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フェアリーテイルに最強のハンターがきたようです

作者:ブラバ
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第8章 冥府の門編
  第34話 vs九鬼門

アレンは、失われていた意識を取り戻すように目をゆっくりと開いた。いつもよりも視界が狭い。右側の視界がやけに暗いことに気付くのと同時に、あることを思い出した。
「ああ、そうか…右目は…抉られたんだったな…」
小さく呟きながら、右目のあった場所に痛みを感じる。それを感じ取ると、身体全体に鈍痛のような痛みが響く。
「どうやら、感覚強化は解除されたのか…あれを味わうと、通常の痛みがやけに優しく感じるな…」
そんな風に自身の感覚を嘲笑していると、目の前の鉄の扉が開かれる。キョウカが来たかと思ったが、アレンの予想とは違い、真っ白な姿をした一人の男が入ってきた。
「お前がアレン・イーグルか…なるほど、あの女が言うだけのことはあるな…」
そう呟いた男を視界に捉えたアレンは、残った左目を大きく見開く。
「ッ!この魔力…得も言われぬ力…お前、何者だ…」
この感覚は、アクノロギアの時に感じたものと似ていた。自分と同等…いや、それ以上の力を持つであろう存在との遭遇。その時に感じるプレッシャーのようなものであった。
「そうだな…貴様と同じ、異界のものとでも言っておこうか」
男の言葉に、アレンは更なる衝撃を受ける。
「異界…お前も別の世界から来たというのか…」
「ああ、そうだ。俺はウルキオラ。ウルキオラ・シファーだ」
アレンの言葉に、淡々と自己紹介を済ませたウルキオラは、拘束されているアレンの元へと歩み寄る。
「今から貴様に、俺の力を分けてやる」
「ッ!何のつもりだ…」
ウルキオラの発言に、アレンは驚きを隠しきれない様子で答えた。
「そうだな…口で説明するよりもこっちの方が早いな…」
ウルキオラはそう言って、自身の目を抉って見せる。
「な、なにをしているんだ…」
「黙ってみていろ…共開眼」
ウルキオラはそう言い終えると、抉り取った自身の目を握りつぶす。血がしたたり落ちると思われた目玉は、光の粒となって空中を四散する。それと同時に、アレンの脳内にあらゆる映像と情報が走馬灯のように流れ込む。
ウルキオラのいた世界について、ウルキオラの種族について、この世界に来た経緯…それらを飲み込んだアレンは、ゆっくりと口を開く。
「なるほど…お前もあの女神に呼ばれてこの世界に来たというわけか…」
「ああ、だが、お前と違い、俺は一度死んだ上でこの世界に来たがな…」
「…それで、俺にその虚とかいう力を与えて、一体どうしようってんだ?」
アレンは、疲弊した身体ではあったが、それでも畏怖を込めた言葉でウルキオラに言い放つ。
「別に意味はない。しいて言えば、俺の興味本意だ…。本来なら虚に対して耐性のない人間でも、俺と同等の強者であればどのような結果になるのか…とな」
ウルキオラはそう言って、腰に刺した刀を取り出す。
「これは斬魄刀と言ってな…。俺の力の核を刀の形に封じ込めたものだ。これを貴様の胸に突き刺し、虚の力を流し込む」
「なんだと…ガッ!!」
ウルキオラは言い終えると、アレンの返答を待たずに刀を突き刺す。
「精々飲み込まれないようにあがけ…もし生き残れたら…いや、なんでもない」
「ガアアアアアアアアアアッッ!!!!!!!」
ウルキオラの言葉を遮るように、アレンの叫び声が響き渡る。ウルキオラが突き刺した部分から、真っ白な帯状のモノが発言し、アレンの身体を包み込む。加えて、同じようにアレンの目から、口から、少しずつ顔に白い仮面のようなものが形成される。
アレンは痛みとも苦しみともとれぬ謎の不快感と恐怖感に支配され、意識を手放しそうになる。何とかそれを抑え込み、立ち去ろうとするウルキオラの背中を見つめる。
「ま、まて…お前は…一体…」
