人生コンティニューしたらスクールアイドルを守るチートゲーマーになった
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9話 Thousand Trillion Percent【100兆の男】
「—————酷いもの見せちまった。」
「大丈夫です。秘密を知った以上、こんなことも覚悟はしてました。」
竜介先生の励ましを聴く俺たち。千歌や曜、梨子は覚悟は決まっているのか年の所為なのか案外しっかりしていた。ルビィと花丸は震えはしていたものの、必死に堪えていた。
「ルビィ、花丸。俺たちからの頼みだ。これを機にスクールアイドルを嫌わないであげて欲しい。お前たちは絶対に俺たち仮面ライダーが守る。」
「わかってます————今更辞めるなんて言いません。けど.......」
ルビィが影を落とした話を梨子が引き継ぐ。
「それにしても何であんなことを—————」
「あのライダー————仮面ライダーサガの変身者はわからないけど、多分アークっていう物と内浦に潜む大きな権力が鍵を握ってると思ってる。」
「ルビィ、俺は内浦の権力構造について俺は知りたい。黒澤家のお前ならわからないか?分かっているなら教えてくれ。」
「———————」
俺はルビィに対し、黒澤家並びにその周辺の説明を懇願した。
ルビィは渋々みんなの為にと重たい口を開き始めた。
「—————黒澤家は才くんが言ってるように、内浦を中心に沼津でかなりの権力を持ってる。今まではそれでよかったんだけど、ルビィが生まれる頃に小原家が乗り込んできて土地や建物を買い上げ始めてる。それに対して怒った黒澤家が必死に抵抗して、一大抗争になってる——————ルビィが知ってるのはここまで。」
「才君、そのことが何と関係あるの?」
俺は確信の付かない推測を皆の前で話し始める。
「ここの理事長は鞠莉だ。つまり、経営権は小原家が買い取ってる。それもつい最近だ。近場にある学校の買収を黒澤家が黙って見ておられるとは思えない。もし、この沼津・内浦に頻出している怪人たちのことが小原と黒澤の覇権争いの『序章』だったとしたら、今回の騒動も合点がいくとは思わないか?」
「「「「「——————」」」」」
「流石に考えすぎだよ〜」
「人の話を水に流そうとすんじゃねぇよ.........」
ちょっとムードぶち壊しするのやめてもろて。
でも今の言動で明らかに場の空気が大幅に緩くなった—————そう、千歌のように前向きになってもらわないとスクールアイドルは始まらないからな。
早速曜は話題を変える。
「よし!このことはとりあえず置いといて」
「それよりランキングどうにかしないとだよね〜」
「最近スクールアイドル増えてますからね。」
「しかもこんな何もない場所の、地味!&地味!&地味!————なスクールアイドルだし.......」
ルビィが原因を答えた矢先に、千歌がもはや自虐すぎて他人にも被害が及ぶ地味アピールをし始める。これが普通怪獣か……いやもはや個性の塊とか言うとキレられるのでやめておこう。
「地味地味言うんじゃねぇよ。内浦だって結構いいところだぜ?目立ってないだけで。」
「目立たなきゃダメなの?」
「やっぱり人気は大切だよ。」
「何か目立つものは..........やっぱり奇抜な名前を変える......か?」
「奇抜って—————スリーマーメイド?あ、ファイブか。」
弄りのように昨日の話を持ってくる千歌に梨子は顔を赤らめながら声を大きくする。
「て、何で蒸し返すの!?」
「でもその足じゃ踊れない!」
「じゃあみんなの応援があれば足になっちゃうとか!?」
「でも代わりに声が無くなるという.........」
「ダメじゃん!!」
「だからその話は無しって言ってるでしょ!?」
皆がわいわい言っているなか……感じる視線。
「(何でこんなところに先客が.......)」
「(ん?————善子ちゃん?)」
「(確かアイツは……)」
——————※——————
「学校来たずらか。」
「来たっていうか、たまたま通り掛かったから寄ってみたっていうか.......」
「たまたま?」
「どーでもいいでしょ!?それよりクラスのみんな何て言ってる?」
「え?」
「私のことよ!『あの娘 変な子だね。』とか『リトルデーモンって何?』とか!」
