一人のチトー
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第二章
「あの国の中にな」
「ユーゴスラビアという国の中に」
「そのうえで国境は七つだ」
「オーストリアやイタリアと接していて」
「他国からの干渉も受ける」
「事実受けてきていますね」
「だからあの辺りは火薬庫と呼ばれていた」
欧州のというのだ、バルカン半島特にユーゴスラビアとなっている辺りがかつてそう呼ばれていたことも言うのだった。
「そして事実だ」
「多くの戦争が起こってきました」
「一次大戦の発端にもなりな」
「二次大戦でもファシストが介入しました」
「兎角あの国は治めにくい」
「非常に」
「だがそれをだ」
ケネディは強い声で話した。
「彼はだ」
「無事に治めていますね」
「あれだけ複雑な国をな」
「内をまとめ外の干渉を退け」
「そのうえでな」
「万全に治めていますね」
「凄いことだ、一人の彼がだ」
ロバートにさらに言った。
「そうしている」
「チトーがですね」
「治めている、彼がいてこそだ」
まさにというのだ。
「あの国は治まっている、彼の存在は絶対だ」
「あの国にとって」
「そうだ、そして我々にとってもな」
「有り難いことですね」
「全く以てな。ずっといて欲しい位だよ」
ケネディは微笑んで話した。
「我が国にとっても他の国にとっても」
「チトーはですね」
「心から思うよ。ただ」
ここでだった。
ケネディはこれまでの頼もしいチトーに対してそう思う感情を消してだった。
暗いものにさせてだ、こう言ったのだった。
「彼がいるうちはいいが」
「いなくなるとですか」
「人は必ず死ぬ」
ケネディはこのことも話した。
「もうこれは絶対だね」
「はい」
ロバートもその通りだと答えた。
「人は必ず死に」
「最後の審判を迎えるね」
「そうですね」
「まさに誰もがだよ」
「そうならない人間は一人もいません」
「それは彼も同じだよ」
チトーもというのだ。
「やはりね」
「死にますね」
「共産主義者は神を信じないが」
それでもというのだ。
「このことは変わらないよ」
「死ぬということは」
「絶対に。だからこそだよ」
「チトーも死にますね」
「何時かは。その時彼の様な人物がいるか」
「それが問題ですね」
「その通りだよ。その時あの国はどうなるだろうか」
ケネディは先のことに思いも馳せた、そして。
ユーゴスラビアの中ではあるクロアチア人の集団が密かに話をしていた。
「待つんだ、今は」
「待つのか」
「そうするのか」
「今我々が独立を言ってもだ」
例えそうしてもというのだ。
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