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フェアリーテイルに最強のハンターがきたようです

作者:ブラバ
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第9章 解散編
  第40話 罰ゲーム

『ファースト・ディマイス・ウォー』から、1か月がたった後、マグノリアの街並みも、ギルドも完全に復興を遂げ、両者とも活気を取り戻していた。
故に、フェアリーテイルの酒場もいつものように騒がしいものとなっていた。そんな騒がしいギルドであったが、今は一つの話題で持ちきりだった。
「フェアリーテイル毎年恒例のトーナメント戦が中止とは…」
「くっそー!今からでもやろうぜ!」
グレイとナツが悔しそうに言葉を漏らす。
フェアリーテイルでは、マグノリアの街全体を巻き込んだ、毎年所属する魔導士全員強制参加の戦闘トーナメント戦が行われていた。強制参加ではあるが、もちろん、長いクエストに参加することの多いアレンやギルダーツ2人は参加したことがないが、それ以外のメンバーは毎年参加しているものであった。
トーナメント戦とのことで、優勝をすれば、実質的にフェアリーテイルでトップの魔導士(参加した中では)の名誉を得られることに加え、100万ジュエルという賞金が貰えるため皆やる気をもって参加していたのだ。
「まあ、あれだけの戦いがあったんだから、仕方ないんじゃない?」
「今年は諦めるしかないな…」
ウルティアとカグラが諦めたように言葉を漏らす。すると、アレンが興味を持ったように声を上げる。
「へえー…そんな面白そうなことやってたのか…」
アレンは長いことフェアリーテイルに帰ってきてなかったことから、そのようなイベントが催されていたことを知らず、感心したように口を開いた。
「まさか、アレン、参加するつもりだったの?」
「おいおい…あんたが参加したら、めちゃくちゃになるだろうが…」
そんなアレンの様子を見て、ミラとラクサスが引きつったような表情を見せる。
「いや、参加するつもりはねーけど、負けた奴への罰ゲームが面白そうだなと…」
「あー…負けた奴は勝ったやつのいうことを1日なんでも聞くってやつね…」
アレンの言葉に、ウルがため息をつくようにして言葉を漏らす。
「そうそう、なんかこう…そそられるよなー」
アレンは不敵な笑いを見せながらくくっと声を漏らす。そんなアレンの様子に、皆が思わず身を震わせる。
「あんた…たまにガチでドS感満載なときあるよな…」
ラクサスはアレンのそんな様子に引きつりながら口を開くが、女性陣は別の意味で身を震わせていた。
「ア…アレンに…一日…」
「こき使われる…」
「わ、悪くないわね…」
「あ、あんなことやこんなことを…」
「命令されたりして…」
エルザ、ミラ、ウルティア、カグラ、カナがむむっと何やら邪なことを想像しながら思考を巡らせる。そんな女性陣に気付いたラクサスは、嫌な汗を流しながら、ゴミを見るような目で見つめる。そんな風にしていると、マカロフがごほんっと咳払いをする。
「あー、そのトーナメント戦なんじゃがな…形を変えて実施することにした」
マカロフの言葉に、酒場の皆が「えぇー!!」と声を張り上げる。どうやら、いつもの戦闘スタイルではなく、魔法なしのじゃんけんで行うとのことだった。
「いいじゃねえか!分かりやすくて!!」
「じゃんけんに負けたら一日言うこと聞くって…代償がデカすぎない?」
「でも勝ち進めば賞金100万ジュエルか…」
「弱い俺達でも可能性あるぞ、こりゃ!」
ナツ、ルーシィ、グレイ、ジェットが口々に言葉を漏らす。
「おお、こりゃ面白いことになってきたな…そんじゃあ、高見の見物と行こうか…」
アレンはそんな様子のフェアリーテイルのメンバーを見つめ、嬉しそうに言葉を呟いた。

急遽形を変えて行われることとなった毎年恒例フェアリーテイル激烈トーナメント戦は、一回勝負のじゃんけんとして開幕することになる。
