戦姫絶唱シンフォギアGX~騎士と学士と伴装者~
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第21節「従者の責務」
前書き
社会人になって、仕事と執筆の両立が難しくなってきました……エミヒロです。
作業効率的にも、早くノートPCが欲しいところです。あとPS4も。進められてないソフトが複数あるんだよ……。
さて、本題です。
例え月曜を逃しても、今日だけは……響の誕生日である今日だけは、必ず間に合わせねば……!!
そんな思いでどうにか完成させた第21話です。お楽しみください。
『S.O.N.G.の者達、そしてシンフォギアの装者達よ。二度も世界を救った君達を見込んで頼みがある。どうか我が愛弟子の暴挙を止めるため、協力して欲しい』
「何……?」
『俺からもお願いしますッ!あの現場から俺を助けてくれたの、この人なんですッ!』
神妙な表情で懇願するグリムと、その隣で頭を下げる翔。
並々ならぬ事情を感じ取った弦十郎は、暫く黙り込んだ後、首肯した。
「火急の状況だ。借りられるなら猫の手でも欲しい。ただし、後でちゃんと事情を説明してもらう。それでいいな?」
『感謝します。もう間もなく其方へ到着する予定です』
『そっちの戦況はどうなっているんです?』
「それが……」
藤尭が口を開いたその時だった。
『うおーりゃーッ!』
『うわああああッ!?』
奏が吹き飛ばされ、発電所の壁に激突する。
画面を見るとダインと戦闘していたミカが、装者も同時に相手し始めたようだ。
「奏ッ!!」
『ぐぅッ……かはッ!』
翼が思わず声を上げる。
壁に叩きつけられた奏は、凹んだ壁の中で吐血した。
『うりゃッ!』
『『きゃあああッ!』』
「調ッ!切歌ッ!」
続けざまに振り下ろされたカーボンロッドを、切歌が鎌の柄で受け止めるも、横から薙ぎ払われたもう一本を横っ腹に受けてしまい、調ともども吹っ飛ばされてしまう。
「このまま見ていられるかッ!」
「クリスちゃんッ!」
「待てッ!」
発令所を飛び出すクリスを、純と翼が追いかける。
一連の流れで、翔とグリムは大体の状況を飲み込んだ。
『あまり芳しくないな……』
『不足、もはや猶予はあまりない。最短ルートで向かいます。少年、私の後ろに』
『あっ、はいッ!また後で連絡しますッ!』
そう言って通信が切断される。
「お、おい!……あいつら、どうやって来るつもりだ……?」
ff
「少年!しっかり掴まっていなさいッ!」
「はいッ!」
車両の間を風のようにすり抜け、高速道路を全速力で駆け抜ける一台の白いバイク。
それに跨る錬金術師グリムの後ろに、通信機を仕舞った翔はしがみついていた。
彼の錬金術によるものなのか、周囲を走る車のドライバー達の目に、彼らの姿は映っていないようだ。
「加速、全力、全速力!疾駆れ、スレイプニル!速度の限界を超え、スピードの向こう側へ!」
グリムの言葉に呼応するかのように、バイクのヘッドライトが緑光を放つ。
大気を貫き、周囲の景色をどんどん追い越し、スピードメーターが法定速度を超えていく。
(これは……普通のバイクじゃないのか……!?)
