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フェアリーテイルに最強のハンターがきたようです

作者:ブラバ
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第3章 閑話編
  第12話 収束

フェアリーテイルに帰還したメンバーは、アレンをギルドの医務室に運び、できうる限りの治療を行った。専属医師のポーリュシカに治療を頼んだことに加え、ウェンディの治癒魔法、そして、ポーリュシカに言われた「準備しろ」と言われたものを、フェアリーテイルのメンバーが、迅速にかつ確実に準備し、届けた。また、交流のある蛇姫の鱗や青い天馬も協力してくれたこともあり、アレンの身体の傷は、傷跡を多く残しながらも、確実に回復に向かっていた。
しかし、疲労面や精神面はどうすることもできず、ポーリュシカの手腕をもってしても、目を覚ますのは五分五分と言われてしまった。熟練の魔導士でも、生存1、死亡9と言わしめるほどの傷だったのだ。
既に、アレンが長い眠りについてから、10日が経過していた。最初の5日はギルド全体が治療のためと動き回っていたこともあり、暗い雰囲気を醸し出す暇もなかった。治療が6日目に入った時点で、「これ以上は何もできない。あとは安静にするしかない」というポーリュシカの言葉の後、フェアリーテイルは5日間、むずむずとした気持ちで、アレンが目を覚ますのを待っているといった状況であった。また、この10日間、食事を一切取れておらず、魔法薬による栄養補給と水分補給のみとなっていた。そのため、アレンの身体は少し筋肉量が落ちているように見えた。
そんな医務室に、ミラが入ってくる。アレンがいつ目を覚ましてもいいようにと、毎日、3食消化に良い粥程度ではあるが、食事を用意していた。食事を備え付けの小さなテーブルに置く。今日も変わらずに眠っているアレンの様子を見て、ミラは少し悲しい顔をする。
「アレン、そろそろ目を覚ましてもいいんじゃない?」
ミラがそう一言発するのと同時に、エルザが医務室に入ってきた。
「どうだ?アレンの様子は?」
そんなエルザの問いに、ミラは首を横に振る。
「…そうか」
エルザは一言そう答えると、食事を置いたテーブルとは違う、少し大きめのテーブルを見る。
そこには、アレンがアクノロギアとの戦闘で身に着けていた太刀、無明刀空諦とナルガ装備が置かれていた。
刀や防具に関しては、エルザとカグラであれば知見がある、ということで、血や泥を落とし、綺麗にしていたのだ。綺麗にしたからこそ、よりその損傷が見て取れた。太刀は刀身のちょうど真ん中からポッキリと折れており、ひび割れや刃こぼれも至る所に見て取れる。
防具は残っている部分の方が少ないといった印象であり、「これは元々防具でした」と言われなければ、防具とはわかないほどに損傷していた。そこかしこに傷があったり、破れていたり、ぽっかりと穴が開いたりといった状態であった。
太刀も防具も、エルザやカグラが持つものとは天と地ほどの差の性能を有していた。それこそ、触っただけで自分たちでは扱えないとわかるほどの代物であった。それだけの装備が、再起不能と言えるほどにまで損傷している。一体どれほどの戦闘だったのか…。此度の戦闘で、アレンがどれほどの苦しみ、痛みを伴ったのか、推し量るに余りあるレベルであった。
そんなエルザの心境を察するかのように、ミラもぐっと拳を握りしめる。
アレンが帰ってきたら、今度こそ、何か力になってあげたい。そう思っていたのに、結局何もしてあげることができなかった。それどころか、また守られてしまった。それも、死の淵をさ迷うような重傷を負ってまで。天狼島から船で脱出したとき、ラクサスが悲痛のうちに語った言葉が、今もミラの心に刺さっている。いや、というよりも、あの場にいて、且つ昔からアレンのことを知っているもので、あの言葉が心に響かなかったものはいないだろう。
エルザも、ミラも互いに思いが同じであることが、逆に二人に会話という行為を弾ませなかった。
そんな様子で二人が黙りこくっていると、ウルティアとカグラが医務室に入ってくる。
「はあ、参ったわ…」
ミラとエルザの姿を見ると、ウルティアが疲れた様子で言葉を発した。
「どうしたの?」
