英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~
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西ゼムリア通商会議~西ゼムリア通商会議の開催~
2月25日――――――
七耀歴1205年――――立春。リベール王国第26代女王、アリシア・フォン・アウスレーゼの呼びかけによって開催される事になった『西ゼムリア通商会議』が始まった。
西の大国全土を異世界の大国メンフィルと共に制圧した新興の大国、クロスベル帝国からは”黄金の戦王”ヴァイスハイト・ツェリンダー皇帝とクロスベル帝国のもう一人の皇帝―――ギュランドロス・ヴァスガン皇帝の名代にしてギュランドロス皇帝の正妃ルイーネ・サーキュリーー―――――
北東にあるレミフェリア公国からはかつてクロスベルで行われた『西ゼムリア通商会議』にも参加したアルバート大公―――
開催国であるリベール王国からはアリシア女王に加えてクローディア王太女――――
異世界の大国、メンフィル帝国からは現メンフィル皇帝のシルヴァン・マーシルン皇帝――――――
今回の国際会議が開かれる切っ掛けとなった国際問題の元凶の国であるエレボニア帝国からはアルバート大公同様クロスベルで行われた『西ゼムリア通商会議』にも参加したオリヴァルト皇子に加えてユーゲント皇帝の嫡子の一人であるセドリック皇太子と亡命政府の代表者であるレーグニッツ知事、そして亡命政府の支援者にしてヴァイスラント新生軍の”総主宰”ミルディーヌ公女――――――
いずれも国賓クラスのVIP達が今まさにリベールに集まりつつあった。
~キルシェ通り~
王都近郊の街道、『キルシェ通り』からは多くの車両や馬を駆る騎士達、更に空は様々な騎獣を駆る騎士達に守られるように囲まれ、エクリアが運転する黒いリムジンの中にはシルヴァン皇帝が補佐役であるセシリアと共に乗っており、リムジンはエルベ離宮に向かっていた。
~グランセル国際空港~
空港にはエレボニア帝国の高速巡洋艦”カレイジャス”、ヴァイスラント新生軍の旗艦”パンダグリュエル”の揚陸艇、そしてクロスベル帝国の巨大戦艦”ヴァリアントが停泊し、カレイジャスからはミュラーやアルゼイド子爵、トワ達”紅き翼”と共にセドリック皇太子とオリヴァルト皇子、レーグニッツ知事が現れ、揚陸艇からはオーレリア将軍やラマール領邦軍の軍人達と共にミルディーヌ公女が現れ、ヴァリアントからはクロスベル帝国の軍人達やアレックス・ダドリー達クロスベル警察の”捜査一課”の刑事達と共にヴァイスとルイーネが現れ、レミフェリア公家専用の飛行艇からは護衛であるレミフェリア公国の軍人や警官達と共に現れたレミフェリア公国国家元首、アルバート・フォン・バルトロメウス大公とルーシー・セイランド秘書官はそれぞれリベールが用意したリムジンや車両に乗り込み、王国親衛隊が運転する装甲車の先導によってエルベ離宮に向かった。
同日、13:00――――――
各国のVIP達のエルベ離宮入りの完了と離宮前でのアリシア女王による『西ゼムリア通商会議』の開催の宣言が終わり、会議までの準備時間が過ぎると会議が始まり、それぞれの護衛として離宮入りしたアリサ達”紅き翼”、ロイド達”特務支援課”、そしてリィン達”灰獅子隊”は部屋に備え付けてある画面端末で会議の様子を見守り始めた。
~エルベ離宮・紋章の間~
エルベ離宮の最奥である紋章の間には会議用のデスクが設置されてあり、各国の首脳陣、アリシア女王やクローディア姫がそれぞれ席についており、さらにエステル達が窓際で警備をしていた。
「議事進行は僭越ながら私、クローディア・フォン・アウスレーゼが行わせていただきます。会議は一度休憩を挟んで、約5時間を予定しております。ただし進行次第では多少の延長はありえますのでよろしくご了承ください。それと―――会議に際して4名のオブサーバーに参加してもらっています。遊撃士、エステル・ファラ・サウリン・ブライト、ミント・ルーハンス・ブライト、ヨシュア・ブライト、女神フェミリンス。遊撃士協会と言う中立的立場から本会議の安全を保障してもらうため、参加を要請しました。」
「えっと……エステル・ファラ・サウリン・ブライトです。今日はよろしくお願いします。」
「マ……じゃなくてエステルの養女のミントと申します。本日はよろしくお願いします。」
「―――遊撃士協会所属、ヨシュア・ブライトです。誠心誠意、務めさせて頂きます。」
「我が名はフェミリンス。エステル達と同じく此度の会議の安全保障の為に参加を許された者です。以後お見知り置きを。」
クローディア王太女に促されたエステル達はそれぞれ自己紹介をした。
「フッ、”通商会議”の件を考えれば遊撃士協会からの代表者も参加すると予想していたが、まさか君達が代表者とはね。」
「本日はよろしくお願いします。」
「オルディスに続いて、今回もお世話になるよ。」
エステル達が自己紹介を終えるとオリヴァルト皇子は微笑みながらエステル達を見つめ、セドリックはエステル達を見つめて頭を下げ、レーグニッツ知事は軽く会釈をし
「フフッ、去年の西ゼムリア通商会議の件を考えればA級が参加する事は想定していましたが、まさか史上初のSS級に加えて大陸全土で僅か4人しか存在しないS級正遊撃士であるお二人をも”会議の安全保障”の為に参加してもらえるなんて、さすがはアリシア女王陛下ですわね。」
ミルディーヌ公女は微笑みながらアリシア女王を賞賛した。
「ファラ・サウリン卿達はリベールは当然ですが、メンフィルとクロスベルからも信頼されている存在……これ以上ない人選ですね。」
