インフィニット・ストラトス ~五年後のお話~
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学園生活
第十一話 師匠とか天災とか
病室
ここはIS学園内にある治療室である。
今、ここには一人の少年が寝かされている。
少年の名は西条輝龍。
そう、先ほどの戦いで気を失ってしまったのだ。
ISの絶対防御が働いたものの、メイの泰阿はそれを越える威力だったので輝龍の体はボロボロである。
それでも怪我をここまで抑えられたのはISのお陰であろう。
泰阿の一振りはそれほどの威力だったのである。
で、その泰阿を使った本人である雷美花は輝龍の寝ているベッドの横でイスに座り虚空を見据えていた。
仲間を傷つけたことはかなりのショックだったのだろう。
もうこの状態になってから三時間は経過している。
しばらくするとドアがノックされた。
「俺だ。入るぞ」
そう言って入ってきたのは織斑一夏である。
「あ、先生・・・」
そう答えたメイの声は朝の時とは打って変わりとてもか細いものであった。
「雷、まだいたのか・・・お前だって戦ったんだ。少しは休め」
「はい・・・」
返事はするものの全くそこから動く気はないようである。
「はぁ・・・一応あの謎のISについてわかったことを教えておく。あの二機は無人機だった。所属は不明。一機は大破でもう一機は今も調査中だ。今わかってるのはそんな感じだな。後、輝龍の怪我のことだが―――」
「!!」
メイは期待と不安が入り交じった目で一夏を見つめる。
「―――安静にしていれば三日ぐらいで退院できるそうだ。打撲とかは少し残るだろうけどな」
「本当ですか!」
それを聞いた美華の目から涙がこぼれる。
「良かった・・・リューの怪我がたいしたことなくて本当に良かった・・・」
そんな美華を見た一夏は少し微笑み部屋を出ていった。
__________
病室を出た一夏は考え事をしていた。
輝龍達と戦った謎のISについてである。
一夏達と戦ったISはずっと時間稼ぎをしていただけで大して前の無人機と違いはなかった。
しかし、輝龍達の方のISには新たな装備が加わっていた。
背中のAICとあの長い腕と大量の銃の三つ。
その中でもあの長い腕は異常である。
泰阿の一撃を受けたというのに全く傷がなかったのだ。
直接腕に当たってないとしてもあの威力の攻撃を受けたのだから傷ぐらいついて当たり前なのだ。それなのに無傷ということは恐ろしい硬さをしているということである。もし腕で泰阿を受け止められていたら倒せていなかっただろう。
輝龍が腕を抑えたのは僥倖だったと言えるだろう。
しかし本当に輝龍が腕を抑えたのは偶然だったのだろうか。
もしも輝龍と雷の装備を知っていて、二人のことをよく知っているような人であればこの状況を狙って再現できるのではないか。
道連れにするしかないような状況になる装備を使い、あたかも輝龍達が考えた作戦かのように誘導する。一見不可能のようなことだがそれをあの天災
・・
は可能にする。通常ではあり得ない武器を作るぐらいはあの人には余裕だろう。それこそ、そんなの夕食前だね!とか言いながら。
しかし、これを実現するには輝龍達の事をよく知っている人物が必要になってくる。
と言うことは、だ。
もしこの一連の出来事が仕組まれていたとしたら無人機で襲撃したのはあの天災と輝龍達の知り合いということになってしまう。
ただの考えすぎで仕組まれてなんかいなかったのならいいんだが・・・。
「おっと」
「うわっ!」
そんなことを考えていたら角で人と当たってしまった。
「すみません。大丈夫ですか?」
「ああ、こちらこそすまないね」
そう言って俺が通ってきた道を行ってしまった。
今のは一体誰だろう?
