フェアリーテイルに最強のハンターがきたようです
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第1章 始動編
第1話 異世界
その男の服装は、緑を基調とし、要所に黄色い装飾が施されている。どこか刺々しい印象を受けるその防具は、雷狼竜ジンオウガと呼ばれる竜の素材によって作られるものである。普段は頭に兜を装備しているのだが、今は見当たらない20代半ばと若いものの、年齢には似つかない、精悍な顔つきをしていた。
「ここは…どこだ?」
男は周りを見回しながら、驚いていた。
男の名はアレン・イーグル。
カムラの里に在籍するモンスターハンターで、類を見ない強者として、若くしてマスタークラスへと上り詰めた男である。
つい先ほど、モンスター退治のクエストを終え、自宅にて疲れを癒すべく就寝したばかりであった。
「ここは…森か?」
そう呟きながら、アレンは散策を始めるが、進めど木々が生い茂るだけであった。
そうしているうちに、どこからともなく声が聞こえた。
「目が覚めたのですね」
「誰だ!?」
アレンはその声に答えるように叫んだ。
「私は世界を見守る女神。残念ですが、私の姿は見えません。そして、あなたをこの森に、世界に呼んだのは私です」
「俺を呼んだ?どうゆうことだ?」
姿は見えないと言われたものの、声の在りかを探そうと、アレンは周囲を見渡しながら答えた。
「あなたに、倒してほしい存在がいるのです」
「倒してほしい存在?」
「三天黒龍と言われる、黒竜アクノロギア、黒龍アルバトリオン、煌黒龍ミラボレアスです」
アレンは目を見開いた。
「黒龍に、煌黒龍だと…?まさか、存在するのか」
G級ハンターとも言えど、勝てるかわからない、いわば天災というべき存在。
そんな黒龍と煌黒龍を倒してほしい、それはつまり、その存在がいることを示唆していたからだ。
「だが、黒竜アクノロギアとは聞いたことのない竜だな…」
3体の竜の名を聞いたアレンは、1体だけ聞いたことのない竜の名を女神に問うた。
「アクノロギアとは、この世界に存在する、最強の竜の名です。その竜が、黒龍と煌黒龍の復活を目論んでおります」
「復活だと?じゃあ、今はまだこの世界においてはいない、ということだな?なら、アクノロギアとかいうやつを倒せば、解決するということか」
「はい。ですが、アクノロギアの力は絶大です。黒龍や煌黒龍に比べれば少し劣りますが、人間にとっては差異はないでしょう」
女神の発言から、アクノロギアというやつがリオレウスやティガレックスといったレベルではないことを理解する。
「話は分かった。それで、その話に拒否権はないんだろう?」
「はい、と言いたいところですが、あなたが先の龍と戦うことを強制することはできません。ですが、あなたに倒してもらう他、この世界に平穏が訪れることはありません。この世界に住まう人間、生物、その全てが死滅し、世界は破滅するでしょう」
アレンは驚き、そして察したように口を開いた。
「そこまで言われたら、やるしかないな…。それに、強い龍と戦えるというのも悪くない。その話し、引き受けよう」
「感謝いたします。この世界は、魔法の世界となります。その点も踏まえて、あなたに、二つの力を授けましょう。一つはあなたがこれまで手に入れた武器と防具を自由に取り出せる機能、魔法名を『ザ・ナイト』。もちろん、アイテムも取り出せるようにいたしましょう。もう一つは…そうですね、ここで説明してもよいのですが、私の声が届かなくなったその時、力の正体と使い方を自ずと理解できるはずですので、ここでは割愛させていただきます」
新たな力という、なんとも心躍る言葉に、アレンは笑みを浮かべた。
「それはとてもありがたいことだが、あんたの頼みを達成したら、俺は元の世界に帰れるのか?」
「あなたがこの世界で生き、そして3匹の龍を倒した後、それでも帰りたいと願うのであれば、その願い、お引き受けいたしましょう」
女神は、含むような言い方で答えた。