「ああ。そしてエレボニアの貴族や政府はともかく、皇族からの信頼も篤い事も考えると、むしろこの場にいて相応しい遊撃士はエステル達以外は存在しないだろう。」
セシリアの感想にシルヴァン皇帝は同意し
「クロスベルでは例の”教団”の件どころかクロスベル解放や”碧の大樹”攻略にも貢献したと聞いている。クロスベルの民達に代わり、この場を借りて礼を言わせて頂く。」
「クロスベルが大国へと成り上がった事で多くの問題が発生すると思うけれど、民達の生活が平穏であり続ける為にクロスベル帝国は遊撃士協会と連携してそれらの問題を解決して行く所存よ。今後もよろしくお願いね。」
ヴァイスは静かな笑みを浮かべてエステル達を見つめ、ルイーネは微笑みながらエステル達に会釈をした。
「恐縮です。」
「遊撃士は市民達の為にある存在です。あた………じゃなかった。―――私達も急な国際情勢の変化に戸惑っている市民の皆様の為にも仕事により一層励む所存ですので、こちらこそよろしくお願いします。」
「え、えっと……これからもよろしくお願いします!」
各国首脳の称賛の言葉にヨシュアは静かな表情で会釈をし、エステルとミントも続くように会釈をした。
「フム、エステル殿達のご高名は我が国にも轟いておりますが………フェミリンス殿、でしたか。先程クローディア姫の紹介でフェミリンス殿が”女神”であると仰っていましたが……」
「―――事実だ。”姫神”フェミリンス。我が国に遥か昔から伝わる女神にして我らマーシルン家にとって先祖に当たる女神だ。」
アルバート大公の疑問に対してシルヴァン皇帝は静かな表情で答えた。
「な……っ!?それは事実なのですか?」
「ええ。ただしメンフィル皇家と血縁関係があるとはいえ、私はメンフィル帝国とは何の関わりもありませんわ。」
「フェミリンス様の件は我が国の皇女でありながら、癒しの 女神教の司祭として活動しているティア皇女殿下と同じようなものだと思って下さい。」
「なるほど……」
「まさか、メンフィル帝国の皇家の方々は”女神”の血を引いておられるなんて……」
驚いているアルバート大公にフェミリンスとセシリアがそれぞれ説明をしてアルバート大公を納得させ、ルーシー秘書官は信じられない表情でシルヴァン皇帝を見つめ
(エステルと”剣聖”が空の女神と血縁関係である事を知れば、アルバート大公は更に驚くだろうな。)
(フフ、そうですね♪)
ヴァイスの小声にルイーネはからかいの表情で答えた。
「あの……”女神”の件で気になっている事があるのですが……今回の会議に私達ゼムリア大陸の人々が信仰し続けた唯一の女神にして、理由は不明ですが現代に降臨なされた”空の女神”――――――エイドス様は何故参加なされないのでしょうか?」
「そういえば、エイドス様は今回の会議の目的が深く関わっている件―――――”巨イナル黄昏”とやらの影響を防ぐ為に我がレミフェリアを含めたエレボニア以外の各国・自治州の霊脈に結界の付与をされた後の事については存じていませんが……」
その時ルーシー秘書官がある質問をし、ルーシー秘書官の質問を聞いたアルバート大公はある事を思い出してアリシア女王達に視線を向け
「え、えっと、それは……」
「――――――勿論エイドス様にも今回の国際会議に出席して頂けるように打診は致しましたが、エイドス様はゼムリア大陸全土の人々が長く崇めている存在であるご自身による私達”人”の政への意見は必ず何らかの影響を与えてしまう事になると考えられており、現代のゼムリア大陸の政には介入しないよう自らを戒めているとの事なので、今回の会議は欠席するという連絡を既に受けております。」
アルバート大公の質問にクローディア王太女が気まずそうな表情で答えを濁している中アリシア女王は静かな表情で答え
「……なるほど。確かにエイドス様のお考え通り、我々はエイドス様の意見を無視する事は決してできない為、万が一エイドス様が今回の戦争の件でメンフィル・クロスベル連合かエレボニア、どちらかを肩入れするような意見を口にされてしまえば、公平性が欠けた話し合いに発展してしまうかもしれませんな。」
(どうせエイドスの事だから、本音は”めんどくさい”から断ったんでしょうね。)
(万が一聞こえでもしたら不味いから、小声でも口に出すのは止めた方がいいよ……)
(ア、アハハ……ただ、例え”建前”だとしても、エイドスさんの判断は決して間違ってはいないんだよね……)
(……そうですわね。それにエイドスが今回の会議を欠席した他の理由として、七耀教会が崇めている存在であるエイドス自身が介入する事で、本来ならば中立の立場である七耀教会による国家権力への過度な介入を避ける為かもしれませんわね。)
アリシア女王の説明にアルバート大公が納得している中、ジト目になって小声で呟いたエステルにヨシュアは疲れた表情で注意し、苦笑しながら呟いたミントの小声に同意したフェミリンスは真剣な表情を浮かべてある推測をした。
「それでは早速会議を始めさせて頂きます。――――――まずは現在の国際問題――――――メンフィル・クロスベル連合とエレボニア帝国の戦争についての話し合いを始めさせて頂きます。」
「ほう、各国家間の経済や政策等の話し合いを後回しにして、最初にその件を持ってくるとはな。」
「フフ、だけど現在のエレボニアの戦況を考えれば”エレボニアは既に敗戦したも同然の状態”だから、最初に”エレボニアが連合の領土として全て併合されて国として滅ぶ”か、もしくはエレボニアの一部の領土を連合に割譲する事で”エレボニアの国としての力が衰退する”エレボニアの事について話し合う事で、各国家間の経済や政策等の話し合いで決まった事を覆す必要もありませんから、効率的ね♪」