参加者は約50名で、1回戦勝ち抜きが25人、2回戦勝ち抜きが13人、3回戦勝ち抜きが7人、4回戦勝ち抜きが4人、5回戦勝ち抜きが2人とし、決勝まで駒を進めたのは、エルザとミラであった。エルザとミラによる決勝戦は、ミラの一発勝ちとなり、エルザはあと一歩のところで優勝を逃し、出したチョキをしまうことなく、プルプルと震えながら敗北を喫する。
負けたことで一日なんでもいうことを聞かなくてはならないものは数多くいたが、ここでは、ルーシィとレヴィがガジルの、グレイとリオンがジュビアの、ナツとエルフマンがラクサスの、ウェンディとユキノがカナの、エルザとカグラがミラの言うことを聞かなくてはならないという5つの組み合わせを紹介していきたい。
まず、エルザとカグラがミラの言うことを聞くという内容から紹介していく。
ミラは2に対して、とある服を差し出す。
「とりあえず、これを着てもらおうかしら♪」
ミラが差し出したのは、メイドの服であった。エルザとカグラは渋々と言った様子でその服を纏ったが、意外にもその可愛らしい服に思わず楽しくなってしまう。周りのギルド男性陣も眼福と言った様子で見つめている。
「なんだ、こんな格好をするだけでいいのか?」
「これならどうということはないわね」
エルザとカグラは、豊かに実った胸を見せびらかすようにして強調して見せる。そして、2人は辺りを見回しながらある人物を探す。この姿を見て欲しかったのだが、その人物を視界に捉えることはできなかった。
「ふふっ!とっても似合ってるわよ!エルザ、カグラ…でも、言葉遣いがなってないわね…。それに、もう少し恥じらってもらわないと面白くないわ…」
ミラはどこかつまらないと言った様子で言葉を漏らした。
「それは無理だな」
「残念だったわね」
エルザとカグラは誇らしげに口を開く。すると、ミラが思いついたように笑顔を見せる。
「じゃあ、こうしましょう!」
ミラがそう言うと、エルザとカグラを連れてギルド前へと移動する。そして、エルザとミラを地に伏させ、お尻を上げるような恰好を取らせる。
「…なぜ、通りの真ん中で…」
「こ、これはさすがに…」
ギルド内ではなく、戸外の、多くの者の目につく場所で恥ずかしい格好と姿勢を取らされている状況に、2人は顔を赤らめてプルプルと震える。
「ご主人様にお仕置きされるメイドさんってシチュエーション♪」
ミラはとても嬉しそうに言葉を発する。
「だ、だから、なんで通りの真ん中なのだ…」
「ギ、ギルドの中でいいじゃない…」
エルザとカグラは、マグノリアの住民を含めた周りの男性陣の邪な視線を受けながら、小さく呟く。
「うほー!これはいい!!」
「最高じゃねえか!!」
2人を囲むようにしてできた男性の集団の中から、野太い歓声が上がる。
「こ、これはなんとも…」
「屈辱的ね…」
エルザとカグラは、目線を落とし、今自分たちが置かれている状況に恥ずかしさを覚える。
「さあ、言って頂戴…許してくださいご主人様…と」
そのミラの言葉に、エルザとカグラは目を大きく見開き赤面する。
「こ、断る!」
「そんなの言えない!」
エルザとカグラは、強く否定する。その言葉にミラはゆっくりと目を細め、エルザとカグラの大きなお尻を思いっきり叩く。
「言わないか!このはしたないメイドめ!!」
バチンッ!バチンッ!とミラの手が2人のお尻を何度も打ち付ける。そのたびに、パンッ!パンッと短く高い衝撃音があたりに響く。ミラの姿は、接収によって悪魔の姿となり、まるでかつてのわがままツンツンミラへと逆戻りしている様子であった。
「これが好きか!もっと叱ってくださいと言いな!」
「「あっ!うっ!はぁっ!!」」
何度も何度もお尻を叩かれる2人は、その都度短い悲鳴を漏らす。叩かれる音と2人短い悲鳴の度に、周りの男どもは「おぉー…」と感嘆の声を漏らす。
その声聞き、2人は更に恥ずかしさを覚え、屈辱が心を支配する。
