自覚がなくとも
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第一章
自覚がなくとも
その事件を見てだ、事件を担当する検事である奥田亮一細面で細く小さな目と小さな短い眉に薄い唇を持ち黒髪をかなり短くしている彼は苦い顔で言った。背は一七〇程でかなり痩せていて色黒である。
「これだけやってか」
「はい、全くです」
後輩で彼を助けることになっている本多向陽も苦い顔だった、色白で顎の先が尖った顔で目は切れ長で大きく黒髪はオールバックにしている。すらりとした長身で一八〇近い。
「反省していません」
「一家四人殺してか」
「父親、母親下の娘さん二人に」
「家に押し入ってか」
「一番上の娘さんを道で拉致して」
そうしてというのだ。
「それで家に上がり込んで」
「一番上の娘さんをレイプしてか」
「それで、ですよ」
「家の金全部出させて家に帰ってきた妹さん達も次々にレイプしてか」
「お二人は抵抗して訴えると言ったので」
「首を絞めて殺してな」
「それで、ですよ。殺人がばれない様にする為に」
本多は奥田に忌々し気に話した。
「帰って来たご両親を次々とです」
「玄関で待ち伏せて刺殺したんだな」
「上の娘さんを縛って猿轡噛ませて動けなくしてです」
「喋れなくしてだな」
「それで、です。お母さんは刺して息も絶え絶えで」
「娘さん達の亡骸の前でだな」
「またレイプしました、それで最後上の娘さんも首絞めてお金持って逃げたら」
そうしたらというのだ。
「そこで、です」
「娘さんは何とか生きていてだな」
「そこで縄も猿轡も緩んでいて」
「首絞められた時にもがいてな」
「それで何とかほどけて」
縛られたものがというのだ。
「警察に通報してです」
「奴は捕まったな」
「そうなりました」
「そうだな、一家四人を強盗強姦殺人してか」
奥田は身体を震わせつつ調書を見て話した。
「この他にもか」
「恐喝と窃盗、強姦、傷害合わせて二十一件あります」
「中学の時からしてか」
「はい、そんな奴です」
「それで反省していないな」
「未成年、十七歳だから死刑にならない少年院入って終わりって取り調べの中に言っています」
「そうか、言っていいか」
奥田は本多に怒りを顔に出して前以て確認を取った。
「そうしても」
「はい、何ですか?」
「検事として死刑を求刑するぞ」
こう言うのだった。
「未成年でもな」
「関係ないですね」
「こんな凶悪犯少年院で更正するか」
「絶対にしないですね」
本多も言い切って返した。
「こんな奴は」
「そうだな、少年院を出たらな」
「また同じことしますね」
「それも四人も殺しているんだぞ」
「強盗強姦までして」
「家に押し入ってな」
「それで平気で四人も殺してますね」
本多はこのことを強調した。
「そうですね」
「その罪はどうなる」
「死刑で償わせるしかないですね」
「そうだ、他にあるか」
求刑する刑罰はというのだ。
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