「「「……………………」」」
「フフ………」
クローディア王太女が挙げた最初の議題を聞いたヴァイスは興味ありげな表情を浮かべ、ルイーネは静かな笑みを浮かべて答え、ルイーネの答えを聞いたオリヴァルト皇子、セドリック皇太子、レーグニッツ知事がそれぞれ複雑や辛そうな表情で黙り込んでいる中、エレボニアのVIPの中で唯一敗戦国であるエレボニアが連合に対して実行しなければ連合の要求内容を知っているミルディーヌ公女だけは静かな笑みを浮かべていた。
「ルイーネ皇妃………エレボニア帝国にはクロスベルが”自治州”だった頃より去年の”西ゼムリア通商会議”の件も含めて様々な苦汁を飲まされて色々と思う所があり、そしてクロスベルにとっても今回の戦争相手国でもあるエレボニア帝国に対して厳しい言葉を口にするのは仕方ないかもしれませんが、幾ら何でもエレボニアの代表者達の方々の目の前でエレボニアが”滅ぶ”、もしくは”衰退する”と口にするのは言葉が過ぎるのでは?」
「あら、大公閣下もご存じのようにエレボニアが所有していた大半の領土は私達連合によって”管理”されている上、今から5日前に起こったエレボニアのほぼ全戦力を投入した”ハーケン平原”での大戦ではエレボニア帝国軍は”大敗”し、生き残った兵達は全員”捕虜”として王国軍や連合軍、そして新生軍によって管理されており、後は今回の戦争の”首謀者”であるオズボーン宰相と領土の防衛や治安の為に”大戦”に参加しなかった僅かな戦力の対処しか残っていないのですから、”エレボニアは既に敗戦したも同然の状態であり、戦後は滅亡か衰退が決まっている”という私の言葉も決して間違っていないのでは?」
「……ッ!」
「………確かにルイーネ皇妃の仰る通り、現在のエレボニア帝国の戦力や国力を考えるとエレボニア帝国はもはや連合に勝利する事は”不可能”と言っても過言ではない状況ですが、今回の国際会議は貴国とメンフィル帝国、そしてエレボニア帝国の間で起こった国際問題である”戦争”をどのように解決するのかを話し合う為に行われるのですから、エレボニアが”滅亡”、もしくは”衰退”する事を口にするのは早計なのでは?」
厳しい表情でルイーネに意見をしたアルバート大公だったが微笑みながら答えたルイーネの正論に反論できず、唇を噛み締めて黙り込み、ルーシー秘書官は真剣な表情で意見をした。
「―――――ほう。まさかとは思うがセイランド秘書官は、我らメンフィルもそうだが、盟友クロスベルにも自ら戦争を仕掛けて来たエレボニアが返り討ちにあえば、エレボニアがメンフィル・クロスベル連合に対して戦争を仕掛けた事に対する”賠償”をする必要もないと考えているのか?」
「……ッ!お言葉ではありますが、幾ら何でもそれはシルヴァン陛下の勘繰り過ぎです。今回の戦争が勃発した理由を考えるとエレボニアの代表者の皆さんには申し訳ございませんが、エレボニアはメンフィル・クロスベル連合に対して何らかの”賠償”はしなければならないと考えております。ですが、エレボニアに戦争を強行させたのはオズボーン宰相を含めた戦争を望む一部の愚か者達による暴走であり、エレボニアの皇家であるアルノール家の方々は戦争に反対で連合との和解を望んでおり、戦争勃発後は双方の被害を可能な限り抑える為に独自の活動をしていたという報告を受けています。その点も考慮した上での”賠償”もそうですが、今回の戦争をどのように解決すべきかについての話し合いをすべきなのではないですか?」
するとその時シルヴァン皇帝が目を細めてルーシー秘書官を睨んで問いかけ、シルヴァン皇帝の問いかけに対して辛そうな表情で唇を噛み締めたルーシー秘書官はすぐに気を取り直して自身の考えを口にした。
「なるほど。だが、”被害者”であり、それぞれの国を守る為に実際に兵達が血を流し、言葉通り命も駆け、国民達にもそれぞれ”エレボニアとの戦争に敗北しない為”に負担を強いられた我らメンフィル・クロスベル連合の”加害者”であるエレボニアに求める”賠償内容”は少なくても、”考慮する必要”があるのではないか?」
「それは…………」
「………シルヴァン陛下。確かに今回の戦争が勃発した経緯を考えるとメンフィル帝国の件にせよ、クロスベル帝国の件にせよ、”先に仕掛けたのはエレボニア帝国”である事は事実ですが、”国防”の為とはいえ戦争相手国を侵略した時点で”被害者”は”加害者”になると思われますが。」
しかし不敵な笑みを浮かべて答えたシルヴァン皇帝の意見に対する反論を持ち合わせていないルーシー秘書官は答えを濁し、アルバート大公は厳しい表情でシルヴァン皇帝に意見をした。
「フッ、どうやら我ら連合と大公殿――――――いや、レミフェリアは今回の戦争の件についての認識が違っているようだな。」
「……それはどういう事ですか?」
嘲笑した後答えたシルヴァン皇帝の言葉が気になったアルバート大公は眉を顰めて訊ねた。
「今回の戦争、レミフェリア(そちら)はエレボニア帝国が我ら連合に対して実行した国際問題に対する”報復”も兼ねた侵略戦争だと認識している様子だが、我ら連合にとっては”国防”もそうだが、”ギリアス・オズボーンを首謀者としているテロリストの集団の撲滅”という認識で戦ってきたつもりだ。」
「な――――――」
「ええっ!?オ、オズボーン宰相達――――――エレボニア帝国軍や政府を”テロリストの集団”扱いするなんて……!」
