チートゲーマーへの反抗〜虹と明星〜
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R3話 張り巡るHint【伏線】
明々と煌めく船——東京湾を遊覧する。
豪華客船と揶揄されるそれの内部……レストランの中に男と女が1人。
ドレスコードを満たした2人を側から見れば新婚さん——若年結婚と見られてもおかしくない……気に留められているかは知らないが。
男がため息をついて一言。
「帰りたい。」
「だーめ♡」
「独り言っぽく思われたくねぇからもう一回言っとくわ。帰りたいです。」
「私も何回も言うよ?——ダメなものはだーめ♡」
さて、この物語の語り手——俺 伊口才はこの目の前にいる女……スカイブルーの瞳にアッシュのボブカットの彼女 渡辺曜に見ての通り東京湾クルーズに拘束されてます。
助けて。
「まぁいいじゃん……せっかく『Aqoursがこっちに来た』って言うのに。」
「———9つの人格が別々に現れるか、Aqoursの9人の統合人格で話すか……こっちではそれが選べるんだったな?」
「そうだよ。もうすぐ梨子ちゃんに交代かな。」
「人格も肉体の大小も上手いこと操れるのも便利な話だ。」
「けどまーくんは大きい方が好きだもんね〜」
「————」
ナニが大きいかは想像に任せるが…BとHで解ってくれ。
明確な言及は避けたいが、彼女の心の深層には残り8人のAqoursメンバーが見ている……統合人格とはその9人全てが記憶も人格も共有した単一の人格である状態時——端的に言えば神モードとでも。
何を言っているのかよくわからない……その理由は人知を超えたのが神である。とでも言っておこうか。
さて、話を続けよう。
「あの子たちも成長してる……楽しみだけど、やっぱり寂しいよ。」
「———言っておくが、アイツらに過干渉は許さん。以前俺たちが自分達に干渉したのは自分自身だったから……干渉するのは一見明らかな道標を見せるだけだ。」
「わかってるよ!!」
「なんでそんなに怒ってんだよ…」
ぷくーっと顔を膨らませ、不満を露にする曜。そのまま俺を睨んで言葉を発する。
「まーくん、あの子たちの事愛してるの?」
「当たり前だ。」
「私にはそうは思えないなぁ……」
「お前『ら』と俺とでは愛の形が違う。ただそれだけの話……慈愛は人を堕落させ、邪悪な支配欲を人に抱かせることへとつながる。俺は支配が大嫌いだ。」
「支配なんて私も嫌いだよ。でも全ての人に慈愛を与えなきゃ不平等……私はそうありたい。」
「———とりあえず、俺は好きにやらせてもらう。」
乱暴に切った高級感あるハンバーグを口に放り込む。それを見た曜はため息をついてしまう……が、すぐさま目にハートが浮かぶ。
「困った人……でもそんなところも———♡」
「完食したら帰『そんなわけないでしょ?』
「梨子ちゃんの次はルビィちゃんだし、その後ベッドに入ったら……キャッ♡」
「2000億歳の若作りババアが乙女面は引くなぁ…」
「———何か言った?」ニコニコ
「空耳空耳。」
このAqours様めんどくさい……
————※————
虹ヶ咲学園生徒会室の手前…
「作戦開始です…!」
怪しげなサングラスにマスクを着用した不審者……もとい、中須かすみは青眼の白猫を抱えて生徒会室に忍び込もうと企む。
いかにも子供らしく、単純明快な作戦———ある意味、普通の人間っぽいかもしれん。
しかしそこに…アノ男が現れる。
「おや、君は…中須かすみ君じゃないか。」
「げっ!あなたは…伊口イフト——先生!?いつ先生になったんですか!?」
「なぁに。ちょっとしたカミワザさ。」
かすみはふと彼がつけていたネームプレートが、教師用であることに気づく……しかしイフトは両方の人差し指と中指を曲げて、誤魔化す。
逆にイフトは彼女の挙動不審さを疑問に思う。
「ところで君はこんなところで一体何を……?」
「いや〜それは……」
あたふたするかすみ……しかし意を決して、とある行動に出る。
「きゃー猫よー(棒)」
「……」
圧倒的棒読みで生徒会室の前で叫ぶかすみ。それに対して何事かと出てきたのは———生徒会長 中川菜々。かすみはその猫を……生徒会長にぶつける(!?)。
たまらず倒れ込む菜々であるが、すぐさま立ち上がってその猫を追いかけていく——一抜け。
しばらくすると中に入っていたセクシーな女性……ウルフカットの青黒髪のロイヤルブルーの目を持つ娘が出て行く。
「あの娘は……」
「今がチャンス!サササ……」
「かすみ——健闘を祈るよ。」
生徒会室に忍び込んだかすみを見届けたイフト。何気に呼び捨てにしている。
さて、彼がその場から離れたのち、方向転換して向かった先は————
「ライフデザイン学科 朝香果林君。」
「あなた——何処かで……」
「伊口イフト。イフトで結構だ。私はとある理由でこの学校で教鞭をとっているのだが…少し協力してほしいことがある。」
「私に?」
「あぁ……君のお友達のためにもなるだろう。」
————※————
ゆりかもめ———お台場を踊るように繋ぐ鉄道。この路線は虹ヶ咲学園の通学によく使われている。
そしてこの2人も———
「どうするの侑ちゃん?」
「何が?」
「スクールアイドル始めるのはいいけど、どうやって始めるのかな?」
「うーん……そっか———」
侑は歩夢に聞かれたことを考え……少し黙り込んでしまう。
スクールアイドル同好会は既に廃部になってしまった。故に入部という道は実質的に断たれたと言ってもいい。かと言って、虹ヶ咲のネームを使わずに独自でアイドル活動をするのも少し無謀さが否めない。
考えるうちに、無意識の中で侑は右胸へと手をやっていた……すると。
「痛っ!!!」
「侑ちゃん!?どうしたの!?」
「何か胸が痛い……もしかして…あの時の———」
この痛みは間違いなく、エグゼイドと名乗るライダーが放ったパンチによるものだ。
エグゼイド ムテキゲーマー———その圧倒的なパンチは君たちの知るムテキゲーマーよりも遥かに強力で、底知れぬ強さを見せている。
その一撃はゼロワンの装甲を意図も容易く崩壊させた……むしろ、その程度の怪我と損害で済ませるように調整されているとすれば……恐ろしいのではないか?