「わかった」
「では、あなたのご武運をお祈りしております。次にあなたに私の声が届くときは、黒龍達を倒した後であることを願っております」
そう言い残した後、女神の声が聞こえることはなった。と同時に、先ほど女神が言っていた通り、2つの力の使い方を一瞬で理解できた。
「どういう仕組みか知らないが、ありがたいな。それに、さっき説明してくれなかったもう一つの力…なるほど、これはいいな」
アレンは力を噛みしめるように言葉を発した。その直後、突如緊張が走った。
これは大型のモンスターに遭遇した際に感じるプレッシャーのようなものである。
「ガアアアアアアアアァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
凄まじい轟音とともに、耳を覆いたくなるような咆哮が響き渡った。
その声に空間が震え、地震でも起きたのかのような振動が島を走る。本来であれば間違いなく気絶するほどの威圧。しかしアレンは臆することなくその咆哮のもとへと足を向けた。
「黒い竜…まさか、こいつが…」
アレンは竜を見据える。だが、その竜に見覚えはなかった。初めて見る黒い竜の姿に多少の驚きはあったが、すぐに一つの思いが生まれた。
「こいつが…黒竜アクノロギアなのか…」
女神の情報と、自身の直感でそれが先の黒竜の一角であることを理解した。
アレンは、自分をもってして、戦えばただでは済まないと思わせるこの竜こそ、世界に破滅を齎さんとする竜であると確信した。
すると黒竜はアレンに気付き、視線を向けた。竜にとって人間など恐れるに足りないものである。それは『竜の王』であり、他者を寄せ付けない圧倒的な力をもつ黒竜にとって当然のことである。
だが、目の前の男は竜の王である自分から見ても、弱者とは思えなかった。それどころか、自分すらも超える力を持つものだと感じた。
「貴様は何者だ…」
「へえ、しゃべれるのか…だが、こっちの質問が先だ。お前がアクノロギアか?」
アレンの言葉に、アクロノギアの動きが止まる。
「我を知っているのか?」
「ああ。まあ、知ったのは今さっきだけどな。俺はアレン、アレン・イーグル」
「アレン…貴様の力は危険だ。我を脅かす力を秘めている」
アクノロギアは、威嚇するように翼を広げる。
「お前、ミラボレアスとアルバトリオンを復活させて何をする気だ?」
その瞬間、アクノロギアの気配が変わるのを察知した。
「…貴様、そのことをどこで知った?」
アレンはニヤッと笑った。そうやら、あの女神の言葉は本当だったようだ。
「さあね、俺に勝てたら、教えてやるよ」
なぜ我の野望を知っている?黒竜は少なからず恐怖を感じた。この男は、存在してはいけない。この男は生かしておいては危険だ。確実にここで屠らなければならないと。
その時アレンは電流が走ったような感覚を覚えた。魔法というものの感覚を感じた。
「(魔法が使える!)」
そう感じたアレンは右手に意識を集中した。すると、一つの大きな太刀と呼ばれる武器が出現した。
黒刀【終の型】。
切れ味に特化した太刀で、あらゆるものを切り裂く強力な刀である。その刀を見てアレンはニヤリと笑みを浮かべて、刀を背に背負い竜に向かって駆け出した。
向かってくるアレンに対し、黒竜も体勢を整え、アレン身体を潰そうと腕を振り下ろした。
「ドカアアアアアアアアアァァァァァァァァァ!!!!」
竜の一撃は地面をえぐり、木々を吹き飛ばし、アレンを押しつぶしたかに見えたその一撃は島を割らんばかりの威力を誇っていた。
しかし、アレンは様々なモンスターとの戦闘経験から相手の攻撃場所を予測し、事前に回避、そして背に背負う太刀を引き抜き、黒竜に向かって勢いよく振り下ろした。すると、「ブシャアアアア」と血吹雪をあげ、黒竜の体を切り裂いた。
「ゴアアアアアアアァァァァァァァァァァァァ!!!」
竜は予想だにしない一撃に、悲鳴をあげるのと同時に、恐怖を覚えた。
「どうした?たった一撃食らっただけだろう?俺をそこらの人間と一緒にするなよ?おれはモンスターハンター…お前を狩るものだ!」