「私はこんなに恥ずかしいメスですっていいな!嬉しいか!気持ちいか!やめないでくださいか!」
完全にスイッチの入ったミラは、エルザとカグラの尻をしばき倒す。そんな様子を見ていたマカオ、ワカバ、リサーナが呆れた様子を見せる。
「…完全に昔のミラ姉に戻ってる…」
「エルザとカグラもよく我慢してる…」
「後が怖えから見なかったことにしよ…」
3人はそう言葉を漏らして身体を後ろへと向ける。そして、目を見開く。そこには、真っ白なスーツに身を包んだガジルが、ギターを片手に何やら演奏を始めていたからである。
ガジルは、今ではもうフェアリーテイルに広く浸透しているが、ギターをこよなく愛する男である。だが、そのギターの腕前は微妙であり、奏でる曲もこれまた微妙な自作の曲であり、皆が呆れた様子で見守ってきたのは言うまでもない。
だが、ガジルの後ろのカーテンが開き、とある2人が出てきたことで、その呆れは称賛へと変わる。
ガジルがルーシィとレヴィに命じたのは、自身のライブの踊り子として出演しろというものであった。
ルーシィとレヴィは、その身を赤いバニーガールへと包み、ガジルの演奏のもと、ピョンピョンとまるでウサギのように飛び跳ねる踊りを見せる。
その様相はとても可愛らしく、美しいものであり、これまた周りの男性陣の視線を奪う者となった。先ほどまでミラの痛烈なお仕置きの様子を呆れてみていたマカオとワカバも、目をハートにしてその2人を見つめる。
「ううっ…普通に恥ずかしい…」
「はあ…じゃんけんで負けただけなのに…っ!」
ルーシィとレビィが恥ずかしい格好でガジルの奏でるギターに乗せてダンスを踊りながらその心情を露にする。
「ルーシィとレヴィもかなり悲惨ね…」
そんな心情を察してか知らずか、観客側で見ていたリサーナが思わず引きつりながら言葉を漏らす。そんな中、レヴィの視線がルーシィの胸へと移る。そして思わず目を見開いてしまう。
ルーシィの胸がうさぎのようにジャンプをするたびに激しく上下へ揺れる。その様子を見て、周りに集まる男たちの視線が釘付けになる。そして、自身の胸を見る。
「こ、こんなの…私だけ更に罰ゲームじゃない…」
レヴィはそう呟き、歯をギッと食いしばる。そして…
「こんなのあんまりよー!!」
「あ、おい!まだライブの途中だぞ!!」
レビィはそんな風に涙を流してその場を離れる。それを見たガジルが怒号を浴びせるようにして文句を垂れていた。
ライブは一時中断となり、ガジルはレビィの後を追うようにしてその場を離れる。そんな様子を見ていたルーシィが呆気にとられた様子を見せていたが、この屈辱的な罰ゲームが終わることに感づき、そっと胸を撫でおろす。
「はあ、これで解放されたのね…」
だが、そんな雰囲気を読み取ったかのように、ガジルは振り返り、ルーシィへと視線を移したのち、ゆっくりとその視線を横へとずらす。
「こいつはお前にやる…」
ガジルはそう言って、再びレヴィを追うようにして駆け出して行った。
「え?…」
ルーシィはガジルが視線を移した方へと顔を向ける。
そこには、ミラの前でメイドの格好をしながらお尻をミラへと向けているエルザとカグラの姿があった。その様子は、まるでお仕置きを去れている様相であり、ミラの手には鞭のようなものが携わっていた。
「あら、ルーシィも追加ね…♪」
ミラの表情は何かを楽しむような、それでいて不吉な笑みが見られた。地に伏し、屈辱的かつ劣情をそそる様な格好をしているエルザとカグラは顔を真っ赤にして怪訝な表情を浮かべていた。加えて、その2人の姿を見るマグノリアやフェアリーテイルの男連中は嬉しそうに眺めていた。
「い、いやーーーー!!!!!!」
そんな状況に、ルーシィは大声で悲鳴をあげた。

さて、そんな様子でフェアリーテイルのギルド前では衝撃的な展開が繰り広げられている中、ウェンディとユキノがカナに連れられて教会で暮らす寄りのない子どもと交流を深めたり、ナツとエルフマンがラクサスにパンと牛乳を買わされに行ったり、していた。