「ほう?まだ意識があったのか…。これは、期待してもよさそうだな」
「俺の…質問に…ッ!グアアアアアアアアアッッ!!!!!」
ウルキオラは再度雄たけびを上げるアレンに対し、一瞥したのちに視線をずらし、アレンの前から姿を消した。

ミラたちは、キョウカから聞かされたウルキオラという存在と、虚について、そしてアレンに施す虚化の正体。さらには冥府の門の計画について聞かされた。説明の途中で九鬼門が一人、セイラという女が登場し、同じようにキョウカの話を横で聞き始める。
これ以上にない怒りを滲ませるミラたちであったが、それ以上に何かを信じるような目つきでキョウカを睨みつける。
「アレンは…あんたらなんかに支配されたりしないわ!」
「絶対に虚なんかに負けたりしません!」
ミラとジュビアは、意志を秘めた目でそう言い放つ。
「まあ、うぬらがそう思うのも無理はない…。だが、奴にも呪法が聞くことは証明済みだ…。我が感覚強化の呪法がな…。であれば、セイラの命令呪法でアレンを支配することも可能だ」
「そんな女に、アレンさんが支配されるわけない!」
ルーシィがそう呟くと、セイラはふふっと小さく笑いかける。
「そうだといいですわね…まあ、結果は自ずとわかりますわ…。それよりキョウカ様…そろそろ作戦のお時間です」
セイラの言葉に、キョウカは気付いたように目を見開く。
「おっと、もうそんな時間か…。アレンを痛めつけるのが楽しくて、すっかり時間を忘れておったわ…。もう二度と会うこともないか…人間共…ふふっ…」
「まちなさいっ!今すぐにアレンを…ッ!」「グアアアアアアアアアッッ!!!!!」
ミラはキョウカ達にアレンの解放を求めるが、それはアレンのこれまでにない叫び声により、紡ぐことはなかった。
「ひっ…」
「ア…アレンさん…」
ウェンディとジュビアが、聞いたこともない悲鳴に、嗚咽のような声を漏らす。反面、キョウカとセイラは不敵な笑みを浮かべて口を開く。
「ほう?虚への改造が始まったか…」
「そのようですね…」
2人の言葉に、ミラは唇を嚙みしめながら悔しそうに言い放つ。
「今すぐ…アレンを…解放…しなさい…!」
ミラの言葉に、キョウカとセイラが答えようとするが、それよりも早く口を開くものがいた。
「もう遅い…すべて終わった」
その声の主は、ウルキオラであった。
「ウルキオラ様…では、やはり…」
セイラが歓喜を漏らすような声で言った。
「…奴の虚化の進行を見届けた後、貴様ら冥府の門との関係も終わりだ…」
「ええ、存じておりますわ。心配しなくとも、我らからあなた様に干渉することはありませんので…」
ウルキオラの言葉に、キョウカは含むような言い方で答える。
「…癇に障る女だ…。それで、もうこのゴミ共の存在理由はなくなったわけだ…。俺の好きにさせてもらうぞ」
ウルキオラはミラたちに視線を向け、言い放つ。ウルキオラの底知れぬ魔力と、何を考えているのかわからない表情に、4人は畏怖を覚える。
「ええ、あなた様のお好きになさって構いませんわ。では、私達はこれで…」
ウルキオラの要望を受け入れると、キョウカとセイラはその場を後にする。そんな2人の動向に振り返ることなく、アレンは4人の元へと歩みを進める。
「アレンに何をしたの!!」
「無意味な質問だな。おの女共から聞いているのだろう?」
ミラはウルキオラを睨みつけながら言葉を発した。そして、ウルキオラは4人の前に立つと、それぞれを眺めながら、ため息をつき言葉を発した。
「なぜアレンがこんなゴミ共を仲間と呼ぶのか…理解できんな…」
ゴミ呼ばわりされた4人は、悔しそうにウルキオラを睨みつける。
「本来なら殺すべきなんだろうが…面倒だな…」
ウルキオラはそう言って、4人の後ろに転移空間を作り出す。空間の裂け目とも呼ぶべきその様相に、4人は驚きの表情を浮かべる。
「…アレンに意識が戻ったら、伝えておいてやる。お前が仲間と呼ぶ連中は、殺すに足りぬ、ゴミだった…とな」
4人は、ウルキオラの言葉に、目に涙を浮かばせながら睨みつける。
「「「「ガッ!」」」」
