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狐と葡萄畑

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第一章

                狐と葡萄畑
 ローマ帝国の頃の古い古いお話です。
 ローマ帝国のあるところに広くて沢山の葡萄の実が実っている葡萄畑を持っているお百姓さんがいました、お百姓さんの名前をガイウスといいました。
 ガイウスは黒髪がつむじのところまで下がっていて顎が割れた黒い目の大男でした、いつも葡萄畑の世話をしてです。
 葡萄を売ったりワインにしてそうしたりしてかなり裕福な暮らしをしていました、ですが彼は一つ悩みがありました。
「まただ」
「またなの」
「そうだ、まただ」
 黒髪と青い目で細面がとても整っている奥さんのユリアに怒って言うのでした。
「あの狐が葡萄を食べていたんだ」
「あなたの大事な葡萄を」
「そうだ、とんでもない奴だ」
 ガイウスは怒って言いました。
「いつもいつも」
「そうよね、いつも葡萄畑に来てね」
「葡萄を取って食うんだからな」
「とんでもないわね」
「怒ったら跳んで逃げるしな」
 狐はとてもすばしっこくて追っても逃げられるのです。
「困った奴だ」
「こうなったら罠を仕掛けようかしら」
「そうするか、これ以上大事な葡萄を取らせるか」
 こう言ってでした。
 ガイウスは葡萄畑に罠を仕掛けて狐を捕まえようとしました、ですが。
 ある日のことでした、ガイウスが葡萄畑で働いていますと。
 また狐がいました、それで怒って今日こそは捕まえようとしましたが。
 何と狐は鼠を獲って食べていました、鼠は武道の木の幹や根っこを齧って荒らすのでガイウスは大嫌いです、ですがその鼠をです。
 狐は食べています、それで彼は驚いて狐に尋ねました。
「お前鼠を食べているのか」
「見ての通りですよ」
 狐は鼠を一口ぺろりと食べてから答えました。
「この通り美味しく」
「お前は葡萄を食いに来てるんじゃないのか」
 この葡萄畑にというのです。
「実際に食ってるしな」
「ええ、確かに頂戴しています」
 狐はガイウスに悪びれず答えました。
「しかも美味しく」
「やっぱりそうか、太い奴だ」
「いえいえ、葡萄は最後のデザートですよ」
 狐は悪びれないまま自分の前にいるガイウスに前足を動かしつつ言いました。
「一房頂くだけで」
「それで食うだけか」
「私がここに毎日来る理由はです」
「葡萄を食いに来るだけじゃないのか」
「ですからそれはデザートで」
 一房だけでというのです。
「この葡萄畑にいる鼠や蛇それに空から来る鳥を食べる為です」
「畑を荒らす鼠や鳥にか」
「蛇がいたら困りますよね」
「当然だ、蛇は葡萄の蔦に住んでな」
「近寄ると下手したら噛んできますね」
「毒蛇ならそれで終わりだ」
「そういうのを食べてるんですよ」
 狐はガイウスにお話しました。
「私は」
「畑や人に害になる生きものをか」
「そうです、こういった生きものは狐にとってはご馳走なので」
 それでというのです。
「もう毎日です」
「食っているか」
「左様です」
「そうか、若しお前がそういったものを食わないとな」
 どうなるか、ガイウスはすぐにわかりました。
「増えるな」
「そうなりますね」
「そしてわし等が退治しなければならないが」 
 それでもと言うのでした。
「それもかなりの手間だ」
「そうですね」
「その手間を考えるとな」
 考えながら言うのでした。 
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