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猫は言うことを聞かない

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第二章

「そんな風よ、夜寝てたら急にお腹の上にどすんと来ることあるし」
「それは大変ね」
「こらって怒ったら跳んで逃げるし」
「悪いこともするのね」
「悪戯もね。もう毎日大変よ」
「大人しそうに見えても」
「全然よ。寝ている時以外はね」
 それこそという口調での言葉だった。
「やんちゃよ」
「そんな娘なのね」
「ええ、猫は言うこと全然聞かないって言うけれど」
 家の窓から外を見ているミクを見つつ話した。
「本当ね」
「うちは金魚だからわからないけれど」
「猫はそうよ、けれどね」
 ここでだ、美咲は。
 笑ってだ、紅茶を飲みながら話した。
「それがいいのよ」
「我儘で言うこと聞かないのが」
「そう、退屈しないし」
 一緒にいてというのだ。
「そこが可愛いのよ」
「我儘で言うこと聞かないことが」
「悪さをするところがね。見ているとね」
 猫をというのだ。
「それだけでよ」
「いいのね」
「うちに来てくれてよかったわ、だからずっとね」
「これからもなのね」
「一緒よ。お父さんとお母さんなんてね」 
 自分の両親はというと。
「もう毎日ね」
「あの娘にかかりきり?」
「そうなの。家の話題も大半ミクになったし」
「もう完全に入れ上げてるわね」
「そうなっているわ、うちに来てくれて本当によかったわ」
 美咲は満面の笑みで話した、そしてだった。
 自分達のところに来たミクにだ、笑顔で声をかけた。
「何?遊んで欲しいの?」
「ニャンニャン」
 美咲のズボンの袖を噛んでからだった、ミクは。
 床の上にごろんと寝転がって腹を見せてきた。美咲がその腹を摩るとだった。
 猫は喉を鳴らした、すると美咲だけでなく好美も笑顔になった。そして。
 美咲の一家はミクと末永く暮らした、その間ずっと彼女のことを笑顔で話した。我儘で言うことを聞かない彼女のことをそうしたのだった。


猫は言うことを聞かない   完


                   2022・6・21 
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