黒龍から少し離れた位置に控えていたアレンは、そう言って口元に笑みを浮かべた。
「…滅竜魔導士でもない人間が我に傷をつけるとは…貴様は危険!危険!!危険だー!!!」
黒竜にとってそれは、存外に油断をしていれば死ぬぞと、そう言われたように感じた。
「ガガアアアアアアアアァァァァァァァァァァ!!」
黒龍は怒りを覚え、は全身から圧倒的な力を発しながら、大きく咆哮をし、再度アレンへと身を向かわせる。
「こい!!格の違いを教えてやる!!」
そう言ってアレンも、黒竜に向かって駆け出し、太刀を振り下ろした。
そこからの戦いは、まるで災害のようであった。黒竜の一撃で島は割れ、ブレスによってあらゆるものが吹き飛ばされていく。
アレンは黒竜の直撃を避け太刀をふるう。人間とは思えないほど膂力をもって、大気を切り裂き、地面を切り刻むその姿は、まさに怪物であった。
互いに攻撃を喰らい喰らわせ、傷を重ねていく。竜の体には多くの切り傷があり、そこから赤い血が流れている。黒竜の力を知っているものが見たら、驚愕することは間違いないほどに。
アレンも「これほどの傷を負ったのはいつぶりかな…」、と心の中で呟き、限界に近い疲労が溜まっていた。戦いの最中に、太刀と同じ要領で回復薬等の道具を出せることはありがたかった。しかし、取り出すたびに魔力を消費することに気付き、最低限の回復のみにとどめていた。そのため、体の至る所が痛み、身にまとっていた強固なジンオウガ装備も見る影もないほどに損傷していた。
激闘は終わりを迎えようとしていた。
何度目になるか分からない衝突。竜はその巨体と翼をいかし、アレンを押しつぶさんとする。
それをアレンは目にも止まらぬ速さで避けて、刀を振り抜き、突き、切り上げる。そこで大きく黒竜は怯んだ。
アレンはそこを好機とみて、残り僅かな力を振り絞り、刀を大きく振るった。それは気刃大回転斬りとよばれる技である。アレンは確かな手応えとともに黒竜に太刀を浴びせた。これで終わり、そう思った。
だが、黒竜はそれでも倒れず、僅かな体力を用いてブレスを放った。
それを見抜いたアレンは避けようとした。しかし、身体は限界を迎えていた。
直前の気刃大回転斬りで力を使い切ったため、避けるだけの体力がなかった。
迫ってくるブレスを見てアレンは「クソッ!!」と悔し気に叫びながらブレスを受けた。この戦いにおいて初めてまともに攻撃を喰らう。アレンの強靭な肉体を持っても一撃でダウンさせる程の威力を持った攻撃であった。ブレスを受けたアレンはその頑丈さで、身体が吹き飛びはしなかったものの、遥か彼方まで吹き飛ばされていった。それを見届けた黒竜もまた、力を使い果たしその場に倒れこむのであった。
吹き飛ばされたアレンは、海へと投げ出され、漂流することとなった。
楽園の塔。
それは闇の魔導士ゼレフを生き返らせることを目的とした、海にたたずむ建造物である。
そこでは、誘拐されてきた者たちが奴隷のように、毎日厳しい労働を強いられている。
アレンは、この塔に血まみれで漂着した。その後、漂着したアレンを見つけた監視員が、アレンを連れて、一つの牢に入れた。
元々牢に入っていたロブ、ジェラール、エルザ、シモン、ミリアーナは、アレンのあまりの傷の深さに驚いていたが、できうる限りの治療を行った。
アレンが寝ている間、監視員が「脱獄を図ったものがいる」と言い、エルザを連行していった。エルザが戻ってきたとき、なんと片目を潰されていたのだ。皆が悲しみと怒りに声を上げていると、回復が見込めないほどの傷であったアレンは、異常なタフさと回復力で目を覚ます。
アレンは換装の魔法で古の秘薬を取り出し、エルザに呑ませた。すると、驚いたことに、エルザの目が治ったのだ。アレンはお礼を言うエルザに対して、頭を撫でてあやす。エルザは顔を赤らめて恥ずかしがっていた。