「大丈夫?病院は行かなくて?」
「う、うん。平気、平気。」
「無理しないでよ?———それにしてもあの人……私のユーちゃんを……許せない許せない……」ボソボソ
「ん?どうかした?」
「ううん。自分のことも大切にしてねって思ってたの。」ニコニコ
「ありがと歩夢♪」
一瞬ハイライトの消えた歩夢だが、侑に感謝されたことで一気に目が輝きを取り戻す。
彼女の秘められた激情……怒りか悲しみか。侑を傷つけられた瞬間に人が変わったように呪詛を送り続けた———その先に何があるかは見ものである。
————※————
「あのイジワル生徒会長!!」
カフェテリアでボヤく普通の人間 中須かすみ……歯軋りさせてコッペパンを噛みちぎる。
そんな彼女の頭を撫でる少女が1人。
「怖かったね……でも生徒会室に忍び込んだりするからだよ?」
「グゥ〜!」
怒り収まらぬかすみ———彼女の目的……それは部室のネームプレートの奪還及び、部室復活。奪還は成功した。
しかし肝心の部室は——ワンダフォーゲル部に乗っ取られていた。
その負けを遠吠えしたくて今に至るというわけだ。
「そっか……部室無くなっちゃったんだ————」
落ち込む少女……彼女の名は桜坂しずく。かすみと同じく一年生のスクールアイドル同好会のメンバー。演劇部と掛け持ちしている面倒見のいい淑女。
かすみはそんな彼女に檄を飛ばす。
「こうなったら徹底抗戦だよしず子!」
「えぇ……」
「何その反応!このままだとスクールアイドル同好会は本当に無くなっちゃうんだよ!?」
「それはわかってるんだけど———」
『策なき者に抵抗はできないよ。』
「「!?」」
再びかすみの前に現れる———この男 伊口イフト。何か重厚感のあるBGMが流れてそうな登場……失敬、話がそれた。
イフトは再びかすみとその側にいるしずくに話しかけるため、カフェテリアの席を共有する。
「またあなたですか!?いくら先生でも付きまとうのはストーカーですよ!!」
「別に付き纏ってるつもりはない。ただ……少しキミ達のソレに協力したいんだよ。」
「協力——どういうことですか?」
しずくはイフトに尋ねる。その問いをイフトは待っていたように続ける。
「私はスクールアイドルというコンテンツを盛り上げる……そのささやかな応援をさせてもらっている。」
「「はぁ……」」
「かすみ、是非キミに会ってみて欲しい人がいるのだが……」
「会って欲しい人?」
「あぁ。端的に言うなら———入部希望者だ。」
「ほ、ホントですか!?」
イフトはかすみの強い問いに頷く。
「それを先に言ってくださいよ〜!」
「あと……行くなら早い方がいい。」
「じゃあ早速行ってきまーす!!」
「ふっ…チョロいぜ」と言われても致し方ないスピードでカフェテリアを出ていったかすみ———これもイフトの脳内の計画のうちか。
イフトは……残されたしずくの方を向く。
「キミにも頼みたいことがある……桜坂しずく。」
「私にもですか?」
「キミは演劇部と掛け持ち、同好会に足を運びづらくなる理由も検討がつく———今回はそれを利用させてくれ。」
「利用ですか……?」
着々と進むイフトの立て直し計画……その真相はいかに。
————※————
富士山麓王宮———宮殿の主人、小原魁はプライベートルームのソファで寝転がる。
「あぁ……疲れた。」
「今日は随分飛び回ったね〜ベトナムにアラスカ、チリにニュージーランドまで。」
彼の唯一無二の妻 渡辺月は今日の出来事を振り返る———少し違和感を感じた方は正常な感性を持っておられる……世界を飛び回りすぎている。その理由は後ほど語られるだろう。
さて魁はすぐにソファから立ち上がり、部屋をゆっくりと回り始める。
「だがハニー、俺たちの仕事はまだまだあるよ———いや正確には一生終わることもないだろう。」
エルシャム王 小原魁は部屋を彩るステンドグラスを見つめる……
3人の等身大の人間。
剣を持った黒髪黒眼の父と、みかんに似た果実を持つプリズム髪の母。そして父母と手を繋ぐ輝くプリズム髪と黒眼を持った子———さらにその3人を回る翼を持つ小さき子供たち……
母の愛に感服し、父の剣に畏怖し、長兄たる子に従う天使———太陽系を内包する、宇宙的な存在を匂わせる。
