観たくない理由
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第二章
岡崎はこの時は暗かった、それをだ。
空の先輩OLは見て不思議に思った、それでトイレで化粧直しをしている時に空に対して怪訝な顔で言った。
「岡崎さんさっき暗くなかった?」
「あっ、言われてみますと」
空も言われて気付いた。
「何か」
「そうだったわね」
「特撮のお話は大好きで」
「そのお話の時はお仕事で何があっても笑顔でしょ」
「そうなります、しかも伊上さん脚本だと」
そうした作品ならというのだ。
「もう私がアイスクリーム食べる時みたいに」
「あんたアイス好きだからね」
「もうそんな感じで」
「凄い笑顔になるのね」
「嬉しそうに。ですがさっきは」
「それがなかったのね」
「そうでした、どうしてでしょうか」
空はファンデーションを使いながら首を傾げさせた。
「考えてみれば不思議ですね」
「じゃあ本人さんに聞いてみたら?」
先輩は空に提案した。
「何処となくね」
「さっき暗い気がしたってですか」
「その作品のお話の時ね」
「そうすればいいですか」
「そう、そうしてね」
そのうえでというのだ。
「聞けばいいわ」
「じゃあそうしてみますね」
「そうすればいいわ」
こう空に言って空もだった。
そうすることにした、それで次に岡崎と会って特撮の話をする時に何処となくそのことを聞いたが。
岡崎はまた暗い顔になった、それで空に話した。
「俺あの時大変だったんだよ」
「大変っていいますと」
「俺あの作品観た時高一だったんだよ」
「そうだったんですか」
「あの時俺部活じゃ顧問の先公の殴る蹴るの暴力受けていてな」
「えっ、そうだったんですか」
「それでクラスの女の子にコクったら振られて」
岡崎は苦い顔で話した。
「それを学年中にその娘の友達に言い触らされてネタにされて言われまくってな」
「部活のことに加えて」
「コクる様に言ったツレは俺がそんな状況になったの見て縁切ってきたしな」
「そんなの本当の友達じゃないですよ」
空はその話を聞いて怒って言った。
「都合が悪くなったら切り捨てるなんて」
「そうだよな、それで孤立無援になって言われ放題でな」
「部活でも暴力受けていて」
「成績も滅茶苦茶落ちて留年だって担任からも親からも言われてな」
「最悪だったんですね」
「だから転校したんだよ」
そうしたというのだ。
「もういられなくなって」
「退学じゃなくて」
「ああ、そうしたことがあったんだ」
「そうだったんですね」
「その時のことを思い出すんだよ」
岡崎は尚更暗い顔になって話した。
「あの作品の話を聞くと」
「そんな時に観ていたから」
「ああ」
その通りだと言うのだった。
「そうなんだよ、だからな」
「あの作品のことはですか」
「聞きたくないしもう二度と観たくないんだよ」
「そうでしたか」
「俺にとって唯一のトラウマ作品だよ」
岡崎はこうも言った。
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