ミラが短く質問をする。
「『アレンに会いたい』って連中が今日もわんさか、マグノリアの連中に、女連中、加えて王国からの使者までくる始末…まだアレンは目を覚まさないってのに…」
ウルティアがため息をつきながら、ミラの横に座る。
「…何より腹立たしいのは、評議院の連中が来ること」
カグラが怒りを込めて言葉を放つ。
「今日も来たのね…」
ミラは呆れた様子で答えた。
評議院が4年前、アレンを巻き込む形でエーテリオンを打ち込んだことは、皆様々な思いがあれど、責めてもしょうがない…と割り切っていた者も多かった。しかし、今回の一件で、評議院に反省の色なしとフェアリーテイル全員から見なされてしまい、当たりが強くなっているのだ。
ナツなんかは、いつ手が出てもおかしくない状況であり、評議院が来るたびに、皆ひやひやものである。
「だが、毎日、日によっては数回、足蹴もなく来るということは、申し訳ないという気持ちがあるのではないか?」
エルザがそう擁護すると、
「どうだか…。謝罪して、体裁だけ整えておこうって腹じゃないの?実際、毎日来ましたって証拠だけ残して…、本心じゃどう思ってんだか」
ウルティアがそう悪態をついていると、思わぬ声が4人の耳に入る。
「…まあそういってやるな、奴らにも、奴らの正義がある」
その声に、4人は目を見開いて、声のする方へと視線を向ける。
「っ!アレン!!目を覚ましたの⁉」
ミラが目尻に涙を浮かべながら、声を掛ける。
ウルティア、カグラ、エルザも同じように、覗き込むようにしてアレンを見つめる。
「しっかし、病人の前で愚痴に悪口とは、とんだ悪女だな…」
アレンは4人を見つめながら、軽口を叩く。
そんなアレンの様子に安心しきった4人は、互いに笑いあい、落ち着いた雰囲気で、アレンの胸に腹に、拳を振り下ろした。

評議院。
その最高責任者であり、評議院における決定権をもっている上級魔導士が、一つの会議室に集まっていた。
「まさか、本当にアクノロギアを倒してしまうとはな…」
「それも、エーテリオンが投下される前に…」
議長のクロムフォードの言葉に、ミケロが答える。
「4年前の戦いも、我らが手出しをしなければ、アレンがアクノロギアを下し、事なきを得ていたのではないか?」
オーグの言葉に、皆が黙りこける。
「過去の失態をいつまでも言っていても仕方ありません。我らが為すこと、まずは我らはアレン・イーグルとフェアリーテイルに謝罪をするべきでは?」
「謝罪だと!?我らは大陸の、王国の平和のために先の決断をしたにすぎん。奴らが木を見て森を見ていないだけの話」
ベルノの言葉に、ミケロが激高したように答える。
「ミケロの言うことを咎めるつもりはない。我らの目的は大陸の秩序の安定。そこに犠牲はつきものだ。だが、同じくベルノの言葉も間違ってはいない。少なくとも表面上の謝罪は必要であろう。そして、アレン・イーグルに対して感謝の意を示す必要もある。今後も、我々はアレン・イーグルの力を借りねばならん。三天黒龍はまだあと2体もおるのだから」
クロムフォードは威厳のある声で答える。
「まだ目を覚まさぬということであるが、とりあえずは評議員数名を派遣し、様子を伺うこととするのはどうかね?評議院側が気にかけている、という意思表示にもなろう」
ホッグが一つの提案をしてくる。
「なるほど、謝罪の意を表しながら、アレンの意識が戻り次第、評議院に連行という形で此度の件の聴取を取ろうということか」
ミケロがホッグの言葉を解釈し話すが、ホッグの思いとは右斜め上の解釈をしていた。
「基本的には、そのような形で問題はなかろう。アクノロギアとの戦闘とはいえ、ハルジオンなどに被害を出したことは事実。アレン連行に関してはフェアリーテイル以外には秘匿とし、拘束期間も1.2日程度としておけばさして問題にもなかろう」
「…アクノロギアを下し、大陸を救った者への対応とは思えませんが」
クロムフォードの提案に、ベルノが低く唸る声で異議を唱える。
「三天黒龍を倒すために協力を惜しまないといったのは彼だ。逮捕するわけではないのだから、そう深く考えなくてもよいであろう。フェアリーテイルを尊重し、評議院側が出向いて話を聞くという手段もあるが、此度のこの件は世界の秩序に直接関わる。若造どもを派遣し、話を又聞きというのは賛成できかねる。我ら全員が赴くわけにもいかんだろう」