「はぁ......?」
「その様子だとやっぱり噂になってるわね!?そうよね、あんな変なこと言ったんだもん。————終わった。ラグナロクよ..........」
「ラグナロクの使い方微妙にズレてないか?」
「!!—————だ、誰?」
「ああ、俺———伊口才。スクールアイドル部のマネージャーだ。確か————この前ライブに来てたよな?」
「!!—————ひ、ひ、人違いよ。」
この動揺からしておそらく来てたのだろう。ただ、今の花丸とのやりとりを見る限り相当事情を抱えている。そこを下手に刺激して不登校に逆戻りになってしまうのは都合が悪い。
「えー、でもその髪色にヘアスタイルだったと思ったんだけど.......まぁいいか。ところでお前、スクールアイドル部に入らねぇか?部員はまだまだ募集中だぞ?」
「無理よ。—————あーんな変なこと言っちゃったんだから学校に来られない!まさにdead or alive!」
「それ生きるか死ぬかって意味だと思うずら。————大丈夫、誰も気にしてないよ。それよりいきなり来なくなって自分たちが悪いことしたって思ってるくらいだもん。」
「—————ほんと?」
「うん!」
お団子頭の彼女から発せられる弱々しい声に優しい声をかける花丸。————ほんと、一年生って優しい子ばっかだな。それに引き換えあの3人は俺の気苦労の塊なのだ........
「本当ね?天界堕天条例に基づいて嘘じゃないわよね?」
「ずら。」
「よし!まだいける!まだやり直せる!今から普通の生徒でいければ!」
「それは『たられば』じゃ.......いや、学校来ようとしてるのはいいことだからな。———お前、名前は?」
「我が名は堕天使ヨハ『津島善子ちゃんずら。』 善子言うな!」
「はいはい、善子————いやヨハネ(?)、スクールアイドルのことも考えてあげておいてくれ。」
「ヨハネじゃなくて.......あれ?——————まぁいいわ。一応考えておいてあげる。」
「サンキュー!」
「ところで........あなた前に戦って—————いや、何でもないわ。」
厨二病の困ったちゃんだが、一応スクールアイドルに若干の興味はありそうだ。—————押して誘えばいけるかもしれないな。
—————※—————
「気をつけて帰れよ。特に怪人にはな。」
「わかりました、竜介先生。」
「バスが何者かに襲われたら、家で待機してる虎太郎が向かうはずだ。それまで逃げておくんだぞ。」
「—————ほんと、何で私たちを狙うんだろうね。」
最近立て続けに起こる怪人との遭遇に曜は自分たちの不運さに憤りを感じてはいたが、どうしようもないことなので嘆くしかなかった。
「仕方ないよ、曜ちゃん。元はと言えば仮面ライダー—————才くんたちに《《守ってもらうこと》》が私たちが選んだ道だもん.......」
「そっか、なら仕方ないよね。」
守ってもらうことを義務かのように話す千歌であるが、そこに傲慢さなど存在しない。仮面ライダーの秘密を知ったことへのリスクと割り切っていると言うことだ。——————————彼女たちもまた、Aqoursを護ることがマネージャーの役目と割り切っている才に感謝しているのだ。
「..........それにしてもバス遅くない?」
「確かに——————あっ!!!!!!」
「何——————あれ?」
彼女たちの見た光景はバスの破壊活動。——————怪人によるバスの破壊活動という惨たらしいもの。
当然、黙ってなどいない
≪ウェイクアップ!クローズドラゴン!≫
≪Are you ready?≫
掌を殴って——————「変身!」
≪Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON! Yeah!≫
「止めねぇか!!」
「グルゥゥゥゥ!」
闘牛の如く突進に足元を掬われ、数メートル吹き飛ばされる。続けて左肩に突き刺さっている無数の槍をこちらに向かわせる。
クローズはビートクローザーでそれを何とか受け止め切る。
さらに突撃、ビートクローザーの斬撃もものともしないそのフィジカルの良さは超一流。たまらず超腕力で虚空に打ち上げられ、対岸へと投げ捨てられる。
「くそっ、こうなったら—————!」
クローズは扇風機フルボトルをビートクローザーにセットする。
≪スペシャルチューン! ヒッパレー!≫
