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モンスターハンター 〜故郷なきクルセイダー〜

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霊峰編 決戦巨龍大渓谷リュドラキア 其の八

 
前書き
◇今話の登場ハンター

◇アルター・グラミリウス
 古龍討伐隊だった祖父から譲り受けた装備を使い、祖父を引退に追い込んだ古龍を見つけ出すために上位昇格を目指している寡黙な女ハンター。武器は鬼ヶ島を使用し、防具はカブラシリーズ一式を着用している。当時の年齢は19歳。
 ※原案はリン・オルタナティブ先生。

◇ジェーン・バレッタ
 勝ち気で負けず嫌いな女性ハンターであり、故郷の村のために資金稼ぎに勤しんでいる。武器はスティールアサルトを使用し、防具はレザーライトシリーズ一式を着用している。当時の年齢は16歳。
 ※原案はMrR先生。

◇リリィベル
 孤児として苦難の日々を生きて来た小柄な少女ハンターであり、その生い立ちもあってか非常に金にがめつい一面がある。武器はボーンシューターを使用し、防具はレザーライトシリーズ一式を着用している。当時の年齢は14歳。
 ※原案はリオンテイル先生。
 

 
「ロエーチェ達の砲撃が止まり掛けている……!? 一体、弾薬庫までの通路で何が起きてるんだ……!?」

 アーギル達の救援に向かったエレオノール達が、通路を妨害していたドスイーオスの討伐に挑んでいた頃。
 ラオシャンロンの進路上にある別の城塞で迎撃に当たっている他のハンター達は、老山龍に撃ち込む次弾の装填を完了させていた。再び無数の砲台が激しく火を噴き、老山龍の全身に炸裂して行く。

「よぉし……決まったわッ! 老山龍め、ざまぁ見なさいッ!」

 堅牢なラオシャンロンの外殻にも、ようやく目に見える傷が残り始めていた。その頭部に聳え立っていた一角がついにへし折れた光景に、確かな手応えを得たハンター達は力強く拳を震わせている。

「……!? ねぇッ、ちょっと様子が変よ!? 動きが鈍るどころか……ますます速くなってるッ!?」

 ――だが、これしきで侵攻を諦めるような老山龍ではない。彼の巨龍は象徴的な一角を失いながらも、そのまま低くくぐもった咆哮と共に、進撃し続けていた。

「……! おい、次弾装填急げッ! 突っ込んで来るぞッ!」
「アカン、ホンマにマズいッ! 最悪全滅やッ!」
「だ、ダメだ! 迎撃はもう間に合わないッ! 皆、退避だ! 逃げろォオーッ!」

 さらに。ラオシャンロンの移動速度は、追い詰められたことによってさらに増していたのである。無数の砲台を並べていた木製の城塞は、その勢いのまま突き破られ、瞬く間に瓦解してしまうのだった。

「ぐわぁあぁああーッ!」

 そこに設置されていた大砲で迎撃を試みていたハンター達は、1人残らずその突撃に巻き込まれ、城塞もろとも吹き飛ばされていた。さらに彼らの頭上に、大量の残骸が降り掛かって来たのである。

「がぁあぁァッ……!」

 砦もろとも老山龍に撥ね飛ばされてしまった彼らに、その残骸を回避する術はなかった。狩人達は為す術もなく、降り注ぐ木製の残骸に飲み込まれ、生き埋めにされてしまう。

 そんな惨劇を尻目に、ラオシャンロンはただ真っ直ぐに「最後の砦」となる城門を目指していた。
 そこを突破されたら、もう取り返しは付かない。その向こうにある人里は老山龍によって、跡形もなく踏み潰されてしまうことになる。

「この、ままで……終われるかァアッ!」

 そんなことは、決して許さない。自分達は、そのためにハンターになったのだから。
 狩人達はその信念を糧に常人ならざる馬鹿力を発揮して、自分達を生き埋めにしていた木製の残骸を、自力で跳ね除けている。

 大砲の中に残っていた砲弾の暴発による爆炎。老山龍の体当たり。残骸の直撃。その全てを受けてしまった彼らの防具はすでに崩壊寸前であり、ハンター達自身も血だるまとなっていた。

 だが、どれほど頭部から鮮血を滴らせようとも。彼らの眼には、恐れや諦めといった負の感情など微塵も顕れてはいない。
 城塞もろとも砲台を破壊された今でもなお、彼らは全く折れることなく、傷付いた身体を引きずるように老山龍を追い始めていたのである。

「……く、ふふっ。これも一つの経験……というものなのかも知れんな。上位に上がるまでの予行演習には、ちょうどいい塩梅だッ……!」

 カブラシリーズ一式の防具を纏う女ハンターこと、アルター・グラミリウス。鬼ヶ島の銃身を杖代わりにして歩み続けている彼女は、満身創痍になりながらも口角を吊り上げ、軽口を叩いていた。
 古龍討伐隊だった祖父から譲り受けたそのライトボウガンを武器に、祖父を引退に追い込んだ古龍を見つけ出す旅を続けて来た彼女にとっては、今回のクエストも通過点の一つに過ぎないのだろう。

「冗談じゃ、ないわッ……! 私はまだまだ、強くならなくちゃいけないのッ……! こんなところで、倒れてる場合じゃないんだからぁッ……!」

 そんなアルターの背を追うように、スティールアサルトを杖にして歩みを進めている少女ガンナーが居た。

 緑色の髪をショートヘアに切り揃えている彼女の名は、ジェーン・バレッタ。故郷の村への仕送りのために資金稼ぎに奔走しており、その言動通りな負けん気の強さを武器にしている若き女傑の1人なのだ。
 すでに彼女の柔肌を守っていたレザーライトシリーズ一式の防具は、見るも無惨な姿になっているのだが――どれほど傷付こうとも、彼女の気高い眼はその輝きを保ち続けている。

「……こ、んなの、割に、合わな過ぎるってのッ……! ほんっと、やってられないッ……! これで報酬がしょっぱかったら、ギルドマスターの眉間に1発ブチ込んでやるんだからぁッ……!」

 ジェーンと同じレザーライトシリーズ一式の防具を纏っていた少女――リリィベル。今回の作戦に参加した下位ハンター達の中でも一際小柄な彼女は、身の丈を越えるボーンシューターを引き摺りながら譫言のように愚痴を溢していた。

 貧しい孤児として過ごして来た半生の中で得た、「金は命より重い」という信条。そのポリシーに則り、守銭奴上等の精神で活動して来た彼女は、今回のような「割に合わない危険なクエスト」を特に忌み嫌っている。
 それでも彼女は、口先では文句ばかり垂れながらも――共に上位昇格を目指して来た仲間達を見捨てることなく、己のポリシーを曲げてまで参加していたのだ。倒れかけていたジェーンに肩を貸しながら、彼女はぶつぶつと恨み言を連ねている。
 
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