イベリス
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第五十八話 東京の紫陽花その二
「この前歌劇ご覧に行かれたし」
「椿ですか」
「椿姫ね」
この作品をというのだ。
「観に行かれていたわ」
「歌劇もご覧になられるんですね」
「ええ、新国立歌劇場でね」
そちらでというのだ。
「時々。お店がお休みの時に行かれてるわ」
「そうですか」
「このお店は夜もやっていて歌劇の上演は夜だけれど」
それでもというのだ。
「お仕事がない時にね」
「観に行かれてるんですね」
「あと海外に行かれた時も」
「そういえば時々おられないですね」
「代理の人が来られてるわね」
「その時は」
「そうした時もね」
海外でというのだ。
「ご覧になられてるそうよ」
「歌劇もお好きなんですね」
「それで椿姫という作品もね」
「お好きですか」
「そうみたいよ」
「歌劇もですか」
「芸術もお好きなの」
こう話した。
「あの人は」
「そうでしたか」
「多趣味な人で」
「芸術もですか」
「お好きなのよ、お酒に読書にね」
それにというのだ。
「お食事にね」
「芸術もですか」
「ええ、ただギャンブルとかはされないわ」
「強そうですけれど」
「私もそう思うけれど」
それでもというのだ。
「あの人はね」
「ギャンブルはされないですか」
「ご自身の占いを使われたら」
「かなり勝てますよね」
「けれどプライベートのことにはね」
「占いはされないですか」
「店長さんご自身のことはね」
それ故にというのだ。
「だからギャンブルもなのよ」
「されないんですね」
「あの人はね」
「そこはポリシーですか」
「そうみたいね、それでお花にお話を戻すと」
「どんなお花もお好きですか」
「そうなのよ」
その紫陽花を観つつ話した。
「そしてお詳しいのよ」
「お花のことにも」
「お花の色々なお話をご存知だし種類とかもね」
「お詳しいですか」
「そうなの」
これがというのだ。
「それで薔薇を使ったお料理もお好きらしいよ」
「薔薇って食べられるんですね」
「あっ、小山さん知らなかったの」
「はい。薔薇って食べられるんですね」
「そうなの。あの花びらをね」
薔薇のそれをいうのだ。
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