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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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運命を背負いし者

<ロマリア>

「ふざけんなバ~カ!」
だが皆の視線を一身に受けたリュカの答えは予想外だった。
誰もが『よ~し、じゃぁ僕頑張っちゃうよ~!!』と、何時もの軽いノリで服を脱ぎ出すと思ったのに、罵声を浴びせてきたのだ。

「な…リュカ…そんな言い方…」
「うるさい、よく聞け!………コイツはティミー、僕の息子だ!そして僕達の元居た世界では、伝説の勇者としてこの世に生を受けた…まだ10歳の幼い子供が、世界の運命を背負い、魔界まで赴き魔王を討伐したんだ!」
急に自分の息子の話を始め、呆気にとられる一同…

「まだ遊びたい盛りの子供が、重大な使命を背負い、遊ぶ事を我慢して世界を救おうと自分を犠牲にしたんだ!僕は最低な親だ…大切な息子に重荷を背負わせ、自分は8年間も石になってたんだから…」
「父さん…」

「子供に辛い思いをさせるのは、1回だけで十分だ!エルフと人間との間に、蟠りがある世界で、両種族の(あい)の子を産ませるなんて…お前等自分たちの事しか考えてないだろ!ハーフエルフ…エルフでもなく、人間でもない中途半端な子供。どちらの種族からも忌み嫌われる子供………そんな不幸な子供を作りたいのか!!」
皆、思ってもいない事だった。
そんなつもりはなく、その子を中心にエルフと人間の蟠りを無くす…
それがエルフの女王とロマリア王の考えだったのに…

「父さん…僕は自分が不幸だと思った事はないですよ……父さんの息子で、本当に良かったと思ってますから」
ティミーは泣いていた…
リュカが…父が自分の事を大事に思っていてくれたことに…
「バカ…彼女の前で泣くんじゃない!家族に、友人に、情けない姿を見られても、好きな女にだけは強がって見せろ!」
「………はい」


エルフの女王もロマリア王も、沈痛な面持ちで俯き黙る。
生まれ来る子供への配慮の無さに…
「カルディア…ただエッチがしたいだけなら、僕は何時だってお相手するよ。何だったら、あの時みたいにカリーと3人でだって、僕は一向に構わない…一晩中頑張っちゃうね!でもね、生まれてくる子供には自分の運命を選ぶ事が出来ない!だから辛い運命になる事が明確であるなら、僕はまだ見ぬ子供の為に、その子の誕生を阻ませてもらう」
アルルとティミーは『あの時みたいに』の件を突っ込みたかった…
しかし基本的に真面目な話だった為、その一部分を突っ込む事が出来ずにいる。



その後も、両種族の蟠りを解く話し合いは続いたが、結局は地道に互いの理解を深めて行く事しか出来ないとの結論に達し、リュカ達は解放された。
去り際に『具無しピザ1枚じゃ割に合わない苦労だな!』と、半ば強引に連れてこられた事に嫌味を言ったのだが『では夕食も一緒にどうだろうか!?』と、ロマリア王が瞳を輝かせ誘ってくるので『もうヤだよ!夫婦水入らずの時間を邪魔するな!』と、不敬罪を物ともしない捨て台詞を吐き逃げ出したのだ。


「酷い目に遭った………もう夕方じゃんか!」
黄昏色に染まる町並みを、ロマリア城から出てきたリュカは眺め呟ている。
「でも…エルフと人間の間に、蟠りが無くなれば良いですね」
「根が深そうだから難しいだろうなぁ…地道に頑張るしかないんだよ」
ティミーは父の背中を見つめ、此までの事を思い返していた。
何時も不真面目に振る舞う父…
幼い自分が、重くのし掛かる運命に向き合い、真面目に努力している側で、彼は何時もふざけていた…

しかし、それは彼なりの配慮の姿だったのかもしれない。
伝説の勇者という、他の誰のも押し付けられない運命に押し潰されない様に…
父は常に戯けていたのだと思う。

彼がいたから、逃げ出さずに全うできたのだ!
彼がいたから、魔界の魔王に恐れず立ち向かえたのだ!
彼がいたから…

自分は真面目に生きる事しか出来ない……だからこそ、父の生き方を見続けよう!
そう思い、ティミーはリュカの背中を眺めている。
心から尊敬できる偉大な父を…


アルル達は城から出て停泊中の船に帰ろうと歩き始めた途端、仲良くデート中(どう見ても仲良し兄妹にしか見えない二人)のウルフとマリーに出会した。
「あれ?何でお城から出てきたの?お父さん達だけ、お城でお持て成しされてたの?」
「そうなのよマリーちゃん!貴女のお父さんは、この国の王様に気に入られてるから、特別料理をご馳走になってたのよ!」
羨ましがるマリーに、思わず意地の悪い言い方をするアルル。

「ズルイ!私もご馳走食べたかったのにぃ!………何、食べたの?」
マリーはジト目でリュカを見つめながら、お城でのご馳走を問いただす。
「聞いて驚けマリー!僕だけのスペシャル料理『シーフードピザ、魚介類抜き』だ!」

「……………………具は?」
「シーフード…つまり魚介類だ!」
「………抜き…でしょ?」
「抜きだ!」
呆れ返るマリーと爽やかに答えるリュカ。
ウルフはそれが可笑しくてしょうがない。

「何でお父さんは、そんな嫌がらせをされてるの?」
港へ続く城下の道を、アルル達はマリー・ウルフと合流し歩いている…
そしてロマリアからの振る舞いが疑問でしかないマリーは、具無しピザの所以を聞かずにはいられない。

「うん。僕が要望したんだ!………嫌がらせのつもりで」
「へ~…でも嫌がらせを受けてるのは、お父さんよね!?」
「うん。満面の笑みで、具無しピザを振る舞われたよ!ちょ~うける~!」
何故か大爆笑のリュカと、それを見て笑うマリー。
ティミーはそれを微笑ましく眺めているのだが、マリーの心をリュカに奪われないかが心配なウルフは、ヤキモキしながら見つめている。

「………ウルフ君、心配しなくても大丈夫だよ!あの人は血縁の娘に手を出さないから…」
嫉妬に包まれる義弟を、そっと宥めるティミー…珍しく色恋事でウルフに進言している。
「リュカさんはそうかもしれないけど、マリーは………リュカさんが格好良すぎるんだよ!問題だよ、あの人!」
「おいおい…僕の彼女なんかは、血が繋がらないんだぞ!それに比べたら、君はまだ安心じゃないか!」
ティミーはウルフを見ながら苦笑いを浮かべる。

「………ぷっ!ふふふ…それもそうですね…ははははは…ティミーさんの苦労は、今後も続きそうですねぇ」
気付くと2人とも笑っていた。
リュカ達からは少し離れてしまったが、互いの境遇が可笑しくて堪らないのだ!
誰もが認めるトラブルメーカーの所為で…



 
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