ウルキオラはそんな4人を、表情を変えることなく蹴り飛ばし、転移空間へと放り込んだ。

アレン達の誘拐と、魔障粒子ラクリマの存在を伝えられたフェアリーテイルは、それぞれに行動を続行していた。
エルザとカグラ、ナツにグレイは、アレン達が姿を消した場所を隈なく捜索したが、見つかったのは綺麗な小包に入ったブレスレットだけで、特に有益な情報を得ることができなかった。
また、マカロフとレヴィ、カナは、冥府の門の本部の場所を捜索していた。評議院や王国など、数多の関係各所へ連絡をしたが、一切の手掛かりを掴めなかったことから、自身たちで一から捜索せざる終えない状況となった。一つの手段として、アレン達の魔力を感知するという手段を用いた。難航を極めた捜索であったが、アレンの高ぶる魔力を何とか感知し、本部が移動していることを突き止める。そして、その本部は何とこともあろうにこのフェアリーテイル、マグノリアへと近づいていることが分かった。
更に、魔障粒子ラクリマの捜索に当たっていた他のメンバーは、マグノリアの住民に事情を説明し、他の街や村に避難を呼びかけながら、ラクリマの全ての回収に成功する。
回収したラクリマは、フェアリーテイルに運び込まれると、フリードの術式によって隔離することに成功する。
魔障粒子の散乱を防ぎ、冥府の門の本部と思しきアレン達が捕らえられている場所を察知したフェアリーテイルのメンバーは、冥府の門本部がマグノリアへと襲来する時を狙って、迎え撃つかたちで準備をしていた。
そんな折、フェアリーテイルの酒場に謎の異空間らしき扉が出現する。その様相に、皆が驚きの表情を浮かべる。
「な、なんだ!」
「冥府の攻撃か!」
ジェラールとリオンが警戒しながら口を開くと、その謎の空間から4人の見知った女性たちが現れる。
ミラたちは、フェアリーテイルの床に滑り込むようにして姿を現した。
「「「「ゴホッゴホッ!!」」」」
ミラたちは、先ほど受けたウルキオラの蹴りの衝撃に、苦悶の表情を浮かべていた。謎の扉のようなものは、一瞬にして姿をかき消す。
「姉ちゃん!」
「ジュビア!!」
「ウェンディ!」
「ルーシィ!」
「無事か!!」
エルフマン、グレイ、シャルル、ナツ、エルザが口々に言葉を発しながら、4人の元へと駆け寄る。
「み、みんな…」
「アレンが…」
「アレンさんが…大変なことに…」
「助けに行かないと…」
ルーシィ、ミラ、ジュビア、ウェンディは、焦るように皆に言葉を送る。
「一体なにがあったのじゃ!!」
皆と同じように4人に駆け寄るマカロフが、怒号のように声を掛ける。
ミラ達は、アレンの身に起こったこと、冥府の門の目的、虚という種族について、そしてアレンと同等以上の力をもつウルキオラという存在について事細かく説明した。
どれも衝撃的であったが、特に皆を驚かせ、怒りを滲ませることとなったのは、アレンが痛みを増幅させられた状態で拷問を受け、右目を抉り取られたというものであった。更に、その抉り取られた右目を、4人の目の前で踏みつぶされたと聞き、ナツ達は怒りで狂ってしまうかのような表情を見せる。特にエルザの雰囲気は誰が見ても正常ではない様相であり、作った握りこぶしに血が滲むほどであった。
マカロフですら、怒りで表情が固まっている様子が見て取れる。怒りと悲しみ、やるせなさに皆が震え、涙をためていた。そんな様子を見て、ミラがポロポロと涙を流す。
「ごめんなさい…私…何もできなくて…」
「ミラのせいじゃない…よく戻ってきた…」
ミラのこれまでにない謝罪に、エルザが苦悶の表情を浮かべながらそっと寄り添う。ジュビア、ルーシィ、ウェンディも頭を垂れて涙を流している。
「おい…もう奴らのアジトへ乗り込む算段は付いてんだろ…」
ラクサスが低く唸る。その身体の周りには、バチバチと怒りの雷が纏わりついている。それを皮切りに、エルザが立ち上がり拳を握りこむ。カグラが不倶戴天の鞘を握りこむ。グレイが氷気を身体に纏わせる。…皆が魔力を込める中、ナツがゆっくりとマカロフへと歩み寄りながら口を開いた。
「じっちゃん…ッ!戦争だッ!!!!!」
