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クビになってよかった会社

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第三章

「残業もそんなに多くないし」
「毎日じゃなくてか」
「長くて一時間半位だよ、残業手当も出るさ」
「そうなんだな」
「それで給料もよくてな」
 こちらも大丈夫だというのだ。
「社員のことも考えてくれてるよ」
「いい職場なんだな」
「そんなに大きな工場じゃないけれどな」
 それでもというのだ。
「ちゃんと社員のことも考えてくれている」
「そうした工場か」
「ああ、パワハラやモラハラもないしな」
 そうした心配もないというのだ。
「本当にな」
「いい職場に入られたってか」
「思ってるよ」 
 ハンバーグ定食を食べつつ話した、伊藤は海老フライ定食を食べている。二人共向かい合って食べつつ話をしている。
「本当に」
「それは何よりだな、あとお前が前いた酒屋な」
 伊藤はこちらの話をしてきた。
「今大変らしいぞ」
「どうなってるんだ?」
「社長やそれぞれの店の店長のやり方があんまりでな」
「俺に対してしていたみたいでか」
「ブラックだってことが知れ渡ってな」
 そうなってというのだ。
「社員の人がネットで告発して」
「それでか」
「今炎上してな」
 そうなってというのだ。
「県内でそこでもの買わない人が増えて社員も辞めて抗議も殺到してな」
「潰れそうだな、話を聞いてると」
「そうなるかもな、そんなとこだったからな」
 伊藤は海老フライでご飯を食べつつ言った。
「お前いいとこに就職も出来たし」
「クビになってか」
「かえってよかったかもな」
「碌でもない場所だとクビになってもいいか」
「そこにいてもいいことないからな」
 だからだというのだ。
「それじゃあな」
「かえってクビになってか」
「よかったかもな」
「そう言われるとそうか、あの時の俺はボロボロだったしな」
「今は活き活きしてるよ」
「趣味も満喫出来てるしな」 
 ゲームである、三森はそれが好きなのだ。
「今は快適だよ」
「そうか、じゃあこれからも仕事頑張れよ」
「そうしていくな」
 伊藤に笑って応えた、その笑顔は実に明るいものだった。
 後日二人はその酒屋が評判が悪くなり経営が傾いて潰れたと聞いた、それで尚更クビになってよかったと思ったのだった。


クビになってよかった会社   完


                  2022・6・27 
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