とても赤色が印象に強い人だったが。
__________________
病室
「ここだな」
ここは輝龍が寝ている部屋のドアの前である。赤色はちょうど病室の目の前に居る。
「さて、弟子の様子はどんなんかな?」
そんなことを呟きながら隠れる気もないように堂々とドアを開けて中に入る。病室の中はベットに輝龍が寝ていてそれに寄り添うようにメイがイスに座って寝ていた。
(どうやらメイは疲れて寝ちゃったようだね。ま、私からすれば気絶させる手間が省けたって感じかな)
赤色はベットの近くまで行くとメイを抱え上げて他の空いているベットに寝かせる。そして寝かせた後、おもむろに軽い準備運動し始めた。
「さて、やるかな♪」
そう呟くと赤色は軽くジャンプし、次の瞬間―――
「起っきろーーーーー!!!」
「!!!!」
思いっきり全体重をかけて鳩尾に肘鉄を喰らわせた。
怪我をして入院している相手に思いきっり。
喰らった輝龍は痛みで目を覚ましたが悶え苦しんでいる。
鳩尾に喰らったのでうまく呼吸が出来ないようだ。
「うがぁ・・・一体誰がこんなことを・・・」
「おいおい、そんなのあたししか居ないだろ~」
「え?」
輝龍は声をしたほうへ振り向き、赤色を見つける。
「し、師匠・・・?」
「そうだよ、お前の愛しい愛しい師匠が会いに来てやったぞ」
「・・・久しぶりの再開がこれかよ」
例え再開できて嬉しくてもこの痛みで吹き飛ぶだろう。
「というか何故鳩尾を・・・?」
「んー?お前がもし叫んだりしたら面倒だからね」
「そんな理由で全身傷だらけの俺に攻撃したのかよ・・・」
そんな理由で弟子を攻撃する師匠。ひどすぎる。
「というか何でこんなところに来てるんですか・・・?」
「だから弟子に会うためだよ」
「あ、嘘はいいんで」
「嘘ではないんだけどな・・・ま、本命は仕事だよ。ついでにお前が成長したか見に来たんだよ。あんまり成長して無くて残念だったけどね」
「? まだ俺が戦ってるとこ見せてないでしょ?」
「あ、そういえば言ってなかったな。今日の無人機は―――」
「あーーーーーーちゃーーーーーーん!!!」
師匠が話している途中にいきなり窓からニンジンが突っ込んできた。
部屋の中に勢いよくガラスの破片が飛び散る。
突っ込んできたニンジンは床に突き刺さり止まる。
「一体何が!?」
「あー心配すんな。知り合いだから」
「知り合い!?」
正直ニンジンで突っ込んでくる知り合いは御免である。
そんなことを話していたらニンジンから煙が出てきて二つに割れる。
その中から出てきたのは一人の女性だった。
「あれ?この人は・・・」
「やあやあやあやあやあ、みんな大好き束さんだよ!!」
「やっぱり・・・篠
しの
ノ之
のの
束だ・・・」
何故全国指名手配の人がこんなところに?
しかも師匠さっき知り合いって言ってたよな?
「束・・・仮にも指名手配されてるんだから少しは気をつけなよ・・・」
「大丈夫だよあーちゃん!世界の警察如きに私は捕まらないからね!」
「まあそれもそうだね・・・」
「おや?そこのベットにいるのはあーちゃんの弟子かい??」
「ああそうだよ」
「やあやあ君が西条輝龍君かな??」
「あ、はい。そうですけど・・・」
「じゃあ君のISを見せてくれないかい?束さんはいっくんの『白式』と同じで興味津々なのだよ」
いっくん?織斑先生のことか?
「あ、はい。別にいいですけど・・・今はちょっと勘弁してもらえますか?さすがに今はこの怪我で展開できないんで」
「別に展開しなくていいよ、きっくん」
「きっくん!?」
「束は基本あだ名でしか呼ばないからな。お前は輝龍だからきっくんだな」
「そんな安易な・・・」
「シンプルが一番だからな」
「というか展開しなくていいってどういうことですか?」
「こういうことだよ。てやっ!」
掛け声と共に束さんが俺の待機状態でブレスレットになっているISをぺチンと叩く。
すると何にもしていないのに俺から離れたところでISが展開された。
「え?今のってあの無人機が使ってきた武器じゃ・・・?」
「そうだよ!あれを作ったのは私だからね!ぶいぶい!」
「え、ってことはあの無人機を送ってきたのは・・・」
「そう、束さんとあーちゃんだよ!!」
「・・・師匠、何のためにこんなことやったんですか」
こんな怪我まで負ったのだから理由を聞くのは当然だろう。
「ん?お土産」
何も無かったかのような顔で平然と答える師匠を見たら何だか頭が痛くなってきた。
時たま師匠は変な事をしだすからな・・・
こんな時でも隣のベットで寝ているメイはとても羨ましく思えた。
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