その後、治療をしてくれたお礼をしつつ、この世界とこの場所について説明してもらった。その際に、皆の名前を聞いたのだが、「私はただのエルザ」と言ったことで、アレンが、「エルザの綺麗な髪の色を取って、「エルザ・スカーレット」と名付けると、エルザは髪を撫でながら、嬉しそうにしていた。
そんな風にしていると、騒ぎを聞きつけた監視員が罰として、エルザを殺そうと剣を振るった。アレンは片手剣を換装し、それを防ぐと監視員を切り倒す。
アレンは皆に問うた「このままここにいていいのか」、すると、皆が「自由になりたい」というので、アレンは皆を連れて脱獄を図った。
エルザ達は海岸にある監視員の船を奪還するため、アレンはすべての牢の解放と、監視員の殲滅のため、別行動をとった。
エルザ達は無事に楽園の塔を脱出し、船に乗り込む。アレンが戻ってこないことに不安を抱いていたが、暫くすると、楽園の塔の一部が崩壊し、アレンが船に飛び乗ってきた。
アレンの無事を見たエルザは、思わずアレンを抱きしめる。アレンは、そんなエルザの頭を撫でる。少しして、エルザは自分のやっていることが非常に恥ずかしいことであると理解し、バッとアレンから離れる。
そうして、アレンやエルザ達は楽園の塔を脱出し、陸を目指して船を進めた。
2隻の船は楽園の塔から近隣の島を目標に進んでいた。そのうちの一つアレンが乗る船。
元奴隷たちはボロボロの服を着ていたため、アレンがインナーを出し着替えさせていた。鎧の下に着るものなのでかなり薄手のものだが、きれいなものを着れるとあって、喜んでいた。
ある程度落ち着いてきたところで、今後の事について話し合った。
船の中には、監視員が所属していたと思われる教団のお金がたくさん積んであった。それを皆で分配して、それぞれが思うように生きていこうと声を掛けた。
そして、アレンの勇士を見て、力になりたいと言ってきた男たちには、幼い子供や不安なものと一緒に行動し、手助けをしてあげて欲しいとお願いした。
そうして船が進んでいると、エルザとジェラールが声を掛けてきた。その後ろにはロブという男もいた。どうやら、ロブは元フェアリーテイルの魔導士であり、この2人がフェアリーテイルに入りたいと言っていることから、2人をフェアリーテイルに連れて行ってくれないかとお願いに来たのだ。
アレンは、少し迷ったが、ギルドに送るだけならと思い、承諾した。それを聞き、2人はとてもうれしそうにしていた。
暫くすると、船は陸についた。皆の行動はそのまま船に乗って移動する者、陸を歩くものなどそれぞれであった。アレンはジェラールとエルザを連れて、歩いていくことにした。ロブは、幼い子供たちが自立するまで面倒を見るということで、別行動となった。落ち着き次第、また連絡を取ろうと約束し、3人はフェアリーテイルへ向け、歩み始めた。
3人は様々なことを話しながら旅をしていた。ジェラールがアレンの強さの秘訣を聞いたり、エルザがアレンの好きな女性のタイプを聞いたりして、仲を深めていった。
ジェラールの質問には、数多のモンスター、竜を倒してきたことと、その素材を使って様々な武器や防具を作ったからなどと答えると、目をキラキラさせながら話を聞いていた。エルザの質問には、正義感のある、強い大人な女性と答える。それを聞くと、小さく何度も復唱する。「私もきっと…」と顔を赤くしながら俯いていた。
また、アレンは大の子ども好きであり、2を肩車したり、抱きかかえたりして触れ合いながら歩いていた。ジェラールは尊敬からくる嬉しさで、エルザは恋心からくる嬉しさと恥ずかしさで顔を赤らめたりしていた。
加えて、2人が「強くなりたい」というので、アレンが簡単な修行をつけたり、時折遭遇する盗賊やモンスターと戦ったりと、エルザとジェラールはこの短期間でも驚くほどに成長していた。
そうしていると、ある時、2人は魔法が習得するにいたった。エルザはアレンのことを考えていたこともあり、アレンと同じザ・ナイトと呼ばれる魔法が使えるようになった。剣や鎧を換装する魔法で、アレンが「おー、俺と同じじゃないか!」というと、心の底から大喜びしていた。