それと時を同じしてジュビアに連れられたグレイは、前を歩くジュビアが人気のない場所で歩みを止めたことで、同じく歩みを止める。一日なんでもお願いを聞くというその内容を聞かされていないグレイは、怪訝な様子でジュビアについていたが、止まったまま動かない様相に思わず口を開く。
「どうした?急に止まって…」
ジュビアはグレイに言葉を掛けられ、ゆっくりと振り向き、グレイの右腕に視線を移す。そこには、アレンが冥府の門へと誘拐される直後に、購入した氷を象ったブレスレッドが見て取れた。
「その、グレイ様…それ…」
グレイは、ジュビアが何を言わんとしているのかい気付き、気恥ずかしそうにブレスレッドがはめられた右腕を少し上げ、それに視線を移す。
「ああ、これか?…俺のために買ってくれたんだろ?」
グレイは、戦いが終わり、落ち着きを取り戻した頃、エルザからこのブレスレッドが入った小包を受け取り、シャルルから簡単な説明を受けていたのだ。故に、このブレスレッドが、ジュビアからグレイへとプレゼントだということを知っていた。
「その、ありがとな…ジュビア」
「ジュビーーンッ!!」
グレイの照れくさそうなお礼に、ジュビアは顔を真っ赤にして歓喜の声を上げる。グレイはそんなジュビアの様子に呆れながらも、思い出したように言葉を発する。
「てか、そんなことより…俺への罰は一体何だよ…」
グレイは一つため息をつきながら、頭をかく。
「それなんですが…その…私はグレイ様を1日どうにかしたいとは思っておりません…」
「ああ?どういうことだよ?」
グレイはてっきり、1日ジュビアの好きにされてしまうと思っていたため、呆気に取られてしまう。だがこの直後、その呆気は驚きに変わることになる。
「わ、私は…ジュビアはグレイ様が大好きです…」
「な、なんだよ…改まって…そんなこと、知ってるよ」
グレイは、真剣な様子で告白をするジュビアを見て、驚いた様子で顔を赤らめる。
「で、ですから…私と結婚を前提に付き合ってくれませんか?」
ジュビアは今までにない様相で、顔を真っ赤にして言葉を放つ。グレイは、その言葉に大きく目を見開いて動揺する。今までも、告白まがいの言葉をジュビアにかけられてことはあった。それに、襲われるような行為も幾度となくされてきたが、こんな真剣な様相で言い詰められたことはなかったためである。
「はぁ…つまり、1日じゃなくて、一生ってことか?」
「う…そ、そういうことに…なります…」
グレイの言葉に、ジュビアはもじもじして答える。グレイはため息をつくと、意を決したように口を開いた。
「その…なんていうか…俺なんかでいいのか?」
その言葉に、ジュビアは目を大きく見開く。
「グ、グレイ様がいいんです!!他の誰でもなく!!!」
ジュビアの言葉を聞き、グレイはふっと笑いを漏らす。
「俺も…俺もその…ジュビアのことは気になってる…」
「ジュ…ジュビーーーンッ!!ほ、本当ですか!!グレイ様!!!でしたら!!」
ジュビアは動揺しまくりな様子で口を開いた。そんな動揺を鎮めるかのように、グレイは少し声を張り上げる。
「だが…!結婚に関しては…まだ考えられねえ…」
「そ、そうですか…。え?…結婚に関しては?」
ジュビアは、含みのあるグレイの言葉に首を傾げる。
「つ、付き合うのは…いいぜ…。だけど、結婚はアレンの…ッ!」
「うぅ…嬉しいですー!!!!グレイ様―――――!」
グレイの言葉を聞き終える前に、ジュビアは嬉しさで思いっきりグレイの胸元へ飛び込んでいく。そんなジュビアの攻撃に、グレイは苦悶の表情を浮かべながら狼狽する。
「だー!!最後まで話を聞けっての!!」
「あうっ!」
そんなジュビアを引きはがしながら、グレイが怒号を上げる。
「はぁ…はぁ…、け、結婚とかそういうのは…アレンの敵を…三天黒龍とかを倒しきった後だ…」
その言葉に、ジュビアは一瞬で冷静さを取り戻し、グレイの身体から自身の身を剥がす。
