家を継ぐ娘は

「茉奈かしら」
「そうなるかしらね」
　末っ子の嫁の理美も言う、黒髪をロングにしていて大きな穏やかな感じの目と口元で彼女も胸がある。
「ここは」
「いや、一番年上なのは霧子だろ」
　慶彦は末っ子夫婦の長女の名前を出した。
「そうだろ」
「だったら霧子ちゃんが家を継ぐのか？」
「あの娘が婿を迎えてな」
　慶彦は学に答えた。
「そうしてな」
「家を継いでもらうか」
「そうなるか」
「うちの霧子が？」
　誠也は妻にそっくりの上の娘の顔を思い出しつつ言った。
「家を継ぐのか」
「年齢を考えるとな」
　慶彦は末っ子の言葉に答えた。
「一番だろう、あの娘はしっかりしていて真面目だしな」
「丁度いいか」
「どうだ」
「そう言われるとそうだけれどうちは三男だからね」
「学に子供がいれば決まりだったけれど」
　澄佳は困った顔で話した。
「こうしたことは縁だし」
「それじゃあか」
「四人のうち誰かでね」
「それだとか」
「私も霧子が一番いいと思うわ」　
　澄佳は自分の考えも述べた。
「家を継ぐのか」
「そうか、じゃあな」
「霧子ちゃんに家を継いでもらうか」
「将来は」
　息子達も言った、そして会議の後で霧子に話したが。
　両親から言われてだ、霧子は言った。年齢は十六歳で県内の進学校に通っている。
「私が家継ぐの」
「ああ、そうなったが」
「嫌だったらいいわ」
「別にいいけどお婿さん迎えるの」　
　霧子が気にしているのはこのことだった。
「誰かしら」
「まあそれはこれからだ」
「お話が決まるのはね」
「お祖父ちゃんのお家広いしあそこに住めるならね」
「そうか、じゃあな」
「その時は宜しくね」
「うん、私は別にいいわ」
　特に反対することなくだ、霧子は頷いた。
　そうして大学を卒業すると家を継ぐ為に祖父母と長男夫婦が住んでいる家に入ったが。
　そこで結婚相手という長身で自分好みで市役所に働いている青年を紹介してもらって満面の笑みで言った。
「性格いいしよかったわ」
「何か色々話して心配することなかったな」
「そうね」
　慶彦と澄佳は家を継ぐことになったと言われた時も結婚相手を紹介してもらった時も何でもない霧子を見て話した、そして程なく彼女に学の後で家を継いでもらったのだった。


家を継ぐ娘は　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２２・８・２０