「………シルヴァン陛下。一国の”宰相”を”テロリストの首謀者”扱いする事もそうですが、エレボニア帝国の政府や軍を”テロリストの集団”と認識する事は幾ら何でも無茶な言い訳かと思われるのですが。」
シルヴァン皇帝が口にした驚愕の指摘にレーグニッツ知事は思わず絶句し、クローディア王太女は驚きの表情で声を上げ、アリシア女王は真剣な表情で指摘した。
~待機室~
「オ、オズボーン宰相達が”テロリストの集団”って……!」
「む、無茶苦茶過ぎる……!」
「オジサン達をテロリスト扱いすることもそうだけど、”テロリストの撲滅という大義名分”でエレボニアに侵略するとか無茶苦茶な理論じゃん!?」
一方その頃待機室で会議の様子を見ていたアリサとマキアス、ミリアムはシルヴァン皇帝の発言に信じられない表情で声を上げ
「確かに無茶な理論ではあるのだけど……今回の戦争の件でのオズボーン宰相達の所業を考えてみると、そう言われても仕方ないかもしれないわ……」
「はい……クロイツェン州全土の”焦土作戦”や”アルスター襲撃”は”テロ”と判断されてもおかしくない出来事でしたし……」
「それよりもこの会議でオズボーン宰相達が正式に”テロリスト”に認定されたら、不味い事に発展するかもしれないわよ……」
「ああ………ギリアス達が正式に”テロリスト”認定されちまえば、”テロリストに支配されたエレボニアをテロリストから解放する”や”テロ撲滅”という大義名分の下、未だギリアス達の所に残っている帝国軍の残存戦力全てが”テロリスト扱い”されて連合と新生軍が帝国軍の残存戦力全てを”殲滅”する事が各国に認められちまうかもしれねぇぞ。」
「それどころか、最悪は連合や新生軍だけでなく各国――――――リベールもそうだが、レミフェリアの戦力との共闘による殲滅もありえるな……」
エレインとトワは複雑そうな表情で答え、サラとクロウ、ジンはそれぞれ厳しい表情である推測をした。
「そ、そんな………」
「くっ……幾ら”義”はヴァイスラント新生軍にある事を示す為とはいえ、祖国の正規軍がテロリスト扱いされることを許容するとは、ミルディーヌ公女は何を考えている……!?」
サラ達の推測を聞いたエリオットは不安そうな表情を浮かべ、ユーシスは厳しい表情を浮かべて映像に映っているミルディーヌ公女を睨んだ。
~紋章の間~
「あら、現にオズボーン宰相達現エレボニア帝国政府は我ら連合との衝突が近い事を悟ると、時間稼ぎの為に”第四機甲師団にクロイツェン州全土を焦土に変えさせるという正にテロリストが行うような鬼畜の所業”を行った事もそうですが内密に猟兵団や暗殺者を雇い、自国の領民達を虐殺しようとした事件―――”アルスター襲撃”や自国の皇帝を暗殺しようとした事件―――”ユーゲント三世暗殺未遂事件”を起こしたのですから、”テロリスト認定”されて当然かと。現に今のエレボニアの政府や軍がテロリストに堕ちた事を悟り、テロリストと化した政府や軍を正す為に結成されたエレボニアの勇士達――――――”ヴァイスラント新生軍”が存在しているではありませんか。」
「私達新生軍の件もそうですが、メンフィル・クロスベル連合には焦土と化したクロイツェン州に復興の為の支援や治安維持を今も行って頂いていますし、クロイツェン以外の他の州に関しても連合による”治安維持”は行っていますが、”物資の徴収や略奪”等と言った”侵略行為”は行っていない事はヴァイスラント新生軍が保証致しますわ。更に皇家の方々には一人も危害を加えていない上、銃撃された陛下がエレボニアにとっては戦争相手国であるクロスベルの領土内にある”聖ウルスラ医科大学病院”への入院並びに手術の要請を受け入れて頂けたのですから、連合は当然として我々新生軍の行いは”陛下の信頼を裏切ったギリアス・オズボーンを首謀者とするテロリストに支配されたエレボニアを救う行為”であると認識しておりますが。」
「そ、それは…………」
「むう………」
「…………………」
「やれやれ、ミルディーヌ君が連合に味方する事はわかってはいた事だけど、君もエレボニアの代表者の一人であるならばもう少し私達エレボニアの事をフォローしてくれないかい?」
アリシア女王の指摘に対する反論をセシリアは説明した後ミルディーヌ公女に視線を向け、視線を向けられたミルディーヌ公女はセシリアの説明の捕捉をし、二人の説明に対して反論ができないクローディア王太女は複雑そうな表情で答えを濁し、アルバート大公は複雑そうな表情で唸り声をあげ、セドリックは辛そうな表情で黙り込み、オリヴァルト皇子は疲れた表情でミルディーヌ公女に指摘した。
「まあ………エレボニアや殿下達アルノール皇家への援護の為にもセシリア将軍閣下の説明を補填する話をさせて頂いたのですが、殿下には私のささやかな援護をご理解頂けなくて残念ですわ。」
「フフ、ミルディーヌ公女殿は遠回しな言い方で”悪いのはオズボーン宰相達であって、オズボーン宰相を重用していたユーゲント三世を除いたアルノール皇家自体は悪くない”と仰っていますから、公女殿はエレボニアやアルノール皇家の為の発言をしていますわよ、オリヴァルト殿下。」
「それは………」
残念そうな表情を浮かべて答えたミルディーヌ公女に続くように苦笑しながら指摘したルイーネの指摘に対して反論できないオリヴァルト皇子は答えを濁した。
「―――――話を戻すが、今回の戦争に非があるのはオズボーン宰相達も当然だが、オズボーン宰相の野心に気づかず、奴を信頼し続けたユーゲント三世――――――つまりはアルノール皇家やエレボニア帝国にも責任はあるというのは明白なのだから、”被害者である我ら連合がエレボニアに求める賠償内容を考慮した上での話し合いを行い、賠償内容をこの会議で決定、並びに調印する”と認識している我ら連合の考えは間違っている考えか?」
