もう一つの"木ノ葉崩し"
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第十七話―火の影、里を照らし
パン!
「…………。」
柱間は両掌を合わせ,しばし瞑想する。
すると,ものの数秒で柱間の目の周りと額に赤い隈取の模様が浮かび,虹彩が金色に輝いた。
仙人モード――自然エネルギーを取り込むことによって身体能力を強化し,忍術・幻術・体術全てのレベルを大幅に底上げできる形態である。
また,術のパワーアップだけでなくチャクラ感知能力も得られるという特徴を持ち,こと柱間の仙人モードに関して言えばその捜索範囲は里全体に及んだ。
「……やはり,里中に負傷者がおるようだな。あちこちで被害を受けておる。」
里の状況を把握した柱間は,ひとまず仙人モードを解いて隈取を引っ込める。
「それなら……,」
カリ……バッバッバッ!
柱間は次に,片手の親指を軽く噛んで血を出し,印を結ぶ。
「口寄せの術!」
ボン!
呪文を唱えて片手を地面に付くと,煙とともに巨大な口寄せ獣が召喚された。
「カツユ!」
「柱間様!目をお覚ましになったのですね!」
それは,白い体に何本かの青い筋,体高十数メートルはあろうかという巨大なナメクジであったが,その気味の悪い見た目と巨体に反して,声は美しく口調も礼儀正しい。
実際には更に何倍もの大きさを持つ本体が正体であり,柱間が口寄せしたのはあくまでも分裂体の一つに過ぎない。
カツユ――湿骨林に生息し,当時としては柱間だけが呼び寄せられる固有の口寄せ獣であるが,後に柱間の実孫である綱手やその弟子であるサクラへと受け継がれていくこととなる。
「そんなことはよい。それより今,里が攻撃を受けておる。分裂して住民の回復を頼みたい。」
「了解しました!」
ポコポコポコポコ…………
カツユは更に何十体もの小さな分裂体となり,里のあちこちに向かっていく。
「一体はワシに付いておけ。もし住民を回復させるチャクラが足りなくなればワシのチャクラを持っていけばよい。」
「はい!」
柱間の命令を受け,カツユの小型の分裂体の一つが柱間の懐に潜り込んだ。
次に柱間は,状況を鑑みて自らの立ち回り方を素早く判断する。
「特に大きなチャクラを感じる戦場は二か所……一方には妙な性質のチャクラも混ざっておるな。……よし。」
~~~~~
地面に倒れこむ二人と,彼らに背を向ける男が一人。
最後の最後まで死力を尽くして抵抗を続けたサスケ・サイゾウの両名であったが,滝隠れ最強の暗殺者にはあと一歩届かなかった。
角都は体力の消耗を抑えるため,二人を放置して立ち去ろうと歩き出す。まずは危篤の柱間が眠っているであろう病院の捜索からだ。
「くそ……扉間様に任されておきながらこのザマとは情けねえ……。」
「まだ…だ……行かせねえ……この程度で終わる訳には……。」
サスケ,サイゾウ共に辛うじて意識は保っているものの,もはや這って動くことさえ不可能なほど弱っていた。
「その状態ならもう不可能だろうが,これ以上派手に騒ぎ立ててくれるな。俺の標的は火影ただ一人。ヤツにまみえるまでは隠密に行動せねばならん。」
角都が捨て台詞を吐いた,その時である。
「……!!?」
ズドン!!!
「なんだコイツは……!?」
角都の目の前に突如,巨大な人型の像が降り立った。
「次から次へと……今度は何だ。」
「あれは……!」
「まさか……っ」
サスケとサイゾウも,倒れた状態で辛うじてその巨人を見上げる。すると,驚く二人の背後から声が聞こえた。
「よくぞ頑張ってくれたな,サスケ,サイゾウ。」
その声を聞き,サスケとサイゾウに背を向けていた角都が振り向く。
「まさか……。」
「カツユ!」
「はい!」
その男の指示を受け,二匹のナメクジがそれぞれサスケとサイゾウにチャクラを供給する。
「カツユ様……!」
「ダメージが回復していく……。」
治療を受けたサスケとサイゾウはゆっくりと立ち上がり,後ろを振り返った。
その様子を見た角都も,驚きを隠せない。
「医療忍術を施す口寄せ獣だと……!?」
「火影様!なぜここに……!?」
「目をお覚ましになったのですか!?」
「うむ。ワシがいない間,心配と苦労をかけてすまなかったな。よくやってくれた。あとはワシに任せよ。」
驚く二人に対し,千手柱間が答える。
「我々も共に戦います!」
気力も体力も取り戻したサスケに対し,柱間は異なる指示を与えた。
「いや,ここはワシが受け持とう。そなた達は扉間の援護に向かってくれ。」
「扉間様の?」
「うむ。扉間も相当な強敵と戦っておる。そなた達の援護が必要だ。それに……」
そう言って柱間は角都に目を向ける。
「あやつはワシを探していたようだしの。ワシが相手をするまで止まるまい。こちらの心配は不要だ。」
「しかし……」
「行くぞ,サスケ。」
「サイゾウ……。」
柱間の身を心配するサスケに対し,サイゾウは柱間の指示に従うように催促する。
「火影様の戦いだ。俺たちがいたところで邪魔になるだけさ。急ぐぞ。」
「……分かった。火影様,どうかお気をつけて。」
そう言い残し,サスケはサイゾウと共にその場から立ち去った。
一方の角都は,そんな先ほどまで戦っていた二人のことなど目もくれず,柱間に集中している。彼にとっては,柱間以外の人間の生死などこの際どうでも良いのだ。
「貴様が千手柱間か。」
「いかにも。」
「探す手間が省けたな。」
満足そうにうなずく角都に対し,柱間は落ち着いた様子で話す。
「先に忠告しておく。早急に立ち去れ。向かってくるなら容赦はできぬ。だが,直ちにここから退去し,里に危害を加えぬのであれば命までは取らん。いかがする。」
しかし,もちろんそのような忠告に素直に従う角都ではない。
「フン,愚問だな。俺の目的は貴様の命,ただ一つ!」
ダッ!
