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イベリス

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第六十二話 命の大切さその三

「そんな人とは付き合わないことよ」
「一人ぼっちは寂しくない?」
「寂しくても付き合ってはいけない人とは付き合わないことよ」
「そうなのね」
「友達がいないイコール悪いじゃないのよ」 
 母は言い切った。
「人間一人でもやらないといけないこともあるから」
「だからなのね」
「一人ぼっちになってもそれが駄目とは思わないことよ」
「一人でも悪い人とは付き合わないことね」
「そうよ、一人でいるのが寂しくても」
「友達がいないことは悪いことじゃなくて」
「悪い人と付き合う位なら一人の方がずっといいのよ」
 娘に強い声で話した。
「覚えておいてね」
「そうなのね」
「そう、ある人は野球の贔屓のチームが大変なことになって」
「一人で頑張ったの」
「一人でもチームを救うって決意して動いたのよ」
「そんな人もおられるのね」
「誰かいるからするんじゃなくて」
 そうではなくというのだ。
「自分だけでもね」
「やっていくことね」
「そうよ、あと生きものや奥さん子供を虐待する人はね」
「論外ね」
「今話した人と同じかそれ以下だから」
「付き合ったら駄目ね」
「警察に通報しなさい」
 これまで以上に強いものだった。
「それでも駄目だったらね」
「警察も動かないことあるのね」
「酷い警察署だと民事はどうとか言ってね」
「取り合ってくれないのね」
「それで人が死んだってこともあるから」
「警察も頼りにならない場合があるのね」
「通報するにも警察署は選んでね」
 そうしなければならないのが現実だ、カルト教団によって妻が命の危険に脅かされていて夫が何度も警察に何度も通報してもその署は取り合わず遂には妻が死んでしまったという話が九州の方に実際にあった。
「人間の屑が悪いことをしても何もしない警察署もあるのよ」
「酷い署もあるのね」
「お役所でもそんな場合があるから」
「気をつけることね」
「通報して民事がどうとか言うならね」 
 それならというのだ。
「他の署に行くか人権に厳しい弁護士さんとか団体にお話するのよ」
「そうしたらいいの」
「警察が対処してくれたらそれまででね」
「それでよしで」
「そうでない場合も頭に入れておいてね」
「警察だけじゃないのね」
「そう、まだあるのよ」
 対処の仕方はというのだ。
「実はね」
「そうなのね」
「放っておいたら死ぬ場合もあるのよ」
 母の言葉は真顔でのものだった。
「暴力で」
「そうした事件もあるしね」
「世の中自分より弱い相手には徹底的に暴力振るう人もいるから」
「酷いわよね」
 咲はそうした輩に口も目も苦くさせて応えた。
「ストレス溜まってとかでよね」
「それなら他の解消方法があるわね」
「私だったらラノベや漫画読んだりゲームして」
「それでよね」
「すっきりしてるけれど」
「身体動かしたいなら走ったりしてね」
 母はさらに話した。
「殴りたいならボクシングジム行ってよ」
「ウォーターバッグ殴ればいいわね」
「あら、ウォーターバッグなの」
「最近はサンドバッグでなくてね」
 咲はウォーターバッグと聞いて目を瞬かせた母に答えた。 
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