赤い尻
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第一章
赤い尻
中国の古い話である。
二龍山のふもとの広洋湖に青龍と白龍の二頭の龍が住んでいた、二人はそれぞれ湖の底に屋敷を構え共に湖とその周りを治めていた。
二人は龍であるが普段は人の姿をしてそれぞれの色の豪奢な服を着ていた、二人共見事な髭を生やして大人然とした姿だ。
今二人は湖の底の庭で碁を打っている。そこで青龍は白龍に語った。
「近頃林に猿が多いな」
「そうだな」
白龍は碁を打ちつつ応えた、見れば碁は普通の黒と白ではなく青と白だ。当然青龍が青で白龍が白である。
「そしてだな」
「何かと悪さをしている」
「それをどうにかしないとな」
「少し林に出て状況を見るか」
「それからどうするか決めるか」
「そうだな」
二頭でこうした話をしてだった。
共に湖から外に出た、湖の岸には棗林があったが。
そこに入るとまだ林は荒れていなかった、しかし。
そこにいる生きもの達は二頭に心配する顔で話した。
「今は大丈夫ですが」
「猿達は随分やんちゃなので」
「若しここに来ればです」
「大変なことになります」
こう二頭に言うのだった。
それで二頭は今から備えようと思ってだった。
棗林の主でありそこを治めることを二頭から任せられている棗仙、ある女神の娘の一人で赤い服を着て小柄で黒髪を左右で丸く結っている白い肌の彼女と会った。すると。
棗仙も二頭に心配そうに話した。
「私もです」
「そなたも不安か」
「猿のことが」
「はい、実が実れば」
棗のそれがというのだ。
「どうなるか」
「そうだな、このままではな」
「この林には守りがない」
「それではだ」
「猿達が来れば大変なことになる」
「猿達は素早く頭もいいです」
棗仙は彼等のこのことを話した。
「しかも数もかなり多いです」
「おまけに群れはまとまっている」
「しかも木の実は大好きだ」
「あれだけ厄介な連中もいない」
「だから我等も考えているのだ」
「以前です」
棗仙は二頭にこうも話した。
「棗をよりよくして下さいましたね」
「うむ、わしは種をよくした」
まずは青龍が答えた。
「角の力を使ってな」
「わしは肉の力を使った」
白龍は続いて答えた。
「そして果肉の味をよくした」
「私は自分の服を使ってです」
棗仙も話した。
「皮に加えまして」
「より赤くしたな」
「そうしたな」
「種は以前よりよく育つ様になり」
そうしてというのだ。
「果肉の味もよくなりました」
「そして色もよくなった」
「そうだったな」
「そのことはいいのですが」
いいことばかりでなくというのだ。
「それがどうもです」
「猿達にだな」
「目を付けられそうだな」
「兎角木の実には目がない者達なので」
猿達はそうだからだというのだ。
「ですから」
「そうだな」
「まず実れば来るな」
「この林に猿の群れに対する者はいません」
棗仙はこの場を治める者として言った。
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