「…お前も知ってんだろ?俺がアレンにどれだけの恩があるのかを…」
「…はい…」
その言葉に、ジュビアは真剣な面持ちで答える。
「俺は…10年前、アレンと出会ってなければ…ウルとリオン共々とっくに死んでた…。それに、天狼島のときも含め、俺は何度もアレンに命を救われてる…」
「天狼島の件は…私も、他の皆も同様ですわ…」
グレイは過去の記憶を探るようにして言葉を漏らした。そんな様子のグレイに、ジュビアも肯定するように口を開く。
「だから、今度は…俺がアレンの力になってやりたいだ。アレンの中の闇を…絶望を打ち払う手伝いをしてやりてえ…。例え微力だとしても…俺の持ちうる力の全てを…」
グレイはぐっと両の手を強く握りしめる。そんなグレイの決意に、ジュビアは生半可な言葉を掛けられないと、目を細めている。
「だから、その…結婚に関しては、今は考えられない…。でも、お前が俺をどれだけ思ってくれてるのかはわかってる。…親父の件でお前に苦しい思いもさせたし…。…今は、付き合うってことで勘弁してくれ…」
グレイは小さく笑って見せた。
「そ、そんなのもちろんですわ!!それに、付き合ってくれるだけでもジュビアは満足です!!!!」
ジュビアはボロボロと涙を零しながらグレイへと詰め寄る。そんなジュビアの頭を軽く撫でると、グレイは小さく呟いた。
「これで、俺たちも今日からカップルってことだな…」
「ッ!はい!!よろしくお願いします!」
グレイとジュビアはそれから何度か幸せそうな笑みを浮かべて語り合っていた。

グレイとジュビアが真剣な話をしているすぐ傍の曲がり角。その壁に背を預けて、その動向を見守っている者がいた。
その人物は、グレイとジュビアが楽しそうに語り合っているのをみて、ふっと笑いを漏らす。
「…思った通り、やっぱりうまくいったな…」
それはアレンであり、2人が正式に付き合うということが分かったため、その嬉しさを表情に漏らす。だが、直後、アレンは表情を平常へと戻すことになる。
「…助けられたとか…そんなこと気にしなくてもいいのにな…」
アレンは誰にも聞こえないような声量で口を開いた。
「このままだと…皆を更なる戦いと苦しみに巻き込んじまう…か…」
アレンは苦しそうにそう呟くと、グレイとジュビアから遠ざかるようにしてその場を後にした。
先ほどのグレイの言葉も含め、アレンは考え込むようにしてマグノリアの街のとある路地から大通りへと戻ろうとしていた。
そんな折、川が流れている石の階段下で、大きく息を荒げている少女を見つける。見覚えのある少女であった。
「…どうしたんだ?レヴィ…そんな恰好で…」
「ッ!!ア、アレン!!…こ、これはその…」
突然声を掛けられたレヴィはビクッと身体を震わせる。そして、自身の格好を思い出し、それを隠すようにしてうずくまる。そんな風にしていると、真っ白な衣装に身を包んだ一人の男が2人へと近づいてくる。
「こんなところに居やがったか…てか、なんでアレンが…」
「ああ、偶々通りかかっただけだ…。だが…なるほど、そういうことか…」
ガジルが漏らした言葉に、アレンはどこか納得した様子を見せる。2人恰好からして、恐らく罰ゲームとしてガジルの演奏に合わせてレヴィが踊らされていたことを予測したアレンはゆっくりとガジルの肩に手を添える。
「まあ、レヴィの奴をあんまりいじめてやるな…ガジル。嫌われちまうぞ?」
「ぐっ…」
アレンの言葉に、ガジルは息を詰まらせる。そんな様子をガジルを特に気にも留めず、アレンは歩みを進めた。
「じゃあな…あ、それと…」
アレンは思い出したように2人へと向き直る。そして、ガジルとアレンを交互に見つめる。アレンと目があったガジルとレヴィはきょとんとした表情を浮かべている。
「レヴィ…そのバニーガール、とっても似合ってるぞ。それに、ガジルの白スーツも中々にすばらしいな!」
アレンからお褒めの言葉を預かった2人は顔を少し赤らめて恥ずかしそうにしている。
「う、うるせー」「あ、ありがと…///」
