでだというのだ。
「国内で売っています」
「成程ね。ルートはわかったよ」
「そしてあの理事長ですが」
「どうして彼等と接触したのかだね」
「それはまだわかりません」
 今回は最も重要な、だ。それはだというのだ。
「ですがあの理事長は私的に夜の街によく出ています」
「夜の、だね」
「はい。前にもお話したことだと思いますが」
「夜は闇の中にあるからこそ」
 それに故にだとだ。十字は述べるのだった。
「悪を行いやすいね」
「その通りですね。悪人は夜にこそ蠢きます」
「夜には人の目が届かないからね」
 夜の闇に紛れてだ。そうなるというのだ。
 だが十字は人だけを見てはいない。彼が第一に見るその存在からだ。彼は言ったのである。
「神は夜であってもね」
「はい、御覧になられないものはありません」
「神は闇も御覧になられるからこそ」
「悪もまた御覧になられますね」
「そして神の僕である僕達にも見せてくれる」
 その悪を。彼等にもだというのだ。
「そうしたものだから」
「そうですね。それ故に」
「調べ続けてくれるね」
「無論です」
 静かに一礼してだ。神父は十字に答えた。そしてだ。 
 そのうえで十字にだ。こうも言ったのだった。
「ではこのまま続けわかったことをです」
「話してくれるね」
「神の御為に」
 神父はこの言葉も出した。 
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