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おっちょこちょいのかよちゃん

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227 病殺の殺戮者、アンドリュー

 
前書き
《前回》
 かよ子の杖を奪ったヴラド3世を撃破した藤木救出班だったが、杖は既に赤軍の奥平が手にして持ち去っていた。組織「義元」の面々を始めとした者達が杖の奪還に協力してくれる中、藤木救出の目的を一時中断して杖の奪還の為にかよ子達は北西へと向かう。一方、異世界の剣を運送中の冬田、三河口、湘木の三人は無事本部に戻り、剣を届けた。彼らも次の目的として杖の奪還に動き出す!! 

 
 かよ子との通信を終えた長山にさりが問答する。
「長山君、かよちゃんの杖が取られたって!?」
「うん・・・」
(そんな、杯も杖も取られた・・・。つ、次は、私の番・・・!?)
 さりは四つの異世界の最上位の道具のうち、戦争主義の世界にある一つ・剣は取り返す事はできたものの、安藤りえが持つ杯が奪われその所有者も行方不明、そして実家の隣に住む山田かよ子の杖も奪われてしまったとなると残るは取り返したばかりの剣か自分の持つ護符。まず自身が集中的に狙われるのではないかと懸念していた。
「羽柴さり、もしかして次はお主の番と恐れを感じているのか?」
 同行している清正がさりの顔色を窺った。
「うん・・・」
「確かに気がかりでしょうね・・・。私も必死で援護致します!」
 テレーズは祖母から受け継いだ宝剣を見せながら言った。
「ありがとう」
「俺達も全力で守るたい!」
「私も!」
 尾藤も、もと子も、さき子も同調した。
「うん、ありがとう!」
 その時、皆の通信機が鳴る。
『こちらフローレンス。本部守備班の皆様、大変です!赤軍および敵の世界の人間が護符を狙いに本部へ侵攻しています!中央から東への経路を通っています。迎撃の準備をお願い致します!!』
 さりはその報告を受けて顔が青ざめた。
「りょ、了解!!長山君、眼鏡でその敵の場所を見れる?」
「は、はい、やってみるよ!」
 長山は遠くを索敵する。さきこのルビーも光る。敵はすぐに見つかった。
「いた!向こうの方にいるよ!それに向こうで守備している人達が襲われそうになっている!」
「ええ!?行きましょう!!」
 さりは護符の能力で飛行機を出し、皆を乗せて離陸した。
(私の護符まで取られてたまるかっての!!)
 さりは自ら援護に行くのは捨て身であると解っていたが、それでも自分の世界から来た人をこの地で見殺しにしたくないという気持ちもあって出向く事に戸惑いはなかった。