クロムフォードの意見は最もだ、と考えたベルノは言葉を詰まらせる。
「フェアリーテイルと深い親交があったヤジマが引退したのは痛いな。こうなると予想できていれば、無理やりにでも辞めさせなかったものを…」
評議院の解釈はあながち間違っておらず、アレンがこの対応に関して別段気にすることはないだろう。だが、彼らが思っている以上に、フェアリーテイルだけでなく他の組織や集団の怒りに触れてしまうこととなるが、それはもう少し先の話。

アレンの意識の回復は、即座にフェアリーテイルのギルドメンバーや、他ギルド含め、フィオーレ王国全体に瞬く間に情報が広がった。フェアリーテイル内では、それこそ宴のような騒ぎであり、泣いて喜ぶもの、これでもかと笑って喜ぶものなど、もはや仕事どころではなかった。そんなどんちゃん騒ぎの原因とも言えるアレンだが、当の本人は、まだ一人でベットから動くのが難しい状態でいる。別にずっと寝ていたいという意味ではなく、左腕と右足が特に動かしずらいのだ。
目覚めてすぐ、ポーリュシカとウェンディが医務室にて、アレンの軽い問診を行っていた。さほど大きな医務室ではなかったが、中には、先の3人に加え、マカロフ、ラクサス、ナツ、グレイ、ジェラール、リオン、ガジル、エルザ、ミラ、カグラ、ウルティア、カナ、ルーシィ、ウル、そして、ハッピーとシャルル、リリーもいた。
余談だが、ウェンディはポーリュシカが匂いと雰囲気が天竜グランディーネと同じことに気付き、一悶着あったのは言うまでもない。
「そうだね…とりあえず、もう命の心配はしなくても大丈夫だ」
ポーリュシカの言葉に、その場にいたもの全員がほっとしたような表情を浮かべた。
「ただしだ…」
ポーリュシカが念を押すように言葉を続ける。
「1週間は、絶対安静だよ。内臓も筋肉も骨も、全部がダメージや疲労でやられてる。特に、左腕と右足、ここに来た時には骨が何カ所も折れ、あまつさえ骨が飛び出してる状況だったんだ。固定しているとはいえ、無理に動かすんじゃないよ」
ポーリュシカの言葉に、皆が落ち込んだ様子を見せた。
「…そうか。まあ、これまで戦い続けてきたんだ。ちょっと、ゆっくりするよ」
アレンは明るく振舞う。
「…アレン」
ジェラールが言いづらそうに声を掛ける。
「なんでお前が落ち込んでんだよ、ジェラール」
アレンはケラケラと笑って見せるが、それでもジェラール含め、皆の表情は暗い。
「…俺の今の状況が、自分たちのせいだと思ってんなら、お門違いだぜ。俺はアクノロギアと戦って傷ついたんだ。お前らのせいじゃない。…そんなことより、お前らに話しておかなければならないことがある」
アレンはそんな雰囲気を感じ取り、真剣な声で皆に語り掛ける。
「特に、ナツ、ガジル、ラクサス、ウェンディ…」
アレンは、4人を名指しで呼ぶ。呼ばれた4人は目を見開き、アレンの言葉を待っていた。
「…アクノロギアは…生きている」
アレンの言葉に、皆が衝撃を受ける。
「な、なにいってんだ…あいつはアレンが…それに、大穴に落ちて死んだんだろう…」
ジェラールが驚きながら答える。
4人は、いやフェアリーテイルのメンバーは魔水晶映像によって、戦いの一部、アレンとアクノロギアの最後の衝突時の映像を、見せてもらっていたのだ。その最後の激突が、凄まじいものであったことは言うまでもなく、それについても驚かされた。だからこそ、アレンの先の言葉が信じられなかった。
「…おいつは、俺では、勝てない」
アレンは、目を尖らせながら答える。奥歯を噛みしめ、表情を曇らせる。
アレンの言葉に驚きつつも、そんな様子に、皆がさらに落ち込んだ雰囲気になるが、ラクサスが怒ったようにアレンの胸倉に掴みかかる。
「っ!何弱気なこと言ってんだ、アレン!お前はアクノロギアに勝ったんだよ!最後に立っていたのはお前だ!ここにいる奴ら全員が見てる!」
「ちょ、ちょっと…ラクサス…」
ウルティアがそれを制するように言葉を掛ける。
「…ああ、そうなの?いや、言葉が悪かった。俺はアクノロギアを倒すことができても、殺すことができないんだ」
アレンの言葉に、皆が考え込むような表情を見せる。
「それはどういうことだ?」
エルザが疑問をぶつける。
