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国立大学を出てもこれでは

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第二章

 坂本はその彼を採用した、そして働いてもらうと。
 織子の言う通りだった、むしろだった。
「いや、仕事よりもな」
「自慢話ばかりでしょ」
「国立大卒だの資格どれだけ持ってるかとかな」
「あと思いやりというか他の人はどうでもいいでしょ」
「自分だけだな」
「言うこともやることもね」
「それでかなり独善的だな」
 坂本は織子に彼を採用して三週間が終わってから職場で言った。
「仕事も何かな」
「馬鹿にしてる感じでしょ」
「ああ、とんでもないな」
「じゃあ採用しないわね」
「そうするな」 
 こう言って正式な採用は見送った、それからだった。
 彼の詳しい情報が入ってきたが。
「あいつ就職してもね」
「あんな性格でか」
「何処でもやっていけなくてね」
「仕事を転々としているんだな」
「そうみたい、確かに国立大学を出ていて」 
 そしてというのだ。
「資格も沢山持っているけれど」
「能力はあるんだな」
「けれどね」
「あの性格だからか」
「何処でも駄目みたい」
「そうなんだな」
「いや、中学の時から凄い頭はよかったけれど」
 織子は考える顔で述べた。
「ああした性格だから」
「何処でも働けないんだな」
「そう思うと性格って大事よね」
「幾ら能力が高くても悪いとな」
「それが過ぎるとね」
「どうしようもないな」
「そうよね」
 親子で話した、そしてだった。
 風の噂で彼は学校の教師になったがそこでは通用するどころか水を得た魚の様に活き活きとして出世していっていると聞いた、そこで織子は思った。
「ああした奴が活き活きとしてるなんて」
「公立学校だな」
「日教組にも入ってね」
「そこで偉くなっていってるんだな」
「雄飛って感じでね、あんな奴がそうなれる社会って」
 それはと言うのだった。
「学校の先生の世界ってどうなのか」
「考えさせられるな」
 二人で話した、堅実に向上を経営しながら。


国立大学を出てもこれでは   完


                 2022・7・22 
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