 平和主義の世界で東側よりも中央寄りの領土にて三人の男性がその区画の守護に当たっていた。一人はトランペットを持つ男、本山こういち。もう一人はギターを持つ長岡ゆきひろ、そして太鼓を持つ吹山たつお。まるで音楽バンドのような集団だった。彼らは以前、アンヌとか言う王妃と赤軍の丸岡修が異世界の最上位の道具である護符を奪おうとした時に援護に行った事があり、フローレンスからの連絡を受けてまた護符の所有者が襲撃される可能性がある事に懸念を示していた。
「おい、また護符が狙われるってよ!?」
「またあの人助けにいかないとヤバいんじゃね?」
 その時、上空から何かが飛んできた。
「何だあれ!?」
「飛行機だ!!」
 その時、飛行機から何かが噴射された。ミサイルだった。
「げ!俺達を殺す気かよ!?」
「返り討ちにするぞ!!」
 三人は迎撃態勢に入る。本山がトランペットを吹き鳴らす。ミサイルが無力化されてその場で空き缶のように爆発せずに落下した。そして吹山の太鼓の叩く音で敵の飛行機に強い振動を起こさせた。飛行機は不時着するように降りた。
「バカめ、さっさとやられればいい物を」
 二人の男が降りてきた。
「今はお前らの相手してる暇はねえんだ!消えろ!!」
「赤軍だな!?」
 長岡が問う。
「それがどうした!?」
「私は協力者だ。黄色いゴミムシども。天然痘にでも掛かって死にな!」
 男が毛布を何処からか出して三人に投げつける。
「あの毛布で俺達を苦しめる気か!」
 長岡はそう読んでギターを鳴らし、電撃を飛ばす。毛布は黒焦げになってその場に落ちた。
「それならこれは、どうだ!?」
 男は急に呪文のように唱え始める。
[我こそは開拓と発展に尽くす者。汚らわしき無知な人種は滅す]
「なんだこいつ、何を言ってんだ!?」
「のんびり聞いてる暇があるかな?」
 赤軍の男は銃撃する。だが、本山のトランペットで無力化した。しかし、赤軍もまた攻撃をやめない。途中、トランペットの能力が弱まった。
「な、効かなくなっている!?」
「我が呪文には貴様らの能力など無効化できるのだ!この汚らわしい原住民を始末したアンドリュー様の功績を知れ!」
「ちい!」
 アンドリューと名乗った男は毛布を三人にまた(くる)ませようとする。
「長岡、武装の能力(ちから)で守れるか!?」
「あ、ああ!」
 長岡は防御に特化した武装の能力(ちから)を所有していた。しかし、それでも毛布を弾き返す事はできなかった。
「くそ、逃げるしかねえ!」
 三人は走って毛布を回避しようとする。本山は連絡を試みる。
「こちら本部守備班、本山こういち!今敵と交戦中!道具の異能の能力(ちから)も無効化された!救援頼む!」
 直ぐに返信は来た。
『こちら羽柴さり!今そっちに向かうわ!』
「馬鹿が!」
 赤軍の男が発砲する。吹山の右肩に銃弾が当たった。吹山が倒れる。同時に毛布が彼の上に覆いかぶさった。
「ああ!!」
「吹山!!」
 本山と長岡が毛布を剥がす。だが吹山は天然痘に侵されてしまった。
「俺の事は、いい・・・。に、げ、ろ・・・!!」
「そんな事できるか!」
 だが二人もその毛布を触ってしまった為に天然痘に苦しみ始めた。
「う・・・」
「終わったな」
 アンドリューと同行する赤軍の男は始末が完了したと見て去ろうとする。その時、三人の元に別の飛行機が飛んで来た。その飛行機がアンドリューと赤軍の男に向けてミサイルを飛ばす。二人は何とか回避した。飛行機が着陸し、人が降りてきた。
「大丈夫!?」
 護符の所有者・羽柴さりが降りてきた。
「あ、いや、駄目だ・・・」
「天然痘に侵されています。今すぐ処置を!」
「う、うん!」
「護符の所有者とテレーズはそこで看病だ!こやつらは我々が片付ける!!」
「うん!」
 さりはテレーズと共に本山達の処置に当たる。長山、さきこにもと子、尾藤と清正がアンドリュー達と相対する。
「あの人は・・・!!」
 長山はその赤軍の人間を見て思い出した。近所に住む知り合いの高校生・北勢田竜汰の通う高校の文化祭を襲撃しに来た西川純だった。
「おめえの相手は俺達や!」
「ふ・・・纏めて死ね!」
 アンドリューが毛布を投げる。しかし、さきこの琥珀が光る。彼女の元に毛布が引き寄せられたが、その毛布が跳ね返される。アンドリューが毛布に覆いかぶさられる形になった。
「な、しまった!」
 アンドリュー自身が天然痘となる結果になってしまった。
「おい、アンドリュー!!」
「よくも!!」
 アンドリューは天然痘に苦しみながらも呪文を唱えようとする。
[我こそは開拓と発展に尽くす者。汚らわしき・・・]
 だが途中で尾藤のボールがアンドリューの顔面に直撃した。
「この野郎!」
 西川がまた発砲するも、もと子の玉で弾かれる。
「ちい、まだくたばらんかったか!」
 尾藤は戻ってきたボールをもう一度蹴飛ばす。尾藤のシュートがアンドリューをもう一度襲う。しかし、今度は避けられた。
「何がなんでも護符だけは貰ってやる・・・!」
 西川は飛行機に飛び乗り、低空飛行でミサイルを飛ばした。長山が念力で無効化させ、清正が槍で攻撃する。
「この飛行機はミサイル飛ばすだけじゃねえぞ!」
 西川が乗った飛行機の底面から円形の光が現れた。

 さりは天然痘に苦しむ吹山達をテレーズと共に治療に当たっていた。二人は医者ではないものの、護符や宝剣で治癒させる能力を駆使していた。さりは護符の能力(ちから)でワクチンのような物が入った瓶を出現させた。注射器状ではないためどう使えばいいか一瞬迷ったが、三人に兎に角その薬を塗る事で対処させた。痘痕がみるみる消えていった。
「ありがとう。だが、こいつが撃たれてもっと重症なんだ・・・」
「私が処置しましょう」
 テレーズは宝剣を吹山の近くの地面に突き刺す。
「ラファエルよ。どうかこの者の傷病を癒やしてください」
 剣が黄金色に光り、吹山の傷が治っていく。だが途中でその効果が中断された。
「え?」
 テレーズも訳が分からなかった。
「ははは!お前らの能力全てを封じた!もう何もできん!」
 西川が乗った飛行機から円形の光が現れた。その光の円の中では一切の能力の使用が封じられるものであった。
「な・・・!!」
 円の範囲が拡大していく。誰も何もできなくなった。
「さて、そろそろ護符とそのガキを貰う時だ!」
 長山は赤軍が自分も狙っている事に気づいた。このままでは何もかもが終わる。杯も杖も取られ、今度は護符が敵に渡る時かと長山は絶望した。
(終わりなのか・・・!?)
 だがその時、能力封じの光が消えた。
「え!?」
「そう簡単に護符を渡すかよ」
 護符の所有者の従弟に斧を持つ高校生、天然パーマの少女がその場にいた。 
 

 
後書き
次回は・・・
「棘付きの鎖鉄球」
 さり達の戦闘現場に三河口、冬田、湘木が到着する。彼らも加勢して西川とアンドリューを対峙しようとするが、彼らも追いつめられる。道具を持たない従弟の為にさりの護符が光り出し、三河口にある物が授けられる・・・!! 
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