「………いえ、シルヴァン陛下の仰る通りです。」
「お祖母様………」
「問題は貴国がエレボニアに求める件の賠償内容がどのような内容かですな……」
「……………………」
シルヴァン皇帝の問いかけに対して静かな表情で肯定したアリシア女王の様子をクローディア王太女は辛そうな表情で見つめ、アルバート大公は重々しい様子を纏って呟き、ルーシー秘書官は不安そうな表情で黙り込んでいた。
「シルヴァン皇帝、少しいいだろうか?」
「何だ?」
「連合がエレボニアに要求する条約の話をする前に確認しなければならない事がある事に気づいたのだが……オズボーン宰相達によって”アルスター襲撃”の件での冤罪を押し付けられた事で今回の戦争に巻き込まれ、実際に国土が侵略されかけ、国防の為に先日の大戦に出兵せざるを得なかった王国もエレボニアに対して”賠償”を求めると思われる上、また我ら連合とエレボニアの戦争に巻き込まれてしまった王国の意見も当然考慮する必要もあると思うが……そこの所を王国はどう考えているかを先に聞くべきではないだろか?」
「なるほど、確かにヴァイスハイト皇帝の意見は一理あるな。」
するとその時シルヴァン皇帝に声をかけたヴァイスが真剣な表情でアリシア女王とクローディア姫へと視線を向け、ヴァイスの意見に同意したシルヴァン皇帝はヴァイスに続くようにアリシア女王とクローディア王太女へと視線を向けた。
「……ッ!」
「……まず、先日の”ハーケン平原”での”大戦”で国防の為に王国軍が出兵せざるを得なかった事に対するエレボニアへの”賠償”の件についてですが……先日の大戦で王国を守る為に傷ついた兵達の治療費もそうですが、戦死した兵達のご家族へのせめてもの謝罪の証としての”見舞い金”や今後の生活を保障する為の”遺族年金”を支払う為に必要な金額として計上した予算を”賠償金”として戦後のエレボニア帝国に要求するつもりです。」
ヴァイスの疑問に対してアリシア女王を含めた王国政府が下した決断を知っているクローディア王太女が辛そうな表情で息を呑んでいる中アリシア女王は静かな表情で答えた。
(ええっ!?じょ、女王様達――――――リベールまでエレボニアに”賠償”を求めるなんて……!)
(残念ではあるけど、エレボニアに賠償を求める女王陛下達の判断は決して間違ってなんていないし、むしろ”賠償を求めない方が問題になる”と思うよ。)
(そうですわね。ただでさえ”アルスター襲撃”という冤罪を押し付けられた事で”百日戦役”での恨みも含めてリベールの国民達のエレボニアに対する”怒り”は高まっている上実際に侵略までされかけたのですから、それらに対して何の賠償も求めなければ、リベールの国民達がリベール王家や政府に対して強い不満や怒りを抱かせてしまう事へと発展してしまいますもの。)
(戦争に負けたのならまだしも、戦争に勝った以上、リベールがエレボニアに賠償を求めなかったらリベールの人達が女王様達の判断を許さず、その件でリベールに混乱が起こるかもしれないから、それを防ぐ為にも女王様やクローゼ達はエレボニアに賠償金を求める事を決めたんでしょうね……)
アリシア女王が口にした信じ難い答えに驚いているミントにヨシュアとフェミリンスは小声で真剣な表情で説明し、エステルは複雑そうな表情で呟いた。
「次に”アルスター襲撃”の件での”エレボニア帝国政府が作り上げたリベールへの冤罪”の件につきましては、エレボニア帝国政府や軍部の主戦派――――――メンフィル・クロスベル連合の言葉を借りれば”テロリストとされているオズボーン宰相達による独断であって、アルノール皇家やエレボニア帝国自身の意志”ではないと認識していますので、今後永遠にリベールとの友好関係を崩さない事もそうですが、リベール・エレボニア間で何らかの問題が発生した場合、”武力行使による解決以外の解決方法を取る事”を約束して頂く事でエレボニア帝国と和解するつもりです。」
「なんと……リベールまでエレボニアに賠償金を要求するおつもりとは………」
「フフ、リベールは”百日戦役”の件もありますから、エレボニアとの戦争に敗北したならまだしも、勝利した以上少なくても賠償金を要求しなければ戦争に参加した兵達もそうですが国民達がリベール王家や政府に反発する可能性は十分に考えられますから、幾ら”不戦条約”を提唱したリベールと言えど、今回の戦争でエレボニアがリベールに対して犯した”罪”を”無罪放免”という訳にはいかないのですから、女王陛下達リベール王国の決断は当然かと思われますが。」
「それは…………」
アリシア女王が説明を終えるとアルバート大公は信じられない表情でアリシア女王とクローディア王太女を見つめ、アルバート大公に説明をしたルイーネの説明に反論の言葉が見つからないルーシー秘書官は複雑そうな表情で答えを濁した後辛そうな表情でクローディア王太女を見つめた。
「ほう。リベールもエレボニアに”賠償金”を求めるとは正直驚いたぞ。リベールを侮辱する訳ではないが、”平和主義”のリベールの事だから、賠償を求めない代わりに”不幸な行き違い”等と言った事を理由にしてリベールとエレボニアの永続的な友好関係、もしくはエレボニアによるリベールへの侵略行為の永続的な禁止を条件にして和解すると考えていたのだが。」
