優勝と言うと

「あるかも」
「おい、そこでそう言うのか？」
「いや、そう言ったシーズンはだし」
「ブイやねんあかん優勝してまうとかか」
「そう言うとね」
　その時点でというのだ。
「いつもだしね」
「そのことは否定出来ないか」
「だからね、マモノやケンタッキーのおじさんもね」
「いるか？」
「さっきはいないって言ったけれど」
　それでもというのだ。
「否定したくても」
「出来ないか」
「どうもね」
　結局はこう言った、そしてだった。
　塾の授業を終えて家に帰ってリビングでインターネットでカープの試合を観ていた千佳に塾での話をすると。
　妹は兄に極めて冷めた目で言った。
「阪神ってそうしたチームじゃない」
「おい、冷静に言ってくれるな」
「だって人類最高のネタチームでしょ」
　妹は冷めた目のまま言った。
「毎年シーズンオフにも優勝って言ってるわよね」
「テレ朝もデイリーもな」
「ファンの人達もね」
「僕だってって言うんだな」
「お父さんとお母さんに聞いてみる？お兄ちゃんが今年優勝って言わなかった年なんてね」
　それこそというのだ。
「一度もないわよ」
「当たり前だ、それだけの戦力があるんだからな」
「打線と野手の守備がね」
　この二つがというのだ。
「問題ね」
「そこは改善していってるだろ」
「毎年そう言ってじゃない、それで優勝すると言って」
　そしてというのだ。
「それがフラグになってよ」
「優勝逃してるか」
「ネタチームだけあってね」
「ふん、今年はクライマックスだ」
「カープに決まってるでしょ」
　ヤクルトと横浜は確定でというのだ。
「その言葉もフラグになるわよ」
「そうするって言ったらか」
「カープはね、しかしね」
「しかし？」
「私も嫌いじゃないしね、阪神」
　応援するチームはカープでもというのだ。
「お兄ちゃんが好きな理由もわかるわ」
「そうだろ、最高のチームだろ」
「何だかんだ言ってね」
「九月に入ったら西宮大社に行って来るな」
　他ならぬ甲子園がある西宮市の大社である。
「そして阪神のクライマックスとセリーグ制覇とな」
「日本一お願いするのね」
「そうだ、そして八条大社にも願掛けだ」
　自分達の住んでいる町の神社の神々にもというのだ。
「お寺にも天理教の教会にもキリスト教の方にも行くぞ」
「何でもお願いすればいいって訳じゃないでしょ」
　尚こう言う千佳もいつも色々な神社仏閣にお参りしてカープのことを願っている。
「全く、何処まで阪神命なのよ」
「阪神がなくなれば僕は死ぬからな」
　本気の言葉だった。
「死ぬまで死んでも生まれ変わってな」
「阪神応援するのね」
「そうだ、優勝すると言ったらフラグでもな」
　例えそうでもというのだ。
「僕は言うし信じてるぞ」
「阪神が優勝するって」
「そうだ、今年もクライマックスからだ」
　妹に熱い声で語った、だがネットを観るとそのカープの相手は阪神で。
　苦手カープにまた負けた、千佳は試合が終わると兄に残念だったわねとここでも冷めた目で言った、だが兄はまた明日だと言った。そのうえで自室に戻り勉強をするのだった。


優勝と言うと　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２２・８・３０