| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

口だけ男

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二章

「言ってもだ」
「駄目ですか」
「動いてくれませんか」
「そうですか」
「自分が信頼している相手の悪い話は信じない」
 小柳は強い声で言った。
「そうだろう」
「ああ、そうですね」
「ちょっと揺らぐかも知れないですが」
「完全に信じているなら」
「もう信じないですね」
「例えそれがどんな悪人でもな」
 自分が信じている相手がというのだ。
「何の証拠もなしだとな」
「嘘だと思いますね」
「それで聞かないで、ですね」
「動かないですね」
「そうなる、だからな」 
 それでというのだ。
「今は動くな、証拠を集めるんだ」
「今はですね」
「あいつの悪事の証拠を」
「そうすべきですね」
「人の手柄を横取りして自分の失敗を押し付ける奴だ」
 小柳はこのことを指摘した。
「そんな奴だからな」
「悪事もしていますか」
「何かと」
「そうですか」
「そんな奴だ、セクハラやモラハラやパワハラだけじゃない」
 こうしたよく言われること以外にというのだ。
「金とかのこともだ」
「調べていきますか」
「そして証拠を集めてですか」
「そのうえで、ですか」
「社長や中谷君に出すぞ、二人共な」
 ここでだ、小柳は。
 暗い顔になってだ、こうも言った。
「出来るし悪人でもないがな」
「おべっかに弱いですか」
「社長も中谷さんも」
「そうですか」
「ああ、ああした奴はいそうでいないからな」
 尾谷の様な輩はというのだ。
「案外な」
「おべっか使いはですか」
「上ではへらへらして下にはつらくあたる」
「そんな奴は少ないですか」
「案外」
「しかしいることにはいてな」
 それでというのだ。
「そうした奴にはな」
「社長は中谷さんは弱い」
「そういうことですね」
「おべっか使いには」
「そうだ、尾谷は口だけでだ」 
 そうしたタイプでというのだ。
「どんな悪いことをする奴だ」
「絶対に会社に置いておけないですね」
「そんな奴ですね」
「近くにもいて欲しくないですね」
「そんな奴は」
「あまりにもあからさまで卑しいからな」 
 難しい顔になってだ、小柳は話した。
「皆ああはなりたくないからな」
「ですよね」
「正直卑しくて醜いですね」
「上に諂って下をいたぶるとか」
「人間としてどうかってなります」
「しかし実際にいてな」
 そうしたタイプは少ないがというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