人を呪わば
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第五章
「その感情がね」
「あまりにも強く」
「おかしくなっているよ」
「そうですか」
「うん、人を呪い過ぎているよ」
「呪いですか」
「そう、だからね」
長内はさらに話した。
「彼はああしたことをして」
「まだ怨みや憎しみが消えていないですか」
「永遠に消えないんじゃないか」
こう言うのだった、遠い目で。
「もうね」
「その念があまりにも強くて」
「その為にね。怨んで憎んで」
野上の様にというのだ。
「呪いになると」
「ああしてですか」
「そう、復讐鬼にもね」
「なりますか」
「それが彼だろうね、人間怨みや憎しみに囚われて」
「それが呪いにもなると」
「復讐鬼になって」
そうしてというのだ。
「ずっとそれに囚われてね」
「一旦怨みや憎しみを晴らしても」
「それが消えないでね」
「まだ何かしようとしますか」
「そうだよ、そしてそんな姿を見て」
「他の人達はですね」
「彼から離れるよ、彼は確かに努力したよ」
子供の頃のいじめからというのだ。
「けれどね」
「怨みや憎しみからはじまって」
「それでね」
そのうえでというのだ。
「それに支配されて」
「復讐鬼になって」
「人も離れていくよ」
「そうですか」
「だからね」
それでというのだ。
「彼はこれから孤独な人生かも知れないね」
「誰からも疎まれる」
「実際好きにはなれないね」
「はい、したことを見ると」
「人を呪わば穴二つ」
長内はここでこの言葉を出した。
「俗に言われるけれどね」
「嘘じゃないですね」
「そうだよ、それは本当のことでね」
「復讐鬼になってですね」
「心が荒んでね」
今の野上の様にというのだ。
「実際にどう見てもだね」
「あんなことをするんですから」
「そう、心が荒んでね」
「しかも人から疎まれる」
「だから穴二つだよ」
「そうですね」
「怨みや憎しみを晴らされた人達も」
彼等もというのだ。
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