得意料理は実は違う
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第一章
得意料理は実は違う
博多の女子高生田中麻里佳は一五〇ない背であどけない童顔で赤がかった髪の毛を左右で団子にしている。ピンクのブラウスに赤いミニスカートという通っている高校の夏の制服の一つを着ている。
よく所属している料理部で得意料理はスイーツと言ってだ。
可愛いものを作っている、そうしていつも自分のスイーツを学校の皆特に男子に振舞って自分をアピールしていた。
だが通っている高校のクラスメイトでバスケ部に所属している小山順子金色にしたショートヘアに一七〇近い長身と鋭い光を放つ小さな目に薄い唇の彼女は言うのだった。昔懐かしのくるぶしまでの制服の黒いスカートに白のブラウスが昭和を醸し出している。制服は色は高校規定のものの一つだがスカートは校則違反であるがそれで通している。
「きさんよ、実は」
「黙ってるとよ」
可愛いソプラノ声にドスを入れて返す麻里佳だった。
「幼稚園からのダチでも」
「それでもばい」
「これでも苦労してるとよ」
可愛い表情は全くないうえでの言葉だった。
「うちも」
「可愛い女の子でいるのもばい」
「そうたい、きさんもあれとよ」
「焼き鳥屋の娘ばってん」
「うちは居酒屋たい」
「同じ繁華街の」
「そういうのばらすなたい、小学校から地出さない様にしてるとよ」
こう順子に言うのだった。
「ずっと一緒で気心の知れたきさん以外には
「それでいつもスイーツ作ってるたい」
「部活でもな、普段は可愛い女のとよ」
「しかしそげなこと別によかとよ」
二人きりなのでだ、順子は麻里佳にありのまま言った。
「きさんが繁華街の居酒屋の娘でも」
「それも柄の悪か」
「昔はヤクザ屋さんがゴロゴロいた」
「世の中乙女とか萌えとよ」
「それでその恰好たいか」
「キャラも作ってるとよ」
皆が好きな様なそれにというのだ。
「そうたい好きなチームはホークスで」
「お互いにとよ」
「あの野次の汚い応援も」
「内緒たい」
「時々球場に行くこともたい」
応援の為であることは言うまでもない。
「全部とよ」
「内緒たいな」
「そうたい、よかたいな」
「全く、隠してどうするたい」
「さもないと変に思われるとよ」
麻里佳は順子にこう言ってだった。
高校では地は彼女以外には出さず可愛らしい女の子を演じて可愛く甘いスイーツばかり作っていて弁当もだった。
そうしたものばかり作っていた、だが。
文化祭の料理部の出しものを何にするかと部活でミーティングをしている時にだった。
ある部員がこんなことを言った。
「味噌ラーメンにしません?麺は縮れで」
「そげなもんあかんに決まってるとよ!」
そう聞いた瞬間だった、麻里佳は。
激昂してだ、立ち上がってその部員に鬼の形相で告げた。
「ここは博多たい!福岡県たい!」
「えっ、田中さんどうしたの?」
「急に怒りだしたけれど」
「っていうかいつものですですの口調何処に?」
「可愛い感じだったのに」
「それが凄い博多弁で」
「しかも怖い顔してるけれど」
他の部員達はその麻里佳を見て驚いた。
「どうしたの?」
「一体何があったの?」
「これまた急に」
「博多のラーメンは豚骨しかなかとよ!」
麻里佳は手を拳にして力説した。
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