翔の予感に応えるかのように、次の瞬間、バイクに変化が現れた。
一瞬の振動の後、目線が数段上がる。
驚いて車輪の方を見ると、そこにあったのは長く伸びる“脚”だった。
車輪が折り畳まれ、代わりに出現した計4本の細脚。
更に前方の赤いカウルが変形し、細長い逆三角形の顔へと変わる。
白いバイクは機械的なディテールを残したまま、一瞬にして白馬へと形を変えた。
「う、馬になったぁぁぁッ!?」
「宛然、北欧神話の神馬スレイプニルだ。普段は目立たぬよう、現代に合わせた外観になってもらっているが」
驚く翔に淡々と告げるグリム。
スレイプニルは四足歩行となってなお、全く速度を落とすことなく加速していく。
「離さないよう気をつけるんだ。飛び越えるぞ」
「飛び越える……?」
言葉の意味は分からないが、翔は言われた通りグリムの背にしっかりとしがみつく。
直後、スレイプニル前方の空間が捻れるように歪み、光り輝くゲートが現れた。
「空間、跳躍ッ!!」
グリムの言葉と共に、スレイプニルはゲートの中をくぐり抜ける。
スレイプニルの尾の先までが吸い込まれた直後、ゲートは閉じ、捻れていた空間は何事も無かったかのように元に戻った。
ff
目を覚ました響は目の前に広がる天井を見上げていた。
何度も世話になっている医務室の照明に、自分の掌を掲げる。
「大切なものを壊してばかりのわたし……。でも未来は、そんなわたしに救われたって励ましてくれた」
眠ってる間に見た、あの頃の悪夢。
蒙昧な無辜の人々から罵られ、貶され、石を投げられた日々。笑顔の消えた家族。
そして──そんな惨状に耐えきれず、酒に溺れた末に蒸発した、父の背中。
家族をバラバラにしてしまったのは、あの日のライブ会場に行ってしまった自分自身だと、響はずっとそう思いながら生きている。
そして、今度は隣で支えてくれると言ってくれた、大好きな男の子さえも……。
それでも、いつも一緒に居てくれる幼馴染はあの時、確かに叫んでくれたのだ。
『伸ばしたその手も、誰かを傷つける手じゃないってわたしは知ってるッ!……わたしだから知ってるッ!だってわたしは、響と戦って──救われたんだよッ!』
『わたしだけじゃないッ!響の歌に救われて、響の手で今日に繋がってる人、たくさんいるよッ!だから怖がらないでッ!』
誰より信頼し、誰より自分を知っている彼女がそう言ったのだ。立花響は、それを信じて疑わない。
「未来の気持ちに答えなきゃ……。……あ」
身体を起こし、胸元に手を当てて……そして、胸元にあるべきはずのペンダントがない事に気がついた。
「……」
胸の歌を、取り戻したばかりなのに。
奏さんから、そしてマリアさんから受け継いだ、大切なものだったのに。
ガングニールが砕かれてしまった現実に、思わず頭を垂れた。
……その時だった。
「お目覚めになりましたか」
医務室の自動扉が開き、入室してきた人物に響は顔を向ける。
そこにいたのは、調査部の黒スーツに身を包み、綺麗に染めた金髪をサイドテールに束ねた女性職員。翔の付き人、春谷舞だった。
「春谷さん……」
「目が覚めるまで、ずっと見ていました。翔様なら、きっとそうするかと」
春谷の言葉で、あの瞬間がフラッシュバックする。
あの戦いの最後、翔は殿として一人で残り、そして……。
「ッ!そうだ、翔くんは!?」
「先程、連絡がありました。どうやらピンピンしているようです」
「そっか……よかった……」
思わず胸を撫で下ろす。
もし、あのまま翔が帰らぬ人となっていれば、心が折れていたかもしれない。
それほどまでに、風鳴翔という少年は響にとって大切なのだ。
「……響様、この場にいない翔様に代わり、私の方から謝罪を。響様の信念を否定するような物言いをしてしまった事、翔様自身も深く悔いておられました」
深々と頭を下げる春谷に、響は静かに答えた。
「顔をあげてください、春谷さん。……なんとなく、心のどこかでは分かってましたから」
「……え?」
