イベリス
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第五十七話 梅雨だからその十
「はっきりとは言えないけれど」
「それでもですね」
「そう、どんな終わり方するか」
「楽しみなんですね」
「大団円だといいわね」
自分のその願いも話した。
「本当にね」
「それは思いますよね」
「好きな作品ならちゃんと終わってね」
「その結末がいいものであって欲しいですよね」
「やっぱりね」
こう咲に言うのだった、それも笑顔で。
「その時を楽しみにしてるわ」
「いい結末が見られる時を」
「その時をね」
まさにというのだ。
「色々なキャラを見ながら」
「そうなんですね」
「好きな作品にはいい結末だね」
部長も言ってきた。
「未完が一番嫌だよ」
「それもありますからね」
「色々な事情でね」
「未完は本当に嫌ですね」
「文学作品でも多いけれどね」
それだけでなくというのだ。
「漫画でもあるからね」
「未完の作品は」
「一番酷いのは作者さんが描かない場合だよ」
このケースでの未完だというのだ。
「どういうつもりかね」
「一旦描いたならちゃんと終わらせて欲しいですね」
「十年連載ほったらかしとかね」
「休載ばかりとかですね」
「それは駄目だよ、ずっと描いていて結局未完の場合もあるけれど」
三十年以上描き作者の死去により未完に終わった作品も存在する、完結させるか作者の寿命が尽きるかは常に存在している問題だ。
「描かないで未完はね」
「一番よくないですね」
「本当に一旦描いたなら」
「出来る限り放り出さないで」
「描いていって」
そうしていってというのだ。
「終わらせる」
「それがいいですね」
「読者としてもね、それに作者の義務だよ」
「作品を完結させることは」
「そのこともね」
こう咲に言うのだった。
「義務なんだよ」
「終わらせることも」
「そのこともね」
「はじめたら終わらせるですか」
「どんな作品でもね」
部長は咲に強く言った。
「そうしないと駄目だよ」
「未完は駄目ですね」
「本当にね、最悪なのは作者さんが飽きてね」
そうなってというのだ。
「ほったらかしにするパターンだよ」
「ネット小説じゃよくありますね」
「それを漫画でもやる人いるね」
「それでそうした人はですね」
「本当に困るよ」
こう言うのだった。
「最後まで描いて」
「完結させることですね」
「どんな作品でもね、未完の作品は命が宿っていないっていうか」
「そこまでなんですね」
「そうも思うよ」
部長の顔は真剣なものだった。
「どうもね」
「命がないですか」
「うん、終わらないとね」
さもないと、というのだ。
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