ジェラールは天体魔法を使うようになった。途中、立ち寄った小さな村で読ませてもらった文献に載っていたものだ。アレンの圧倒的な剣のスピードや破壊力にあこがれたジェラールは、この魔法でいつかアレンのような強者になると誓った。
そうして3人は進んでいき、フェアリーテイルのある街、マグノリアに到着した。
マグノリアはとても賑やかな街であり、3人はそんな賑やかな街に驚きつつ、フェアリーテイルを目指した。フェアリーテイルに入ると、まず最初に目に入ったのは喧嘩であった。騒がしいギルドであり、アレンは「活気があっていいな」と言葉を漏らした。
アレンはそんな2人を見て、ある老人に声を掛ける。どうやらその老人がマスターであり、名をマカロフというらしい。アレンはロブのことも伝えつつ、これまでの経緯を話す。マカロフは驚いた様子を見せていたが、エルザとジェラールの加入を認めてくれた。
アレンは役目を終えたと言わんばかりに、エルザとジェラールに「じゃあな」というが、エルザもジェラールもアレンの服を掴み、泣きそうな顔で「行かないで…」と呟く。アレンはそんな2人に困ったようにしていたが、マカロフが「お主もギルドに入ったうえで、旅をすればよい」という提案にたいし、「俺には使命がある」と返した。だが、マカロフは一歩も引かず、「その使命とやらは、ギルドに入っていたらできないことかね?」という言葉に折れ、加入を決意した。
また一緒に入れると思ったエルザとジェラールは飛び跳ねて喜びを見せる。それを微笑を浮かべながら見ていると、マカロフが「お主の実力を見たい」と言ってきたので、了承する。なんでも、一週間後にギルド最強の魔導士、ギルダーツが帰って来るらしいので、その男と戦い、実力を見たいそうだ。アレンはそれについても承諾した。
マカロフは「よし!」と話を終わらせ、ギルドのメンバーに、アレン達3人を紹介した。
エルザとジェラールに対しては「可愛い」と言葉を掛け、アレンに関しては「超イケメン!!」と興奮している様子だった。
そうして、3人はフェアリーテイルに所属することになった。
所属から1週間の間に、アレンは様々な経験をした。アレンはまず家を購入し、一先ずは3人一緒に過ごすことにした。まずは、教団のお金は家を買ってもまだ3か月ほどは問題なく暮らせるくらいのお金があり、生活に支障はなかった。また、エルザとジェラールの分のお金には一切手を付けず、「まだ子どもだから、必要な時に使えるように取っておけ」とアレンは言葉を掛けた。家が決まると、ギルドの仲間や街の住民と積極的に関わり、元々明るく人当たりの良いアレンは、イケメンと頼りになるということもあり、瞬く間にとけこんでいた。
そして1週間がたち、ギルダーツが帰ってくると、ギルドの前の広場で、ギルダーツとの手合わせが行われた。ギルダーツは最初、様子を見ながら戦おうとしたが、アレンが魔力を解放した時点で、「全力を出さないとまずい」という程の力を感じ、考えを改めた。マカロフ含め、まさかアレンの力がここまでだとは思っておらず、驚愕の表情を浮かべていた。結論を先に言えば、アレンの勝利であった。ギルダーツのクラッシュという魔法を使うが、そもそもアレンの動きが早すぎて、クラッシュが当たらない他、何とかクラッシュを当てても、魔法そのものを刀で切られてしまい、為す術がなかった。最終的にギルダーツは拳に魔力をこめ、アレンと殴り合いをするという選択に至ったが、これもアレンに複数の小さな傷を作り出すだけにとどまり、地面に倒れこんでしまった。ギルダーツの「俺の負けだ」という言葉を皮切りに、ギルド前は大賑わいを見せていた。
アレンの圧倒的な強さに、エルザとジェラールが惚れ惚れをしていたのはいうまでもない。
戦いが終わると、アレンとギルダーツは握手をし、その後は宴会となった。
アレンとギルダーツの戦いの後、ギルドは大いに盛り上がっていた。
皆が話すのは2人の勝負についてで、戦いの余韻に浸っていた。特にアレンの強さを語るものは多く、それを聞いたエルザとジェラールはとても嬉しそうであった。