「今回の戦争で連合がエレボニアにとっては相当負担になると思われる賠償を求める件を考えますと、エレボニアの友好国の王家である私達としてはエレボニアに”追い討ち”をするような事はしないでシルヴァン陛下が今仰ったような形で解決をしたいというのが本音ですが、国民達もそうですが私達やリベールの国民達を守る為に実際に”大戦”に参加した兵達の気持ちも考えますと、エレボニアに何の賠償も求めなければ先程ルイーネ皇妃陛下が仰った問題が発生する可能性も考えられますので、王家や政府、そして王国軍の上層部達で話し合った結果お祖母様――――――女王陛下が仰った内容で今回の戦争の件でのエレボニアとリベールの問題を解決するという結論になったのです。」
(クローゼ………)
「ちなみにエレボニア帝国は今の話を聞いて何か反論はあるのか?」
リベールの決断を知ったシルヴァン皇帝は感心した様子でアリシア女王を見つめて呟き、その場にいる全員に決断に到るまでの経緯を辛そうな表情で説明するクローディア王太女をエステルは心配そうな表情で見つめ、ヴァイスは不敵な笑みを浮かべてオリヴァルト皇子達に視線を向けて問いかけた。
「今回の戦争もそうだが去年の内戦でも謝罪だけでは済まされない罪をいくつも犯してしまったエレボニア帝国やアルノール皇家の罪を償う為にもメンフィル・クロスベル連合は当然として、内戦の件でエレボニアに戦争を仕掛けようとしていたメンフィル帝国を内戦が終結するまで押し止めて頂いた事でできたエレボニアのリベール王国への”大恩”を仇で返してしまったリベール王国にも謝罪もそうだが賠償をする必要があると考えているので、女王陛下が仰った賠償内容は必ず実行する事をこの場で確約する。」
「勿論リベール王国に許して頂ければ、今後も友好関係を続行したいと考えていますので、今回の戦争の件でのリベール王国がエレボニアへの要求は必ず全て実行する事を帝位継承者としても確約致します。」
「私の方も特に反論等ございませんわ。――――――リベール王国の寛大なお心遣いと慈悲に心から感謝致しますわ。」
「我々政府としても、リベールの寛大なお心遣いや慈悲には感謝しておりますし、賠償金を含めた要求を全て実行する事に異論はございませんが………賠償金の金額は幾らになるのでしょうか?」
ヴァイスの問いかけに対してオリヴァルト皇子、セドリック、ミルディーヌ公女はそれぞれ真剣な表情で答え、3人に続くように3人の答えに同意したレーグニッツ知事は不安そうな表情でアリシア女王に訊ねた。
「我が国がエレボニアに要求する賠償金の金額は2000億ミラになります。」
「勿論、戦後すぐに支払う事まで要求するつもりはございません。戦後のエレボニア帝国の状況を考えますと2000億ミラの支払いは復興に支障をきたす程の相当な負担になると考えておりますから、国内の復興が終わり、経済や政府の財政が回復してからで構いませんし、支払い方法は一括ではなく分割でも構いません。」
「リベールの寛大なお心遣いと慈悲に心から感謝いたします。時間を頂く事になるかと思われますが、必ず賠償金の支払いは完遂させて頂きます。」
アリシア女王とクローディア王太女の説明を聞いたレーグニッツ知事は安堵の表情を浮かべた後その場で頭を深く下げて感謝の言葉を述べた。
「最後に今回の戦争の件での我が国の意見についてですが…………私達リベールは連合が開示する賠償内容に対して抱く疑問を解消する為の”質問”等はしますが、”意見をするつもりはございません”。」
「ほう?」
「あら……」
「なるほど、賠償の件に関してはリベールは”不干渉”を選択し、あくまで”西ゼムリア通商会議の開催国としての立場”――――――つまりは”会議の進行役としての立場”に没頭することにしたのか。」
「フフ、さすが”賢王”と称されている御方ね。今回の戦争の件でのリベールの立場を考えたら、その選択が最適な選択だもの。」
アリシア女王が口にした驚愕の答えにシルヴァン皇帝は興味ありげな表情を浮かべ、セシリアは意外そうな表情を浮かべ、静かな表情で呟いたヴァイスに続くようにルイーネは静かな笑みを浮かべて呟いた。
「ええっ!?」
「な―――――それでは連合が開示する賠償内容に関してリベールは”不干渉”という事ではございませんか……!”不戦条約”を提唱し、連合とエレボニアの戦争の件を解決する為にも今回の”西ゼムリア通商会議”の開催を提案したリベールが何故………」
メンフィルとクロスベルのVIPの面々が落ち着いている一方、リベールの信じ難い決断を知ってそれぞれ血相を変えたルーシー秘書官は驚きの表情で声を上げ、アルバート大公は絶句した後信じられない表情でアリシア女王とクローディア王太女を見つめて疑問を口にした。
「大公閣下もご存じと思われますが、連合とエレボニアの戦争が勃発する前にエレボニア帝国は内戦の最中、メンフィル帝国も内戦に巻き込んだ事でメンフィル帝国との国際問題が発生し、メンフィル帝国がその国際問題解決の為の賠償をエレボニア帝国軍に求めた際、期限内に賠償を実行しなければ”報復”としてエレボニア帝国に武力行使をする――――――つまり、内戦の最中であるエレボニア帝国に戦争を仕掛ける事を警告した際に、私達リベールは不戦条約の提唱者として、そしてエレボニアとメンフィル、双方の友好国としてエレボニア帝国とメンフィル帝国の戦争を阻止する為にもメンフィル帝国には内戦が終結するまで内戦の件でのメンフィル帝国とエレボニア帝国の間に発生した国際問題の解決を思い止まって頂くように言葉を尽くしました。その甲斐もあり、寛大な御心を持つメンフィル帝国には2度もエレボニア帝国に戦争を仕掛ける事を思い止まって頂けたのですが、2度目の話し合いの後、当時の話し合いの際にメンフィル帝国の代表者として出席されたリウイ陛下より『幾ら盟友のリベールの頼みであろうと”3度目はない”事やこれ以上エレボニアを擁護する事を行えば、メンフィルはメンフィルとエレボニアの戦争の際リベールを第三者――――つまり、”中立の立場”として認めない為リベールの仲介には応じない』という忠告をされた事で私達は”加害者”であるエレボニア帝国の擁護ばかりをして、”被害者”であるメンフィル帝国には負担と我慢ばかりを強いさせてしまった事に気づき、内戦が終結した後両帝国間の国際問題を解決する為にもリベールがメンフィル帝国より”リベールは中立の立場”である事を認めて頂く必要があると判断し、リウイ陛下――――――いえ、メンフィル帝国の忠告に従う事を決めたのです。」