その言葉をもって、フェアリーテイルの酒場は、怒りと鼓舞を込めた、圧倒的な叫ぶ声が支配することとなった。

フェアリーテイルのメンバーは、冥界島がこちらに近づいてくるのを目視しながら、迫りくる戦いに備えていたが、皆で集めた魔障粒子ラクリマが突然不穏な光を放ったことで、警戒の向きをラクリマへと変えた。気付いた時にはすでに遅く、皆が苦悶の表情を浮かべていたが、カナがその異常にいち早く気付き、皆をカードの中へと封じ込めたのだ。結果としてギルドは瓦礫の山と化し、ギルドやマグノリアのあった街は魔障粒子が飛び交うことになってしまった。
しかし、事前に住民を避難させていたこと、フリードの術式により魔障粒子の散乱の時間稼ぎができたことで、ハッピーたちが冥界島へ飛び立つまでに、魔障粒子を吸い込んでしまうことを避けることができたのだ。無事に冥界島へと降り立ったフェアリーテイルのメンバーは、それぞれに冥界島全域を闊歩しながら冥府の門への攻撃を開始した。

冥府の門、本部のある冥界島は、空中を飛翔しながら、フェアリーテイルのあるマグノリアへと到着する。それと同時に、セイラの起動によって魔障粒子が入ったラクリマが大爆発を起こし、フェアリーテイルのギルドが木っ端微塵に吹き飛んだ。その様子を見て、セイラ達は作戦の成功を実感したが、すぐにそれが誤りであることを認識する。
羽の生えた猫3匹が、カードをもって冥府の門へと突撃してくる。最初は猫だけが助かり、決死の覚悟で乗り込んできたものだとばかり思っていたが、そのカードから、なんとフェアリーテイルのメンバーが続々と現れるさまを見て、誰一人殺すことができなかったことを悟った。
「くっ…なんてこと…これは私の失態です…」
「いや、そう自分をせめずともよい…我らの手で直接奴らを葬り去ればよいだけ…」
セイラの言葉に、キョウカが慰めるようにして言葉を発する。
「その通りだ。お前の責任ではない。ことこの一件に関しては、奴らの方が一枚上手だったというだけの話」
マルドギールが、キョウカに続いて言葉を発する。そして一呼吸おいて再度マルドギールが口を開く。
「さて、では九鬼門諸君、敵はフェアリーテイル。奴らは軟弱な人間だ。我らの敵ではない。各自各個撃破し、フェアリーテイルを殲滅せよ」
その言葉に、キョウカとセイラを除く九鬼門のメンバーが、ゆっくりと本部の居城を後にする。
「セイラ、お前はアレン・イーグルの支配に移れ。そしてキョウカ、お前はセイラを援護する形でアレンを捕えている地下牢獄の地上入り口で護衛を任せる。もし仮にフェアリーテイルがそこまで攻め入った際には、お前の責任ですべて処理しろ」
「「はっ!かしこまりました!」」
キョウカとセイラは、マルドギールの言葉に、頭を垂れて了解の意を添える。
「私はアレンの力を支配できた瞬間に、マスターENDを復活させられるように準備をしておく。この戦いでゼレフ様の元へと大きく近づくだろう」
マルドギールはそう発しながら、キョウカとセイラと共に歩み始めた。

冥界島に乗り込んだフェアリーテイルの魔導士たちは、各自九鬼門と遭遇し、戦闘を開始する。九鬼門はその殆どがゼレフ書の悪魔であり、その戦闘能力は非常に高いものであった。1対1での戦闘では勝ち目が薄かったフェアリーテイルのメンバーであったが、数人での協力に加えて、アレンとの修行に、先の竜種との戦いでフェアリーテイルの魔導士の力は以前よりも強力なものとなっており、苦戦を強いられたとはいえ、九鬼門を撃破するに十分な力を有していた。
残る九鬼門はキョウカとセイラのみとなり、副官のマルドギールと合わせ、3人をなった。
キョウカと相対するはエルザ、ミラ、カグラ、ウェンディ、シャルルに加えて後から参戦したミネルバの6人で戦闘に臨んでいた。
「ウルキオラ様…まさかあの女共を解放していたとは…困ったものだ」
「貴様が…キョウカ…」
「アレンに拷問を加え、目を潰した女ッ!」
キョウカの言葉に、エルザ、カグラが怒りを含んだ目で口を開く。
