クルティウス
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第一章
クルティウス
ローマに伝わる話である。
「何だこれは」
「急に出て来たぞ」
「どういうことなんだ」
ある時ローマの真ん中にある広場にとてつもなく大きな割れ目が生じた、ローマの者達はこの異変にいぶかしんだ。
「不吉なものではないのか」
「このまま放っておいていいのか」
「何とかすべきであろう」
「ここはどうすればいいのだ」
ローマの誰もがいぶかしんでだった。
考え話をした、それは元老院でも同じだった。
元老院の議員達は口々に言い合った。
「あの割れ目は何だ」
「地の底に続いているのか」
「誰か中に入って調べてみるべきか」
「いや、入った者が出られないのではないのか」
「市民に任せられないぞ」
「奴隷といっても高価だぞ」
奴隷を行かせるにしてもというのだ。
「折角高値で買って大事に扱っているんだ」
「そんな奴隷を粗末に出来るものか」
「犬や馬でもだ」
「中に入れて調べさせるにしてもだ」
「戻って来る保証はない」
「調べ様がない」
「だがどうなっているかわからない」
その割れ目はというのだ。
「全くな」
「しかしどうにかしなくてはいけない」
「あのまま放ってはおけないぞ」
「どうにかすべきだが」
「一体どうすればいいのだ」
元老院の議員達も考えた、だがその中で。
ある議員がこう言った。
「ここは神託を伺おう」
「神託か」
「神託に従うか」
「それを受けてか」
「そうしてそれによるか」
他の議員達もその議員達の言葉に頷いた、こうして元老院は神託を伺ってそれに従うことに決めて執政官もそれでよしとした。
アテネのデルフォイにまで人をやって神託を伺うと。
「国の中でか」
「最も貴重な宝物を投げ入れるとか」
「そうすればあの割れ目は閉じられるか」
「そうなるか」
「その様だ」
デルフォイに伺った者が議員達に答えた。
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