2人の反応は真逆であったが、それぞれどこか嬉しそうにしている様子だった。それを見たアレンはふっと笑いを漏らし、歩みを再開させた。

ガジルとレヴィの元から去ったアレンは、フェアリーテイルのギルドを目指して歩みを進める。ギルドの目の前までやってくると、多くの人たちがワイワイと集まっている様子が見て取れた。そんな様子にアレンは疑問を持ちながら集団の中に入っていくが、ある衝撃的なものを目撃してしまう。
「さあ、こんなに恥ずかしい巨乳でごめんなさいと言いな!!」
「「「こ、こんなに恥ずかしい巨乳でごめんなさい…」」」
なんと、あのミラが昔のような性格に戻り、エルザとカグラ、ルーシィに鞭を振りかざしていたのだ。エルザ達3人は手を縄で縛られ、地面に両膝を着いて小さく言葉を漏らしていた。最初こそ抵抗を見せていたエルザとカグラであったが、長すぎる辱めに、少しずつミラの言うことを聞き始めていたのだ。
「声が小せえぞっ!!」
「「「ッ!こんなに恥ずかしい巨乳でごめんなさい!!」」」
エルザとカグラ、ルーシィは顔を真っ赤にしながら声を張り上げる。
「いいじゃない…。次は、『もっと、叩いてください、ミラ様!』だ!!」
「「「も、もっと叩いてください…ミラ様…」」」
ミラはゾクゾクと身体を震わせながら3人に再度支持を出す。そんなミラの言葉に従うようにして、3人は呟くようにして口を開く。
「だ、か、ら!!声が小さいって…ッ!!」
先ほど言ったにもかかわらず、小さい声で言葉を発する3人に激を飛ばそうとしたミラであったが、とある人物が視界に入り、その言葉を止める。ミラが暫く固まっていたために、急に鞭が飛んでこないことを怪訝に思った3人が顔を上げ、ミラを見つめる。そして、ミラがある一点を見つめて顔を引きつらせている様子をみて、ミラが向けている方へと視線を移す。理解する。なぜミラが身を固めて表情を引きつらせているのか。
「な、なにやってんだ…お前ら…」
アレンは、小さく失望したような声を漏らす。その声を皮切りに、ミラはすぐさま接収を解いていつものウェイターの姿に戻り、鞭を投げ捨てる。そして、エルザ達3人もガバッと起き上がり、言い訳をしようと身を乗り出す。だが、それよりもアレンが口を開く方が早かった。
「ああ、そういうことか…だからお前ら…いつまでたっても彼氏を作らなかったのか…」
「「「「ち、違う!違うんだアレン!!」」」」
何やらとんでもない誤解をアレンの中に根付かせてしまったことに気付いた4人は、声を張り上げ、震えながら反論する。
「い、いや…いいんだ。人の趣味趣向ってのは…色々あるからな…。でもよ、その、そういうのは…人目につかない場所でやった方がいいと思うぞ…。まあ、とにかく…お、俺は特に気にしてないからさ…。だ、大丈夫だぞ…」
アレンはははっと短く引きつった笑みを漏らした後、ゆっくりと集団の中に紛れ込むようにしてエルザ達の元から去っていった。
「「「「まって、アレン!!誤解よーー!!!!」」」」
ミラ、エルザ、カグラ、ルーシィの4人は、愛する者や気になる人にただならぬ誤解をされてしまったことで、目に涙を浮かべながら声を張り上げる。だが、その声にアレンは足を止めることなく、ゆっくりと遠ざかっていき、姿を消した。
4人は暫く泣きべそをかきながらプルプルとしていたが、エルザとカグラが手を縛られた縄をパワーでブチ解き、ミラの胸倉をつかむ。
「おい!ミラ!!どうしてくれるんだ!!!」
「アレンにとんでもない誤解をされてしまったじゃないか!!」
「ご、ごべんなさーい…」
エルザとカグラに詰め寄られたミラは、うぅ…と涙を流して力なくしていた。そんな3人の様子を見ていたルーシィも、涙を流し、その顔を天へと向ける。
「こんなのあんまりよーー!!!!」
澄み渡ったマグノリアの空に、高く悲しき悲鳴が響き渡った。
 
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