「いかにも…中々楽しめたぞ…ふふふッ!」
キョウカの言葉に、5人は今までにない表情を見せる。
「こいつは…私が殺す…」
「いや、お前だけにやらせるわけにはいかん…」
「全員で殺す…」
「抜け駆けは許さんぞ…」
ミラの言葉に、エルザとカグラ、ミネルバが割って入る。
「ふふっ。貴様らも此方を楽しませてくれるのか?」
エルザ達はキョウカの言葉を聞き終える前に、キョウカへと飛び掛かった。

ENDの書を脇に抱えるマルドギールに相対するは、ナツ、グレイ、ジュビアに加えて、スティングとローグであった。
「まさか、九鬼門の殆どがやられてしまうとはな…」
「てめえも同じ道を辿ることになる…」
マルドギールの言葉に、ナツが静かにそれでいて畏怖を滲ませる声で答える。グレイはそんな会話を聞きながら、マルドギールの抱える本に目線を移す。
「(あれが親父の言っていたENDの書ってやつか…)」
そんなグレイの心を読むかのように、ジュビアはグレイを心配そうに見つめる。
「九鬼門共の失策で勘違いさせてしまったようだが、貴様ら人間如きでは、このマルドギールを倒すことなど不可能だ」
「関係ねぇ…てめえらは、アレンを…仲間を傷つけた!絶対に許さねえ…」
ナツはそう言い放ち、
マルドギールに炎を纏った拳を振り上げた。

それ以外のメンバーであるラクサスやウルティア達は、ナツ達とエルザ達の援護に向かうため、歩みを進めていたが、ある者の言葉によってそれは遮られることになる。
「なるほど、多少はやるようだな」
その言葉を聞き、畏怖を覚えるほどの魔力と戦闘能力を察知したフェアリーテイルのメンバーは、驚いたように口を開いた。
「てめえが…ウルキオラ…」
ラクサスが低く唸るような言葉を発する。
「ほう?俺の名を知っているのか?お前に会った覚えはないんだが…そうか、そこのゴミから情報を得たか…」
ウルキオラはそう言って、ラクサスの後方に控えるルーシィに目線を向ける。ルーシィは「ひっ…」と小さく悲鳴をあげる。
「…ゴミだと?」
ジェラールが怒りを含ませた言葉を発する。
「…ちっ!こいつ、本当にやばいやつだゾ…」
「アレンさん以上の魔力です…」
ソラノとユキノが震える声で呟く。
「ほう?ゴミにしては中々の推測だな…」
ウルキオラはそう言って魔力を解放する。その魔力にフェアリーテイルのメンバーが目を見開く。
「こ、こいつ…」
「なんて魔力をしてやがる…」
フリードとビックスローが冷や汗を流しながらウルキオラを見つめる。
「貴様らなど、一瞬で葬り去ることができるのだが、アレンの虚化完了までもう暫くかかりそうなんでな…。折角だ。少々相手をしてやる」
ウルキオラはそう言い放つと、一瞬で姿を消し、ラクサスの腹に蹴りをかます。
「がはっ!!」
その蹴りは、ラクサスの腹に深々と刺さり、ラクサスは血反吐を吐いて遥か後方へと吹き飛んでいく。
「ラ、ラクサス!!」
ウルティアがラクサスの名を叫ぶが、それに対する返事は帰ってこない。
「なんだ、この中で一番強い魔力を持つものでこの程度か…拍子抜けも良いところだ…」
ウルキオラは呆れた様子で口を開いた。
「ラクサスッ!!」
フリードがラクサスが飛ばされた場所へと駆け寄る。だが、それはある怒号によって遮られる。
「ッ!隙を見せるなーッ!!奴から目を…ゴホッ!…そらすなーッ!!」
ラクサスが血反吐を吐きながら皆に声を張り上げる。その言葉に皆が目を見開き、ウルキオラへと視線を固定させる。
「…ほう?案外冷静だな…」
ウルキオラは表情を変えずにラクサスへと声を掛ける。ラクサスは苦しそうな表情でウルキオラを見つめる。
「(油断はなかった…神経を張り詰めていた…だが、全く見えなかった…っ!)」
ウルキオラは、ラクサスの表情からその考えを推測する。
「無駄だ…貴様らがいくら警戒をしようと何の意味も持たない…」
「くっ…アイスメイク…薔薇の王っ!!」
ウルキオラの動きを待つ前に、ウルティアが攻撃を仕掛ける。
氷でできた薔薇の茎や花がウルキオラへと襲い掛かる。だが、その氷の薔薇は、ウルキオラの片手で見るも無残に破壊される。