「あいつは、首を切ろうが頭を割ろうが、魂さえあれば何度でも復活する。俺の力では、奴の身体に傷をつけることができても、魂に傷をつけることができない。」
その言葉は、アレンではアクノロギアを滅することが不可能であることを示唆していた。
「じゃ、じゃあ、あのドラゴンは…何度でも…」
ミラが今にも倒れそうな様子で言葉を続ける。
「いや、そうとも限らない。俺ですら攻撃が届かない、アクノロギアの魂。その魂に攻撃し傷つけ、滅する力を持った者たちがいるんだ」
その言葉に皆が大きく目を見開く。そう、心当たりがあったからだ。
「竜の力…滅竜魔導士、ドラゴンスレイヤーだけが、アクノロギアを滅することのできる、唯一の力だ」
「お、俺たちが…」
ナツの一言で、他の滅竜魔導士も、心底驚いた様子を見せる。
「そう、つまり…アクノロギアを倒せるのは…お前たちだけだ。」
アレンは力強く、そう答えた。

フィオーレ王国 首都クロッカス 玉座の間。
天狼島におけるアレンとアクノロギア戦いは、その余波が強く王国に届いていたこともあり、王国中がその動向を見守っていた。もしアレンが敗れれば、アクノロギアの魔の手は、この王国に向くという予測が立てられていた。そのため、非常事態宣言を発令し、臨戦態勢を整えていたのだ。そんな中で、アレンがアクノロギアを下し、アクノロギアが王国に直接攻撃を齎すことがないと知った時は、この王宮にも歓声が上がったものである。フェアリーテイルがアレン救出後、暫く意識不明の状態であったが、今しがた、アレンが意識を回復したとの報告を受け、玉座に間にいる皆が表情を緩めていた。
「目を、お覚ましになられたのですねっ!」
ヒスイ王女が明るい声で答える。
「あのアクノロギアを下すとは、なんという強さと有志よ!」
アルカディオスが大声で称賛の言葉を発する。
天災ともいえる、黒竜の討伐、しかも単騎で成し遂げるなど、普通であればありえないことなのだ。そのありえないことをやってのけたアレンは、英雄とまで呼ばれつつある。
「目を覚ますことを信じ、英雄感謝祭を準備しておいてよかったな、ヒスイ」
国王が嬉しそうに言葉を発する。
「アクノロギアを討伐し、この国を救って頂いたアレン様、フェアリーテイルの皆さまに恩返しをしなければなりませんからねっ」
ヒスイ王女は、無邪気な子どものように手を叩いて言った。
「しかし、こう、なんとかしてアレン殿を王国軍にスカウトできないものか…」
アルカディオスが神妙な顔で呟く。
「もしそうなれば、強大な戦力となりますな」
国防大臣のダートンが興奮したように答える。
「気持ちはわかりますが、無理強いはいけませんよ。彼は、フェリーテイルの魔導士なのですから」
ヒスイは屈託のない笑顔でそう答えた。

アレンが目を覚まして1週間が経過した。まずアレンが求めたのが、入浴であった。2週間以上身体を拭くのみで、入浴していなかったため、不快感は否めず、シャワーだけでも浴びたいと考えたのだ。だが、目覚めて2日目ですら、アレンの身体は、まだ日常生活を送るのに些少の困難があり、通常歩行することも難しかった。そんな様子を見かね、ミラが「私が一緒にシャワーに入ってあげる」と発したことで、その場にいたエルザやカグラを焚きつけてしまい、第一次シャワー大戦が発生した。まあ、そこにウルなどがいなかったのは不幸中の幸いであった。「私の方が優しくできる」だの、「私なら隅々まで洗ってあげられる」などと壮絶な戦いを繰り広げていたが、それはある男の乱入によって収束にむかった。
「俺がついてってやるよ」
それは、ラクサスであった。ラクサスは固まっている3人を横目に、アレンに肩を貸し、ベットから降ろして立ち上がる。暫くそんな様子を見守っていた3人であったが、すぐに理性を取り戻し、ラクサスを引き留める。
「おい、ラクサス!お前は関係ないだろう」
「引っ込んでて」
「これは私たちの話よ」
エルザ、カグラ、ミラがラクサスに問い詰めるように言葉を掛ける。もしこの言葉を浴びせられたのが、ナツやグレイであったなら、「すみませーん」で終わり、アレンであれば「あ、はい」と決着がついていただろう。他のメンバーに関しても、似たような言葉を返していたに違いない。だが、ことこの場にいるのはラクサスであり、そんな3人の威圧など、全くものともしないのであった。
「いい加減きめーんだよ、お前ら。アレンがひいてんのがわかんねーのか?」