「そして今回の戦争ではメンフィル・クロスベル連合とエレボニアの戦争に巻き込まれた事で”国防”の為とはいえ、リベールも出兵し、メンフィル・クロスベル連合と共に多くのエレボニアの兵達の命を奪ってしまいました。その件とメンフィル帝国の忠告の件を考慮した結果、”今回の戦争の件でメンフィル・クロスベル連合によるエレボニア帝国への賠償内容にリベールには意見をする資格がない”と判断したのです。」
「そんな………」
「確かにお二人の仰っている事にも理解できますが、”リベールが戦争に巻き込まれたからこそ、連合のエレボニアへの賠償内容に意見する資格が発生する”事で、内戦の件でのメンフィル帝国の忠告の効果も消えると思われますが。」
アリシア女王は静かな表情で、クローディア王太女は辛そうな表情でリベールの決断の事情を説明し、メンフィル・クロスベル連合も意見を無視する事ができないと思われたリベールが連合のエレボニアへの賠償内容について”不干渉”を貫く事で賠償の件で”中立としての立場”でエレボニアを擁護できる国は実質レミフェリアのみであるという事実にルーシー秘書官は不安そうな表情を浮かべ、アルバート大公は真剣な表情で意見をしてアリシア女王とクローディア王太女に賠償の件でリベールも意見をする事を説得しようとしていた。
「戦争に巻き込まれた件で父上―――我が国の忠告の効果も消えるという発言に関しては特に文句等はないが………それよりも今回の”西ゼムリア通商会議”にレミフェリアの代表者として大公自身が参加する事にある”懸念”を抱いていたが……どうやら、その”懸念”は当たっていたようだな。」
するとその時シルヴァン皇帝が真剣な表情でアルバート大公を見つめてある言葉を口にし
「私自身がこの会議に参加した際の”懸念”、ですか?それは一体どういう意味なのでしょうか?」
シルヴァン皇帝の言葉が気になったアルバート大公は眉を顰めてシルヴァン皇帝に訊ねた。
「我が国が集めた情報によると貴公の交友関係は広く、その中には現エレボニア皇帝であるユーゲント三世も含まれていて、お互い親しい間柄だとの事だったな。」
「確かにその通りですが………その話とシルヴァン陛下が抱いている”懸念”にどう関係してくるのでしょうか?」
「遠回しな言い方はせず、直截に言わせてもらう。今回の会議、レミフェリアは”中立の立場としての意見”を建前に我らメンフィル・クロスベル連合との戦争に敗北したエレボニアを擁護し、連合がエレボニアに求める賠償内容を緩和させる為に参加したのではないかと疑っている。――――――何せ大公とユーゲント三世は親しい間柄との事だからな。苦境に陥った”友人”を助ける為にエレボニアを擁護する考えに繋がる事はおかしくはあるまい。」
「!!」
「お待ちください!レミフェリアは今回の戦争に関してあくまで”中立の立場”です!その証拠に銃撃されたユーゲント陛下をクロスベルにある聖ウルスラ医科大学病院に入院させ、治療の為の手術を手配して欲しいというエレボニア帝国政府の要請もそうですが、我が国とエレボニア帝国による食料・医療物資を除いた全ての物資の取引の停止、並びに戦争が終結するまでの間エレボニア帝国関係者による停止した取引の再開の交渉に応じないという貴国の要請にも応じました!幾ら大公閣下とユーゲント皇帝陛下が親しい間柄とはいえ、大公閣下は政治に”私事”を反映させるような方ではありませんので、無礼を承知で申し上げますがシルヴァン陛下の懸念は邪推かと思われます!」
シルヴァン皇帝の懸念を知ったアルバート大公が目を見開いている中ルーシー秘書官が真剣な表情で反論した。
「フン、そういうセイランド秘書官も内心ではエレボニアを擁護する為にも大公と共にこの会議に参加したのではないか?セイランド秘書官は学生時代、リベールの”ジェニス王立学院”に留学して生徒会に所属し、留学の間はセイランド秘書官のようにジェニス王立学院に留学して生徒会に所属していたオズボーン宰相直属の子飼いである”鉄血の子供達”の一人とクローディア王太女共々親しい間柄であったとの事ではないか。」
「ッ!!」
「ッ!確かに私と王太女殿下はレク――――――いえ、アランドール少佐とは学生時代、同じ生徒会の役員同士としてもそうですが友人や先輩・後輩同士として親しい間柄であった事は否定しませんが、私も王太女殿下も政治に私事を反映させるといったこの国際会議に参加する者として相応しくない行為は決して行いません!」
鼻を鳴らして皮肉気な笑みを浮かべて答えたシルヴァン皇帝の指摘を聞いたクローディア王太女が辛そうな表情で唇を噛み締めている中、クローディア王太女のように一瞬唇を噛み締めたルーシー秘書官はすぐに立ち直って真剣な表情で反論した。
「だといいがな。」
「我が国は去年の内戦の件で、”被害者”であるにも関わらずエレボニアを擁護するリベールに免じて一方的に負担と我慢を強いられた経験もあった為、エレボニアの皇家や政府の関係者と親しい間柄の人物ばかりのレミフェリアを疑わざるを得なかった事を寛大な御心を持って理解し、我が国の邪推を許して頂けると幸いですわ。」
