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向かい合ってくれる人

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第四章

「言われるのが嫌で」
「自分から距離を置いてよね」
「付き合わなくなったよ」
「高校を卒業しても」
「高校を卒業した時にもう失恋のことは言われないと思って」
 それでというのだ。
「凄く嬉しかったしね」
「トラウマはあるけれどそれで心を閉ざしたら」
「人とも親しくなれないね」
「事実あんた親しくなりたくなかったでしょ」
「そうだったよ」
 界人はその通りだと答えた。
「本当にね、殆どの人が嫌になって」
「そうだったわね」
「そうなったからなんだ」
「誰とも付き合えなかったのよ」
「そうだったんだね、僕はそれでもよかったけれど」
「それでもでしょ」
「斎藤さんと出会って」
 そうなってというのだ。
「縁が出来てよくお話する様になって」
「その考えも変わったわね」
「失恋のことも話したよ」 
 そしてずっと言われたこともというのだ。
「そうしたけれど」
「斎藤さんは何て言ってくれたの?」
「大変でしたねってね」
 その様にというのだ。
「優しく言ってくれたよ、何があったのか全部話したけれど」
「そう言ってくれたのね」
「それでね」
 界人はさらに話した。
「そのことは忘れて新しい出会いがあったら」
「その時はなのね」
「告白したいと思ったら」
 その時はというのだ。
「すればいいってね」
「言ってくれたのね」
「大事なのはそうしたトラウマは忘れて」
 失恋とそれから起こったことに対してのというのだ。
「自分は言わないことだってね」
「言ってくれたのね」
「斎藤さんはね」
「だったらよ」
「そうすべきだね」
「お母さんもそう思うわ」
 こう息子に話した。
「そうしたことはね」
「忘れることなんだ」
「そして自分はやられて嫌だったことはね」
「しないことだね」
「誰にもね」
「それはそれでいい人生の経験だったかもともね」
 界人はさらに話した。
「斎藤さんに言ってもらったけれど」
「そうね、じゃあそうね」
「思うといいんだ」
「ええ。そう言ってもらったことも」
「僕が話したからだね」
「心を開いたからよ。だったらね」
 母は我が子に味噌汁を飲みながら話した。 
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