柱間の言葉を一笑に付し,角都は硬化した拳で柱間に向かって殴りかかる。
「土遁・土……」ドカァッ!!!
「!!?」
しかしそれより早く,角都の背後にいた巨人像が角都を上から押し潰すように拳で殴りつけた。
木人の術――木遁から巨人を作り出す術であり,かつて柱間がうちはマダラと激突した際,マダラの完成体須佐能乎に対抗するために生み出された。
柱間の得意忍術の一つなだけあって,その威力は絶大である。
「ぐあ……」
角都は全身硬化で辛うじてガードし踏みとどまったものの,木人の体重を下から支えるような状態となり身動きが取れない。
そんな角都に対し,柱間は再び声をかける。
「先ほどまでサスケ,サイゾウと戦っておったのだろう。あやつらはタダでやられるほどヤワな忍ではない。お主にもかなりのダメージが蓄積しておるはずだ。今一度申す,早急に立ち去れ。さすれば命までは取らん。」
~~~~~
フッ!
「そこだ!」
「……!」
ドカッ!!
「くっ……!」
飛雷神で飛んだ扉間に,銀角の攻撃がクリーンヒットする。
金角同様,銀角も九尾のチャクラを開放し,その力をコントロールしていた。
扉間のチャクラが切れかかっていることも相まって,銀角は確実に「忍界最速」の動きをとらえ始めている。
(速い……もはやヤツの攻撃を避けることさえ困難になってきた。逆にこちらの攻撃は滅多に通らん。マズいな……。)
扉間の頭脳を以ってしても,九尾の圧倒的な力に対しては,もはや活路が見出せないでいた。
「動きが鈍く……なってるぜ,千手扉間……?もうチャクラも……限界らしいな……。ずいぶん手こずったが……今度こそ終わりだ……。」
扉間に向かって,ジリジリと距離を詰めていく銀角。
(ここまでか……!すまぬ兄者,里を……)
「くたばれ……!」
ビュッ!!
(……!?……このチャクラは……)
フッ!ドサッ!
「くっ……!」
扉間は最後の力を振り絞り,飛雷神で銀角の攻撃を辛うじて避ける。
もはや体力が残っていない扉間は,うまく着地することさえできず飛んだ先で倒れ込んだ。
「チッ……,まだ動けたか……。無駄な抵抗を……さっさと終わらせて……楽にしてやるというのに……。」
そう言って,再び倒れている扉間の元へ向かう銀角。
しかし扉間は,ほとんど動けない状態にあって勝利を確信していた。
「……いや,どうやら終わるのは貴様たちの方のようだ,金角,銀角。」
「……?……何を言い出すかと……思えば……,とんだハッタリだな……。」
銀角は扉間の言葉を気に留めず,再度九尾の尾による攻撃を繰り出す。
「今度こそくたばれ……!!」
ビュッ!!
グルルルルル…………ガシッ!!
「!?」
しかし突如,銀角の背後から木の幹が伸びたかと思うと,九尾化した銀角の全身に木が絡み付きその動きを拘束した。
扉間に向けて繰り出された九尾の尾も,扉間の目前,すんでのところで動きを止める。
「なんだこれは……!?」
銀角に絡み付いた木の正体は,長い鼻を持つ龍を象った,木の化け物であった。
木龍の術――木遁から龍を作り出す術であり,かつてうちはマダラによって木ノ葉が襲撃された際,マダラの引き連れる九尾に対抗するために生み出された。
そうした経緯にたがわず,尾獣のチャクラを強力に抑制・吸収する力を持っている。
「くそっ……,動けねえ……!それに,力が……!」
「銀角!」
突然現れた謎の化け物に拘束される弟を見て,金角はすぐさま救援に向かおうとする。
「金角……,俺のことはいい……!さっさと千手扉間に……とどめ刺しやがれ!」
しかし,
「……!?」
「どこいった!?」
ついさきほどまで扉間が倒れていた場所には,すでに誰もいなかった。
「後ろだ!金角!!」
「!?」
ズバッ!!
「ぐあっ!!」
「金角っ!!!」
金角が振り向くより早く,金角は背後に現れた扉間の剣によって斬りつけられる。
「ぐ……!なぜだてめえ……さっきまでフラフラだったはず……!」
金角が痛みに耐えながら振り返ると,扉間の足元には見慣れない青と白の奇妙な物体があった。
「助かったぞカツユ,感謝する。」
「扉間様!ご無事で!」
「兄者は?」
「はい,目をお覚ましになり,侵入してきた敵と戦っていらっしゃいます!」
「病み上がりだというのにまた無茶をしおって……いや,こたびはワシの不甲斐なさに責任があるな。」
「そのような……!どういった状況であれ,柱間様は常に里のために最前線に出られるお方でございます。」
「うむ……いずれにせよ,ワシのチャクラが戻った以上,せめてこの場はワシが片づける!」
後書き
敵が襲撃してきたとき、
住民を治療するのが五代目
敵と戦うのが三代目
両方やるのが初代
~千手柱間 vs 角都~
千手柱間
実 力 :★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
コンディション:★☆☆☆☆
モチベーション:★★★★★
ラ ッ キ ー:★☆☆☆☆
角都
実 力 :★★★★★
コンディション:★★★☆☆
モチベーション:★★★★★
ラ ッ キ ー:★★★★☆
※最大評価★5つ 一部例外アリ
※同じ人物でもその時々によって変動アリ
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