「まあ、それぞれの状況を考えれば、メンフィルがレミフェリアに対してそんな邪推を抱いてしまうのも無理のない話だな。」
「ええ。皇家や政府の関係者に親しい間柄の人物がいる程レミフェリアとの縁が深いエレボニアに対して、メンフィルはレミフェリアとの縁は薄い―――いえ、”皆無”なのだから、仮にレミフェリアが擁護するとしたら、どちらを擁護するかは明白だものね。」
ルーシー秘書官の反論に対してシルヴァン皇帝が軽く流している中セシリアが静かな表情で答え、セシリアの話を聞いたヴァイスとルイーネは真剣な表情を浮かべてセシリアの話に同意し
「……内戦の件については幾ら戦争を阻止するためとはいえ、メンフィル帝国に対して公平性に欠けたお願いを2度もしてしまった事に私達リベールは今でも後悔しております。シルヴァン陛下にはこの場にて改めてお詫びを申し上げます。――――――本当に申し訳ございませんでした。」
「頭を上げられよ。その”償い”がアリシア女王とクローディア王太女が先程宣言されたように、メンフィル・クロスベル連合のエレボニアに対する賠償内容についてリベールは”不干渉”を貫く事である事は理解している。そもそも、元を正せば我らメンフィルに謝罪すべきはリベールではなく、エレボニアだ。」
「………シルヴァン陛下の仰る通り、メンフィル帝国を含めたこの場にいる各国の方々に謝罪すべきはエレボニア帝国です。去年の内戦の件もそうですが、今回の戦争の件もエレボニアに全面的な非がある事は理解しておりますので、どうか大公閣下達はあくまで”中立の立場として”メンフィル・クロスベル連合による我々エレボニア帝国の処遇について厳正な判断をして頂くようお願い致します。」
「……元々そのつもりではあるが、オリヴァルト殿下の嘆願は承りました。それで………話を戻しますが、肝心のメンフィル・クロスベル連合がエレボニア帝国に要求するつもりでいる賠償内容はどのようなものなのか説明して頂いても構わないでしょうか?」
アリシア女王はシルヴァン皇帝を見つめて頭を下げて謝罪し、アリシア女王の謝罪を受け取ったシルヴァン皇帝は静かな表情で答えた後オリヴァルト皇子達エレボニア帝国のVIP達に視線を向け、シルヴァン皇帝に視線を向けられたオリヴァルト皇子は重々しい様子を纏って答え、オリヴァルト皇子の嘆願に対して静かな表情で答えたアルバート大公はシルヴァン皇帝に視線を向けて問いかけた。
「いいだろう。――――――セシリア、例の賠償内容の写しを全員に配布してくれ。それとアリシア女王、プロジェクターを用意してもらっても構わないだろうか?」
「プロジェクターの用意をですか?何故でしょうか?」
アルバート大公に視線を向けられたシルヴァン皇帝は頷いた後セシリアに指示を出し、そしてアリシア女王にある要請をし、シルヴァン皇帝の要請に眉を顰めたアリシア女王は戸惑いの表情でシルヴァン皇帝に訊ねた。
「会議の様子はそれぞれの待機室で各国の”護衛”も見ているのだろう?―――ならば、ついでに見せてやろうと考えたまでだ。特にオリヴァルト皇子達の護衛にして今回の戦争に度々介入してきた”紅き翼”の者達は一刻も早く知りたいはずだろうからな。――――――自分達と決別し、更には恩師を討った級友のメンフィル帝国軍での働きはメンフィル・クロスベル連合がエレボニアに求める賠償内容にどれ程の影響を与えたのかを。」
「そ、その”級友”と言うのはまさか…………」
「去年のエレボニアの内戦終結に導いた英雄にして、今回の戦争でも様々な活躍をし、先日の大戦ではエレボニア帝国軍の総大将であるヴァンダイク元帥を討って大戦を終結に導いたかの”灰色の騎士”ですか……」
「………………」
「………エレボニアの代表者の方々は本当によろしいのですか?」
不敵な笑みを浮かべて答えたシルヴァン皇帝の説明を聞いてすぐに察しがついたクローディア王太女は不安そうな表情を浮かべ、アルバート大公は重々しい様子を纏って呟き、ルーシー秘書官は複雑そうな表情で黙り込み、アリシア女王は複雑そうな表情でオリヴァルト皇子達に視線を向けて訊ねた。
「―――はい。元々連合のエレボニアに要求する賠償内容は後で彼らにも教えるつもりでしたから構いません。」
「その……厚かましい事かと思われますが、紅き翼の皆さんを含めてこの会議の様子を見ている護衛の方々にも見やすいように取り計らって頂けると幸いです。」
「―――――わかりました。すぐに手配を致します。――――――クローディア。」
「はい、お祖母様。」
アリシア女王の問いかけにオリヴァルト皇子とセドリックはそれぞれ静かな表情で答え、二人の答えを聞いたアリシア女王はクローディア姫に視線を向け、視線を向けられたクローディア王太女は頷いた後内線を使ってどこかへの通信を始めた。
その後セシリアは各国のVIP達に裏向けにしてある賠償内容が書かれている書面を配り、更には会議室にプロジェクターが設置され、各国のVIP達が一斉に書面を表にして賠償内容を確認し始めると同時にプロジェクターにはプロジェクターに設置された賠償内容が書かれている書面が映った――――――
後書き
西ゼムリア通商会議篇もちょっと長くなると思うので、タイトルをつけました。さすがにハーケン会戦篇程長引く事はありませんのでご安心を……なお、通商会議篇のBGMは空シリーズの”荒野に潜む影”か閃4の”それぞれの覚悟”のどちらかだと思ってください♪
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