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ドリトル先生のダイヤモンド婚式 

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第九幕その三

「そんな本は駄目だって」
「読んですぐにわかるのがいいってね」
「先生言ってるわね」
 チープサイドの家族は先生のこのお言葉を思い出しています。
「聖書も論語も仏典もわかりやすいって」
「言いたいことをはっきり書いているって」
「コーランや天理教の経典もそうで」
「理解しやすいんだよね」 
 オシツオサレツはチープサイドの家族に続きました。
「それこそが真理だってね」
「先生いつも言ってるね」
「真理はわかりやすい」
 老馬も言いました。
「そうだって」
「何を書いているか言っているかわからない思想書は駄目だとも言うわね」
 ガブガブも先生のお言葉を言います。
「そうしたものは実は中身がないって」
「難しいイコール凄いんじゃなくて哲学書イコール偉大でもないね」 
 ダブダブの言葉は明快なものでした。
「そうなんだね」
「そうだよ、問題は内容だよ」 
 先生も言います。
「漫画、ライトノベル、純文学、哲学書のジャンルじゃないんだ」
「内容なんだね」
「それ次第でね」
「それでどうかで」
「哲学書が凄いんじゃなくて」
 そうでなくてというのです。
「内容だよ、だから漫画やライトノベルもね」
「先生は読むんだね」
「そして理解しているんだね」
「そうだね」
「しっかりと」
「そうだよ、だからね」 
 それでというのです。
「これからも読むよ、それも学問だよ」
「漫画やライトノベルを読むことも」
「だから読んでいくね」
「そうしていくね」
「そうだね」
「哲学者でも酷い人は酷いよ、思想家もね」
 先生はこのことは残念そうに言いました。
「特に戦後の日本ではね」
「そうなんだね」
「酷い本が多いんだね」
「何かと」
「そうなのね」
「そうだよ、酷い人が多くて」
 そしてというのです。
「酷い本もね」
「多いのね」
「酷い人が書くと酷い本になる」
「本つまり文章はその人そのものだからね」
「酷い人が書くとそうなるわね」
「どうしても」
「そうだよ、戦後の日本は何を書いているかわからない本が何故か持て囃されて」 
 そうなってというのです。
「それを書いた人が戦後最大の思想家になったんだ」
「吉本隆明だったね」
「あのテロをして沢山の人を殺したカルト教団の教祖を絶賛した人」
「最も浄土に近いとか言ってね」
「そんな人が戦後最大の思想家だったんだね」
「何を書いてるかわからない文章を書いて」
「そんな文章はね」 
 それこそというのです。
「錯覚なんだ」
「あれだよね、難しいけれど読んで理解出来てね」
「それで凄いってね」
「読んだ人に錯覚させるんだね」
「それでこんな文章書いた人凄いって」
「尚更錯覚させるのよね」
「けれど違うんだ、吉本隆明の本質は凄くなったんだ」
 先生は全く、と言い切りました。 
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