「なっ!!」
「う、嘘だろ…ウルティアの魔法が…」
「片手で…っ!」
ウルティア、ジェラール、レヴィが驚いた様子を見せる。
「涼しさを味わうには、最適な魔法だな」
ウルキオラのまったく意に介さない言葉に、ウルティアは怪訝な表情を見せる。
「ッ…!七つの星に裁かれよ!七星剣ッ!!」
「アイスメイク・蛟!!」
「アイスメイク・大鷲の宴!!」
ジェラール、リオン、ウルがそれぞれ最大火力で魔法を打ち込む。ウルキオラはそんな目を見開くような魔法に対して、怠そうに突っ立っている。
ウルキオラは3人の魔法を甘んじて受ける。それを見たフェアリーテイルのメンバーに希望が滲み出る。
「やった!さすがにこれだけの魔法が当たれば…」
「やっぱりみんなすごい!!」
リサーナ、ルーシィが飛び跳ねるようにして声を掛ける。だが、ウルキオラのいた場所から、3人の魔法が消滅するような様相を見せる。
「こんなものが…全力か?」
ウルキオラは全くのノーダメージで立っていた。
「う、うそでしょ…」
「まさか…何かの防御魔法か…」
エバとフリードが驚いたように声を上げる。
「防御魔法?勘違いするな…お前らの魔法が勝手に消滅しただけだ」
「…なんだと?」
ウルキオラの言葉に、戦線に復帰したラクサスが低い声を上げる。
「貴様ら魔導士は、己の使う霊力…いや、魔力の性質も知らんのか?」
「何わけわかんねーこと言ってんだ!」
エルフマンは、ウルキオラの言葉を理解できずに、怒りを露にする。
「…魔力と魔力がぶつかり合った時、弱い方の魔力が消滅するのは自然の摂理…」
ウルキオラの言葉に、殆どのモノが理解できないといった様子であったが、ラクサスとウルだけは、冷や汗をかきながら一方後ろに後退する。後方で眺めていたヒノエとミノトも、これまでにない驚きの表情を見せる。
「ほう?数人は理解できたみたいだな…つまり、だ…」
「お、おい、ラクサス?ウル?どうしたんだ…」
ウルキオラの言葉と同時に、ラクサス達の異常な様相を怪訝に思ったカジルが口を開く。
「お前らが俺を斃す為に練り上げた魔力よりも、俺が無意識にはなっている魔力の方が上ということだ…」
ウルキオラはそう言い放つと同時に、先ほどよりも更に強大な魔力を放出する。
ウルキオラの言葉に、フェアリーテイルのメンバーは目を見開き、呻き声に似た悲鳴をあげる。
そんな状況な中、ウルキオラとフェアリーテイルのメンバーの間に、割って入るように前方に身を出す2人が現れる。
「皆さん、ここは私達に任せてくれませんか?」
「…姉さん、この方私達でも太刀打ちできるかどうか…」
ヒノエとミノトが、それぞれに武器を換装し、魔力を解放しながら言葉を放つ。その武器の力と魔力に、ウルキオラは目を見開く。
「…驚いたな…俺の探査回路(ペスキス)で捉えられないとは…」
「恐らく、隠匿スキルの影響かと…」
「そうやら、何も通じないというわけではないようですね…」
ウルキオラの言葉に、ヒノエとミノトは警戒を解くことなく口を開く。そんな風にして3人が睨みあいながら固まっていると、ヒノエとミノトの隣に並ぶものが出てくる。
「ラクサスさん…それに皆さんも…」
「あんた達だけに負担を掛けるわけにはいかねぇ…」
「私たち腕に自信のあるのが援護、他が後方支援…それくらいはできるはずよ…」
「アレンを相手にしていると思えばいいわけよ…」
ヒノエの驚いた様子に、ラクサス、ウル、ウルティアが落ち着いた様子で口を開いた。
「ほう?あれで戦意を失わないとはな…いいだろう。なら、少し足掻いてみるといい」
ウルキオラが小さく呟くと同時に、ヒノエ、ミノト、ラクサスをウル、ウルティア、リオン、ジェラール、ガジル、リリー、カナを前衛とし、エルフマン、エバ、フリード、ソラノ、ルーシィ、ビックスローが援護、リサーナ、レヴィ、ユキノ、ビスカ、アルザックが後方支援として、戦闘を開始した。
 
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