フルボトルを認識し、それと共にレバーを引っ張る。引っ張られたことで陽気な待機音が準備完了を合図する。そしてトリガーを————
≪スマッシュスラッシュ!≫
奏剣を槍のように突き出す。扇風機の突風が弾丸のように発射され、豪腕の怪物の猛突進を相殺させ、吹き飛ばす。
それにとどまらず弾丸はドリルのように変化したのち、その怪人の体を抉る。こういう技の対処法は人間の本能的な防御。————すなわち、脳筋のクローズには持って来いである。
爆煙が上がり倒したかに思えもした。が———————
「無駄だ。そいつはアンデッド。—————バッファローアンデッドだ。そいつは角牛の祖であるが故に不死生物だ.......封印しなければ倒せはしない!」
現れたのは———————
「誰だお前。—————お前も怪人の仲間か!?」
「私を怪人呼ばわりとは流石は脳筋教師だ!」
「何だと!?」
「申し遅れました。————私、オハラエンタープライズ社長の小原兆一郎です。以後お見知り置きを。」
「大会社の社長さん、用がないなら早く逃げろよ。」
「いや!————私には用があるさ。ようやく私の強さ、正しさを証明するときがやってきたのさ。」
「何?」
≪サウザンドライバー!≫
「サウザンドライバーは我がオハラエンタープライズの創り出した最高傑作だ!——————ゼツメライズキーも。
≪ゼツメツ! EVOLUTION!≫
特殊な待機音が不穏な空気を助長させる。千歌、曜、梨子。事情の微塵も分からないこの3人ですらもこの空気に戦慄した。
プログライズキー、ゼツメライズキー……かつて世界が大洪水になった際、全ての生物種のデータを収めたとされる——現代まで続くモノか。
「プログライズキーも、両方使える。」
≪ブレイクホーン!≫
生体認証により特殊なプログライズキーが展開され、そのコーカサスの骨格を露わにしてゆく。
「プログライズキー—————って!?」
「その力は10倍のところを原型に改良を加え、君の力の1000兆%—————
「つまりは本来の100兆%————君たちの100兆倍だ!」
「変身。」
≪パーフェクトライズ!≫
≪ When the five horns cross, the golden soldier THOUSER is born. ≫
≪ Presented by “OHARA” ≫
「仮面ライダーサウザー。私の強さは桁外れだ.........!」
プログライズキーを差し込んだ瞬間に2体の動物。コーカサスオオカブトとアルシノイテリウム。
その5本の角が天下で交わり、装甲を形成する。————金色のボディスーツはいかにも高級感漂う。
仮面ライダーサウザー————その強さは本物の桁外れなのだ。
変身ポーズですら、その意向を強く反映されているかのようなポーズである。
「はぁっ!!」
乱入したサウザーがクローズに殴りかかる。最初の攻撃はクリーンヒット。その好調気味を残しながら連撃を続ける。——————クローズは突然の襲撃に不意を突かれ、苦戦を強いられる。
「止めろって!!」
「グルゥゥゥゥ!!!!!!」
「邪魔ですねぇ.........」
静止も虚しく、攻撃は止まらない。だがここでアンデッドが再び活気を取り戻し、その戦闘へと乱入する。ただ突進なだけでクローズとサウザーの間を割っただけなのだが。
≪サウザンドジャッカー!≫
剣のような槍型の金武器。それはさながら、注射器のようなものにも抽象的に感じればそうだろう。柄にはレバーが付いていることもそれを助長させる一因でもある。
再び突進しているバッファローアンデッドをビートクローザーで受け止めようとするところをサウザーはまさしく100兆倍に恥じぬスピードでクローズとの距離を1メートル空間へと距離を詰める。
アンデッドを斬りつけで大きく距離を取らせ、鋭利な先端をクローズ向けて、脅すように——————
≪ジャックライズ!≫
先端をフルボトルへと向け、その成分を吸い取るようにレバーを引っ張る。すると、サウザンドジャッカーが蒼色へと染め上げられる。
「何を———————」
「ドラゴンのデータを頂きました。」
≪ JACKING BREAK!≫
斬撃を振るうことで東洋竜が顕現する。それは暴れ狂う清流のように蒼炎を吐きながら、バッファローアンデッドを燃やし尽くす。————————残っていたのは、スペードの8のカードだけ。