「翔くんの事だから、わたしの事を想って言ってくれたんだと思います。……それを受け入れられず、ちゃんと翔くんの言葉に耳を傾けなかったのは、わたしなんです」
翔と喧嘩してしまった日の事を思い出しながら、響は呟く。
「あの時、翔くんの言葉を遮っちゃったのはわたしで、逃げちゃったのもわたし。だから……翔くんは悪くないと思います」
そう言って、春谷の方を見ると……。
「はぁ~……互いが互いに理解があるが故のすれ違いとか、マジで勘弁してくれませんか?」
「は、春谷さん?」
「これは翔様が帰ってきたら、2人とも腹を割って話す機会を作らせないといけませんね。いや、絶対そうしてもらわないと私が困る」
春谷の目が据わっていた。
呆れているというか、それを通り越してキレているように見える表情だ。
ブツブツと早口で呟いている部分は、響には聞き取れていない。だが、かなり業が煮えている様子だった。
やがて深い溜息を吐いた後、春谷は響の顔を真っ直ぐに見つめた。
「響様」
「は、はい?」
「翔様は生真面目で、相手を慮る視野を持つが故に、言葉足らずになってしまう事があります」
「そうなんですか?」
「本人としては、言葉を選ぼうとしているつもりなのですがね。より相手を傷つけず、スマートに伝えられる言葉を探して、結局失敗してしまう。翔様のお父上もそういう御方でした」
春谷の脳裏に浮かぶ鉄面皮。内閣情報官としてこの国を守護する、舌戦の防人。
翔とその姉、翼の父親にして、S.O.N.G.司令である弦十郎の兄。風鳴八紘。
現在、娘と疎遠になっている事情をある程度知る身としては、今の翔が父親の姿と重なってならない。
それがあまりにもいたたまれない。だから、春谷は告げる事を決めたのだ。
「ですから響様。今後、また今回のような事になった時には、翔様の心が和らぐように、手を取っていただけないでしょうか?」
手段はなんでも構わない。
手を握るだけでもいいし、肩が触れる距離に立つだけでもいい。あるいは抱擁して、または腕を絡めてでもいい。
とにかく、翔が肩の力を抜けるようにすること。
かつての姉にそうしていた、橙色の片翼と同じように。
真面目が過ぎるばっかりに、ポッキリと折れてしまわぬように。
「わかりました。翔くんが戻ってきたら、早速そうしてみます」
「ええ、是非とも……翔様をよろしくお願いします」
自然と笑みがこぼれる。
心にのしかかっていた重荷が降りたように微笑む響と、釣られて微笑む春谷。
静かな医務室に、和やかな雰囲気が漂っていた。
「あ~!春谷さんズルい!」
そこへ、新たな来客が訪れる。
見るとそこに居たのは、医療スタッフの制服に身を包んだ、黒髪セミロングの職員だった。
「姫須さん、今までどちらに?」
「どちらにってそりゃあ、響ちゃんが目を覚ましたんですよ?答えは一つしかないじゃないですか~」
そう言って医療スタッフ、姫須晶は、廊下から台車を引っ張ってきた。
台車の上に用意されていたのは、味海苔が巻かれたおにぎりの山だ。
「こっ、これは!おにぎりだーッ!!」
「寝てる間はずっと点滴だったし、お腹空かせてるだろうな~と思ってたので、用意してきました」
「姫須さん、ありがとうございますッ!!早速食べちゃってもいいですか?」
「もちろん!ジャンジャン食べちゃって~!沢庵とお味噌汁も用意してるから!」
「やった~~~ッ!いただきまーすッ!!」
「病み上がりなんですから、あんまり一気に食べないでくださいね」
数日ぶりのご飯を口いっぱいに頬張る響の姿に、彼女を陰ながら見守る大人2人は、静かに微笑んだ。
後書き
姫須さん、出てくるのはかなり久し振りなんじゃないだろうか?
次回はオートスコアラー同士の戦闘です。
なるべく今月以内に更新できるよう頑張りますが、先にハーメルンでちくわぶさんと共同制作している『仮面ライダー妖』の方が先になるかもしれません。そちらもよろしくお願いします。
そして響ぃ!!!!!10周年目のお誕生日おめでとう!!!!!!
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