イベリス
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第六十五話 静かにはじまってその十
「カレーにしようかしら」
「カレーなの」
「そう、何カレーにするかは考えてないけれど」
それでもというのだ。
「咲もお父さんも好きだし」
「お母さんもよね」
「皆好きだからね。まあモコ以外はね」
「モコは食べないわよね」
「犬に刺激の強いものは駄目よ」
それはというのだ。
「だからね」
「モコはドッグフードだけね」
「そうよ、それでそのドッグフードを沢山食べてくれるから」
モコはというのだ。
「嬉しいわ」
「身体小さいけれど沢山食べるわね、いつも」
「沢山食べないと」
「駄目よね」
「さもないと元気にならないから。よく食べて」
そうしてというのだ。
「よく運動してもらうのよ」
「モコには」
「モコは体育会系だからね」
母はケージの中にいる彼女を見て笑って話した、見れば今はその中で丸くなって気持ちよさそうに寝ている。
「咲は文科系で」
「モコって体育会系?」
「だってよく動くしね」
運動が好きでというのだ。
「それでね」
「それでなの」
「私達の言うことよく聞くしね」
「目上の人と見て?」
「そうだからね」
そうした性格だからだというのだ。
「モコはね」
「体育会系なのね」
「こう言ったら犬は全部そうだけど」
それでもというのだ。
「モコはよ」
「体育会系なのね」
「そうだと思うわ」
「そうなのね」
「それでね」
母はさらに言った。
「これからもね」
「よく食べてよく運動してもらうのね」
「よく寝てね、ずっとね」
「一生なのね」
「長生きしてもらって」
そのうえでというのだ。
「ずっとね」
「そうね、モコには長生きして欲しいわ」
「あんたが結婚して子供が出来たら」
母はその時のことも話した。
「いいわね」
「モコになのね」
「その子会わせなさいね」
「お父さんお母さんにもよね」
「それと一緒にね」
「モコにもなのね」
「モコはあんたの妹でしょ」
家族としてそうなるからだというのだ。
「だったらあんたの子供はね」
「モコにとって甥か姪ね」
「その間柄の子供をよ」
「モコに会わせてあげるのね」
「あの子にもね」
是非にというのだ。
「いいわね」
「わかったわ」
咲は母のその言葉に頷いた。
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