恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第百二十五話 丈、学問をするのことその七
「何もかもが好みなのじゃ」
「そうみたいね。本当にね」
「まさに一目惚れだったしな」
魏延にとっては劉備はまさにそうした相手なのだ。
「あれではそうそう間に入られぬが」
「それでも愛紗ちゃんもね」
「うむ、愛紗殿も桃香様を大事に思っておるからのう」
「愛紗ちゃんはそういう気はないけれど」
そこが魏延とは違う。しかしそれでもなのだ。
「何処か嫉妬してるわね」
「愛紗殿は嫉妬深いな」
「そうね。ああ見えてね」
それで魏延にもくってかかるというのだ。
「それが悪い方向にはいかないけれど」
「それが救いじゃな。愛紗殿は悪いことはせぬ」
そういうことこそ関羽が最も嫌うことなのだ。それでなのだった。
「焔耶もその辺りはしっかりしておるしな」
「人としての筋はいい娘よね」
「実にな。我が弟子ならがよい奴じゃ」
こう言って微笑みも見せる厳顔だった。
「しかし。取り合いはのう」
「それは駄目なのね」
「桃香様が困ってしまうわ」
だからそれはだというのが厳顔だった。
「実に厄介じゃな」
「それでも三人でいつも一緒ならいいわね」
「かなり問題は減るからのう」
「そうね。それじゃあ今の状況が最善ね」
今考えられる限りのだというのだ。
黄忠はこう言ってからだ。そのことを言った張飛についても話した。
「鈴々ちゃんもいいこと考えるわよね」
「そうじゃな。策とかそういうことは苦手じゃがな」
「閃きは凄いわね」
「あながちアホという訳ではない」
張飛はどちらかというとだった。
「馬鹿ではあってもな」
「馬鹿とアホは違うものなのよね」
「左様。どちらかというとあ奴は馬鹿じゃ」
つまりものを知らないというのだ。
「しかしアホではない」
「ものがわからないというのじゃないわね」
「そこが違う」
張飛について考えるうえで極めて重要なことだった。
「そういえばわし等のところには馬鹿は多いが」
「アホはいないわね」
「うむ、おらん」
そちらはいなかった。そしてだ。
「馬鹿は時として大きなことをするからのう」
「そうね。私達もそうだし」
「ははは全くじゃ。わしも御主も馬鹿じゃ」
「昔からそうだったけれど」
「歳を取ってさらに馬鹿になったわ」
厳顔は口を大きく開けて笑っていた。高笑いだった。
「ではより馬鹿になろうぞ」
「今よりももっとね」
「うむ、馬鹿から大馬鹿になってやるわ」
「そうね。そうなりましょう」
二人は馬鹿について笑って言っていた。しかしだった。
丈は今だ。賈駆に呆れられながらこう告げられていた。
「君馬鹿でしょ」
「何っ、俺の何処が馬鹿だ!」
「あのね。字も殆ど読めないし計算の初歩の初歩もできないじゃない」
見ればあちらの世界で中学一年程度の字と計算だった。どちらもわからないというのだ。それでだ。賈駆は呆れて彼に言ったのである。
「それでどうして馬鹿じゃないって言えるのよ」
「あれっ、この問題ならよ」
「眠兎達にも解けるよ」
乱童と眠兎が地面に書かれた問題を見てあっさりと解いていく。
「こうだよ?」
「正解よね」
「二人共正解よ」
賈駆は二人については合格だと話す。
「というか君達もわかるのよね」
「こんなの簡単だろ」
「そう、簡単簡単」
「で、何で君がわからないのよ」
眼鏡の奥からじとっとした目を向けてだ。賈駆は丈にまた言った。
「こんな簡単な問題が」
「こんなの俺の世界じゃ東大に入られる問題だぞ」
丈はムキになって言い返す。
「こんな難しい問題見てたら蕁麻疹が起こるぜ」
「本当に出てるけれどね」
丈の全身に赤い斑点が出ていた。恐ろしい病に罹った様にすら見える。
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