オレオレ詐欺に注意
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第一章
オレオレ詐欺に注意
梶井美代香は七十を超えている、夫の賢人とは四十年以上一緒にいる。二人共白髪で穏やかな顔であるが美代香は昔は長くしていた黒髪は今は短くしていてすっかり白くなっている。夫は眼鏡をかけていないが彼女はいつもかけている。
その彼女に電話がかかってきた、その電話は。
「お祖母ちゃん私よ」
「私?康代なの?」
「そう、康代よ」
若い女性の声であった。
「実は今困ってるの」
「どうしたの?」
「交通事故起こしてね」
「えっ、それは大変ね」
美代香は孫と思われる相手からの言葉に表情を変えて言った。
「大丈夫なの?」
「私は無事だけれど相手怪我させて」
「そうなの」
「その人の治療費払わないと駄目だから」
それでというのだ。
「今からお金振り込んで」
「どれだけなの?」
「二百万。いい?」
「わかったわ、何処に振り込んだらいいの?」
「口座番号はね」
相手はその番号を言ってきた。
「ここだから今すぐお願いね」
「わかったわ」
美代香は真剣な顔で頷いた、そして電話を切るとすぐに夫に事情を話した。
「だから今すぐにね」
「えっ、それはおかしいぞ」
夫は妻の話を聞いてすぐに言った。
「康代車の免許まだ持ってないぞ」
「そうだったの?」
「まだ仮免だぞ」
その段階だというのだ。
「あの娘の家に車はあってもな」
「それでもなのね」
「あの娘はまだ免許持っていないからな」
仮免の段階だというのだ。
「だからな」
「事故なんて起こしていないの」
「ああ、何ならここに康代呼んで話を聞くか」
「それじゃあね」
康代は二人の娘夫婦の長女で娘夫婦の家は二人の家から近い、そして今は休日だ。
それで康代にすぐに家に来てくれる様に言うと。
程なくして茶色にした髪の毛を伸ばしてセットにした面長で垂れ目でモデル並のスタイルの若い女性がズボン姿で来た。
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