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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百二十三話 黄蓋、策を見破るのことその一

                             第百二十三話  黄蓋、策を見破るのこと
 いよいよだった。真夜中になっていた。
 その夜の闇の中でだ。程昱が仲間達に話していた。
「間も無くですね」
「ああ、今頃奴等はね」
「我々のすぐ傍まで来ている」
「間違いなくな」
 ジョーカーのゴズウ、メズウが応える。
 彼等も闇の中を見ている。そうして程昱に応えるのである。
「この長江からね」
「来る」
「何をするかはわからないが」
「そうです。それでなのですが」
 ここでだ。程昱は眉を顰めさせた。そうしてだ。
 そのいささか不機嫌そうな顔でだ。こう言ったのである。
「風が出てきましたね」
「んっ、そういえば」
 カズウもここで気付いた。その風にだ。
 それでだ。カズウはこう程昱に対して尋ねた。
「この場所、赤壁では風はこう吹くのか」
「南東から北西にですね」
「敵陣からこっち側に?」
 ジョーカーはこう言った。
「そう吹くものなの?」
「いえ、これまでは逆の方向でしたね」
 程昱もそのことはわかっていた。伊達に軍師を務めているわけではない。
 それでだ。こう言うのだった。
「こんなに急に風が変わることは」
「ええと。ここは揚州だけれど」
 ここからだ。ジョーカーは考える顔、メイクの下でそうなりながら言った。
「だから詳しい人は」
「はい、私達ですか?」
「我々に何か」
 諸葛勤と揚奉がここで彼等のところに出て来た。
「この風のことですよね」
「急に風向きが変わって」
「そうだ。この風はこの場所ではこうなのか」
「赤壁では」
「いえ、私もこの州に長い間いましたが」
「私もこの辺りにはよく来ていましたが」
 諸葛勤と揚奉は怪訝な顔になってゴズウとメズウに答えた。
「それでもこの風は」
「ありませんでした」
「ではこの風は」
 カズウは彼の仮面の下から警戒する声を出した。そしてだ。
 怪訝な調子で周囲を見回しだ。言ったのである。
「敵か」
「ですね」
 程昱の眉が顰められる。またしても。
「間違いなく」
「御主等そこにおったのか」
 彼等のところにだ。黄蓋が来た。そのうえで言ってきたのである。
「この風はまさかと思うが」
「はい、おそらくですが」
 程昱はその顰められた眉のまま黄蓋に述べる。
「敵の策です」
「風。敵陣からこちら側に吹いておる」
 そこからだった。黄蓋も考えだ。そうしてだった。
 急にその顔を険しくさせた。まるで豹の様になった。
 その豹の顔をあげてだ。彼女は叫んだ。
「皆の者、すぐに水を用意せよ!」
「水!?」
「水をですか」
「そうじゃ、急げ!」
 こうだ。諸葛勤と揚奉にも告げた。
「さもなければ間に合わぬぞ!」
「水、火ですか」
 程昱はすぐに察して言った。
「それが来ますか」
「ここで火計を仕掛けられればどうなる」
 黄蓋のその束ねられた白髪もだ。今は風で大きくなびいていた。
 それは闇夜の中でも白く映える。艶のあるその髪を揺れ動かしてだ。
 彼女はだ。再び言うのだった。
「我等は焼き尽くされるぞ。急げ!」
「わかりました。それではです」
 程昱も言う。
「すぐに今から」
「とにかく急ぐのじゃ、それにじゃ!」
 黄蓋の言葉は続く。
 
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