ラクサスは、呆れたように口を開いた。
アレンは、「え、俺は別にー」と言った表情であったが、その言葉は3人の心にグッサリと刺さり、表情だけでなく、身体全体がまるで真っ白に燃え尽きたようになり、その場で棒立ちするに至った。
ラクサスはそんな3人を尻目に、アレンを支えながら医務室を後にした。
3人は暫くそんな風にして呆然としていたため、少しして医務室を訪れたジェラールとリオンが「おい、どうしたんだ⁉」と心配したのは言うまでもない。
さて、そんなことがありながらも、ギルドからほど近いアレン宅にて、ラクサスはアレンのシャワーの手伝いをすることになる。といっても、アレンは全く身体を動かせないわけではなく、立ってシャワーを浴びるぐらいなら何とか自分でできる程度には回復していた。そのため、ラクサスがやったことと言えば、歩行を手伝う程度であった。決してラクサスがウホッというわけではないので、それはここで言及しておきたい。ラクサスは、ただでさえアクノロギアとの戦いで疲弊しているアレンに、それ以上の疲弊(わがまま女達の猛攻撃)をアレンに与えないようにと配慮していたにすぎない。だから決してラクサスがウホッというわけではないのだ(大事なことなので2回言った)。ラクサスは、アレンが風呂場に入ったあと、扉を閉め、その前で待機していた。
「なあ、ラクサス、さすがにあれは言いすぎなんじゃねー」
アレンは先ほどの言葉を思い出し、ラクサスに声を掛けながら、頭からシャワーを浴びる。
「あんたが言わなすぎんだよ。あいつらには、あれくらい言わないとわからん」
「そうかー?なんか俺にはさらにややこしいことになりそうな気がするんだが」
ラクサスの言葉に、アレンはそれとなく答えていく。
「あんたは、あいつらがガキの頃の姿しか見てねーから、そんなことが言えんだよ。あいつらの奔放っぷりは凄まじい。特に、お前がらみだとな」
「それ、フェアリーテイルで内戦巻き起こしたお前が言う?」
ラクサスの言葉に、ラクサスが破門された理由を教えてもらったいたアレンが、強烈な一撃を喰らわせる。
「…それを言うな」
ラクサスがちっと短く答える。
「はは、わりい。まあ、これは俺の憶測なんだが、俺が7年もギルドを開けず、4年も死んだと思われてなければ、お前もあんなことしなかったんじゃねーか?」
「………」
アレンの言葉に、ラクサスは特に答えようとはしなかった。アレンもラクサスの気持ちをなんとなく察し、特に言葉を続けなかった。暫くシャワーの音だけが2人の間に流れていたが、
「…なあ、アレン」
「ん?」
「あんた、アクノロギアを倒せるのは俺たちだけって言ったよな」
ラクサスは小さく、だが真剣に言葉を発した。
「ああ、言ったな」
「だが、わかってるだろ?俺たちじゃ、戦うことすらできない」
「…そうだな」
アレンは短く答える。
「だからよ、俺を鍛えてくれねーか?もちろん、全快したらの話だ」
「なんだよ、妙に真剣な口調だから何かと思えば…」
アレンは、ははっと笑いながらケラケラと言葉を放った。
「あのなー、俺は本気で…」
ラクサスは少し怒りを含めて答えようとしたが、それをアレンが遮る。
「言われなくても、そのつもりだ。ドラゴンスレイヤーの4人だけじゃない。希望する者は皆、鍛えるつもりだ。それに、少なくとも…」
「…少なくとも?」
ラクサスはアレンの言葉に一瞬呆気にとられるが、言葉の先を聞こうと復唱する。
「ドラゴンスレイヤーの4人は、最低でもアクノロギアに攻撃が通るくらいには強くなってもらう。死に物狂いでな」
アレンは語尾にドスのある声を含み、言葉を発した。そんなアレンの言葉に、ラクサスは目を見開くが、すぐに笑ってこう言った。
「上等だ…」
ラクサスがやる気に満ち溢れているところで、アレンはあることに気付く。
「…っていうか、お前…破門中じゃなかったっけ?」
「あっ…」
その後、しばらくの間、静寂が2人を包み込んだ。
 
 

 
後書き
今回を目を通していただき、ありがとうございます。
評議院の印象悪すぎるかなー、とも思いましたが、汚れ役を引き受けていただきました(笑)。
引き続き、よろしくお願いいたします。 
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