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八条学園騒動記

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第六百六十二話 気付けば二本その十八

「一度半殺しどころか何度も九割殺しにでも遭わねばな」
「わかりませんか」
「世の中どんな哲学でも信仰でも救われる奴もおるがのう」 
 あまりにも程度が低くだ、人間性も劣悪過ぎると誰が何をしても救うことは出来なくなってしまうのだ。
「そんな奴の場合もじゃ」
「ありますか」
「まあそんな奴はそうなってもな」 
 何度も九割殺しでもというのだ。
「わからんが」
「それでもですか」
「更正するならな」
「そこまでなってですか」
「やっとじゃ」
「更正しますか」
「そうなるわ」
 こう言うのだった。
「というかそこまでなってじゃ」
「やっと更正するレベルの馬鹿なんですね」
「更正せんかも知れんがな」
「馬鹿過ぎてですか」
「そうじゃ」
「まあそんな奴がどうなっても知らないですがね」
 野上君の言葉は今はクールなものだった。
「僕も」
「碌な奴ではないからのう」
「碌なこともしてないでしょうし」
「暴走して正しいことをしていると言うならな」
「それこそ暴力でも何でもありですよ」
 その行いたるやというのだ。
「運動家まんまですよ」
「運動家にはそんな奴が多いぞ」
「そうですよね」
「それでその原作者もじゃ」
「運動家だったんですね」
「まんまであった」
 博士は答えた。
「その主張や行動はな」
「そうだったんですね」
「それで運動家の雑誌にもな」 
 週刊金曜日だったという、極左プロ市民やそのシンパが読む雑誌であった。
「書いておった」
「そうだったんですね」
「それでな」
 それでというのだ。
「そのことも批判された」
「当然ですね」
「全く酷い漫画であった」
「害毒が物凄かったんですね」
「何十年も害毒を垂れ流しておった」
「食べものの美味しさを伝えるんじゃなくて」
「それよりもじゃ」
 博士は苦い顔で話した。
「最低の野蛮人しか出なくてな」
「極左プロパガンダでしたか」
「大人も子供も鵜呑みにするなら絶対に読んではいかん」 
 博士は断言した。
「そうした漫画であった」
「本当に最悪な漫画ですね」
「世の中色々な漫画が出て来たし今も出ておるが」
「最悪の部類だったんですね」
「そうであった」
 まさにというのだ。
「鵜呑みにすれば馬鹿になるな」
「賢くならずに」
「そんな漫画であった」
「偏った知識と思想を植え付けられて」
「短気で下品で無教養な野蛮人が正しいと認識するな」
「その漫画の真似は絶対にしたら駄目ですね」
「したら人間として終わりじゃ」
 博士はまた言い切った。
「漫画と現実の区別はつけねばならんが」
「現実を描いてそうな漫画でもですね」
「中にはそんなものもあるのじゃ」
 こう言って博士は野上君にもコーヒーを出させた、だが彼がコーヒーを口にしたときに博士は恐ろしい計画を言うのだった。


気付けば二本   完


                   2022・4・2 
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