マカロフとギルダーツも、アレンの強さを褒め、3人で会話を繰り広げながら酒を酌み交わしていた。マカロフは、「お主の使命とはなんじゃ?」という質問をするが、アレンは黙りこくってしまう。「話せる時が来たら話してくれ」というマカロフに、アレンは「すまんな」と返す。
マカロフはアレンが旅に出るという話になると、その前に皆を鍛えて欲しいとお願いした。アレンはその願いを受け、希望する者全員に簡易的ではあるが、修行をつけることにした。
特に、カナという少女の熱の入り方は異常であった。アレンはそんなカナに「焦らず、ゆっくりとな」と言葉を掛け、頭を撫でる。そして、「女の子なんだから、笑顔も大事だぞ!可愛いんだから」と言葉を掛ける。カナは顔を真っ赤にして恥ずかしがっていたが、アレンの言葉を聞き、笑顔を見せた。
ギルダーツとの戦いは、マグノリアの街にも広がり、同じくそこまでの実力があったとは思わなかった住民は、さらにアレンへの期待と信頼を寄せるようになった。
それからおよそ2週間後。
アレンはギルダーツとの戦いで実力を認められ、S級魔導士となった。アレンはマカロフの依頼で10年クエストをいくつか請負、出発することにした。エルザとカナは涙を浮かべながら、「絶対帰ってきてね!」とアレンに言葉を掛ける。アレンはそんな2人の頭を撫で、「わかった、必ず戻る」と言葉を掛ける。
アレンは、ギルドの皆に見送られながら、旅へと出発した。
後書き
・アレン‐イーグル:召喚時25歳→天狼島時34歳。モンスターハンターの世界で、ハンターとして生きていた男。生まれも育ちもカムラの里ということもあり、拠点としている。百竜夜行を完全撃退した功績に加え、数多のモンスターを狩猟したことから、G級ハンターとして活躍していた。百竜夜行完全終息後、他の里や村にも足を運ぶなど、のんびりと狩りに勤しんでいたさなか、女神によってフェアリーテイルの世界へ召喚?されてしまう。女神の願いでもある三天黒龍を倒せば、元の世界に帰ることができる。その時、アレンがどのような判断を下すかは、今はまだわからない。女神によって与えられた力により、ザ・ナイトという魔法を使用できる。また、与えられたもう一つの力に加え、フェアリーテイルの世界では珍しい魔法も使用するとかしないとか。単純な戦闘能力ならば、単騎でアクノロギアを超える力を有するが、アルバトリオンとミラボレアスには…。顔もよし、性格よし、体格よし、金ありのため、どちゃくそ女にもてる。加えて、本人は無自覚だが人を引き付ける力があり、老若男女とわず好かれる。他人からの尊敬などは理解し、受け止められるのだが、女性からの恋心には…。
・エルザ‐スカーレット:アレンに助けられたことで、恋心を抱く。恥ずかしさでうまく気持ちを伝えられないでいるが、同じ魔法ザ・ナイトを習得したことで、より親近感を覚え、アレンを慕うようになる。ジェラールとは、友達以上恋人未満の関係だと思っている。
・ジェラール‐フェルナンデス:アレンの強さに惹かれ、慕うようになる。中でも、アレンのスピードに憧れたこともあり、ミーティアの魔法を習得する。アレン曰く、「完璧に使いこなせれば、速度は俺より上の魔法となる」と言われたこともあり、日々精進している。エルザとは過去の辛さを分かち合える友だと思っている。また、エルザがアレンに恋心を抱いていることを知っており、陰ながら応援している。
・ギルダーツ‐クライブ:アレンの実力を認めている。アレンをもって、「油断したらただでは済まない相手」と言わしめる。アレンと同様に10年クエストなどに出ることが多く、ギルドにはほとんどいない。
・カナ‐アルベローナ:強くなりたいという気持ちが強く、アレンの強さを見て修行をつけてもらう。アレンから「可愛い女の子」という言葉を聞いて、それを皮切りに尊敬だけでなく恋心も抱くようになる。実は強さを求めるのは…。
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