まさに神秘的なステンドグラス。
「神は願いなど叶えないし、話などしてはくれない———そんなことできるのはごく少数。俺たちは伝説を生きてきたんだ……それが今でもよくわかるよ。」
「そっか———『もう』神様だもんね。」
「世間では不死の人間が誕生するのではと騒がれているが……そんなことは絶対にない。人間はいずれ死を迎えなくてはならない———その時を決めるのは神であって、『人間の自我』のような薄っぺらいものじゃない。」
不死の人間が増えること……それでは秩序は乱れてしまう。創造する神あれば、破壊する神も存在する。未知を求め人は人生を歩むが、たどり着く先は破壊であり、究極の自由である。
逆に人生は束縛から始まっているのだ。胎児とは見方を変えれば、究極の束縛を受けている。
「不死の人間は使命を受けた者にしか与えられない……俺たち2人もそうであるように。」
「そっか…私たちに『見えた』ってことはそういうことかぁ。」
「あぁ、俺たちは人間があるべき姿でいるかどうかを監視するのが使命———王国を建てた今となってはね。」
コンコンコン………ガチャ
ノックとともに入ってくる黒いタキシードの老年男性を先頭に、同じ服装の男が4人———執事と言ったところか。
彼らは大きな絵を部屋へと運んできた。
「王様、王妃様。お申し付けのモノをお持ちしました。」
「おっと、随分早かったね〜」
「えぇ王妃様。ある少女が保有しておりましたので、1ケースで快く受け入れてくれました。」
「そうか……早速見せてくれ。」
執事たちが絵を立てる。
描かれていたのは……イコン画。
まず目を見張るのは絵の9割を占めている、大いなる母神のようなモノであろう。
母神の体の中で全てが動いている——まさに宇宙そのもの。
次に目立つのは、その大いなる母神の伴侶たる大いなる父神が母神が手に持つ禁断の箱に太刀を向けている。
母神の一部である世界の中で、神らしき人物とその門番たる赤と青の天使。
その下にいるのが———7人の最高位天使たち。
ただ1人、その顔を背ける者……もう1人、その天使を見つめる天使。
その下の段では胸に短剣を刺されて墜落する最高位天使が見え、堕天使を必死に追いかける天使が1人……よく見ると父なる神の刃に対抗する剣を向けているように見える。
さらにその下に描かれる物語は———
「伝説通りか……コピーは一般に流出しているのか?」
「はい王様。すでに20年前には複製されたモノがあるようです。」
「そうか——ならいい。この部屋の空きスペースに飾っておこう。」
「しかと心得ました。」
不思議なイコン———そこに描かれたモノとは……?
「さ、そろそろ行かなきゃな……」
魁はマントを靡かせてその部屋を出る———
そして、王宮の屋上まで———大時計が置かれた不思議さ漂う城の頂上。
魁がやってくることを見計らったようにやってくる……黒を基調としたコウモリもどき。
魁は話しかける。
「2ヶ月ぶりか———変身するのは。」
『いいや、1ヶ月と29日だ。』パタパタ
「変わらんじゃないか。」
『それで……本格的に動くんだな?』
「あぁ——行くぞ『キバット』!」
『良かろう……久々の絶滅タイムだ!!』
キバットと呼ばれた黒のコウモリもどきは———魁の左手に噛みつき……力を注ぐ。
【ガブリ!】
噛まれた手は血管が浮き出し、顔にステンドグラスのような模様が現れる。
「変身……!」
闇の鎧が形成される。
血のような赤を基調とした装甲に、黒い羽根のような胸部装甲、胸の中央付近に濃いエメラルドが3つ縦に並ぶ。
エメラルドの複眼を持つ王にふさわしい仮面ライダー。
「仮面ライダーダークキバ……王の斡旋である。行くぞ!キャッスルドラン!!」
王宮から……龍が生える。翼が生える。
そう、この城の名はキャッスルドラン。胴体が城となったドラゴン……いわば生きた城である。
キャッスルドランは夜空に飛び立つ———
「気持ちいい風だ……このまま東京まで行こうぜ。」
『ガァ〜!』
黒きマントは靡かせる。
後書き
おっと?1ケースで絵を譲った少女って一体誰なんでしょうねぇ?ニコニコ———
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