≪OHARA ENTERPRISE ≫
「不死身のアンデッドをどうやって倒したんだ!?」
「私のサウザンドジャッカーにはカードに封印する能力もコピーされている。————倒したと同時に封印したのさ。さぁ、これで心置きなく戦える。」
「この野郎!」
クローズの一撃を紙一重で避けるサウザー。一撃目は高確率で避けられる————だが、その常識は通じずサウザーは繰り出されるパンチ瞬時に見切る。
「何で当たらねぇんだ!」
「サウザーには考えられる100兆通りのを100兆分の1秒で計算し、その最適解を私に提案する。その時点で君の攻撃パターンは100兆%当たらない!」
「そんなのわからねぇだろ!!!」
「わかるさ—————じきにね。」
蒼炎を纏ったパンチを瞬時に躱す。踏み込んだクローズをサウザンドジャッカーで1回、2回と斬りつけていく。もたれかかりそうになったクローズの胴体に膝蹴りを喰らわせる。
至近距離ながらも少し間が空いたところをサウザンドジャッカーの突きが入る。
クローズも負けじと足元を掬おうと攻撃する。だが、サウザーが即座に気づいたのかロンダートで回避する。その回転中に—————
≪THOUSAND DESTRUCTION !≫
エネルギーを右脚に集約し、飛び蹴り。当たったことを見届けると同時に踏み込むかのような連続キック。
力尽きるように倒れ込んだと同時に爆発。——————クローズの仮面がサラサラと溶けていった。
「ぐっ—————痛てぇ.......」
「君など敵では無い。——————したがってその痛みは装甲すら超えて届く.......」
「才くんこっち!!」
「あれは——————」
ルビィに竜介先生が戦っていると言われて来てみれば、俺が見ている光景は5本の角のゴールデンライダーに打ちのめされている竜介先生だった。
「お前は—————仮面ライダーサウザー!?」
「ほう、私のことを知っているとは........君の持つ情報力は少々危険視せざるを得ないな.......」
「その声—————お前は!」
俺の数少ない疑問を取り払うように、ゴールデンソルジャーは仮面を外す。————忘れもしないその口振り、態度、声音。
彼は—————
「小原兆一郎——————」
「私を呼び捨てとはおこがましい。—————まぁ、じきにそんな口を聞けなくなるでしょうがね。」
「なんだと?」
「脳筋くんにもわかるように説明してあげるならば、ラブライブ及び浦の星学院スクールアイドルAqoursを全力で潰すということです。」
「テメェもう一回行ってみろ!!」
「何度でも言ってあげますよ。いずれどちらが正しいのかハッキリと示されることでしょう。」
「お前は—————何がしたいんだ?」
「スクールアイドル及びラブライブが経済に大きく貢献しているのは、かなり有名な話ですが——————その一方でそれによる経済損失はプラスを遥かに上回っている。ファンがライブを見るために有給を取ったりする。ファンの迷惑行動で交通機関すら止めてしまう。女子高生がそればかりに熱中してしまい、勉学がおぼつかなくなり、やがて社会余剰物となってしまう。————あげればあげるほど欠点の方が多いのだよ。」
「それは————『違うと思う。』
俺が言葉に詰まったのに対して千歌はサウザーに対し、すぐに反論するほどに冷静かつ反論の余地があると踏んだのだろう。
「確かにあなたの言う通り、弱点だらけなのかもしれない。————けど私、感じたんです。人を惹きつける何か。輝かせる何かが。想いを届ける何かが。それを与えるのがスクールアイドルの本当の役目じゃ無いんですか!?」
「そんなものが何の意味を持つんだい?—————そんなものは幻想に過ぎない。ある意味ないものをあると言い張る悪徳宗教のようなものだ。早く抜け出さなければ、君も《《廃人》》となる日は近いだろう..........」
悠々と歩き去っていくサウザー。
その後ろ姿を憎たらしく思うほどに俺は怒りでたくさんだった。彼の名前すら言えないのがその証拠だ。
意見に絶対さがあるかと言われればそれはノーであることが心に突き刺さった——————
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