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純情チャラ男

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第二章

 バースに告白しようとするとだ、青柳はこう言った。
「常識を言うけどな」
「常識イコール法律っすね、やっぱり犯罪は駄目っす」
「いや、法律と常識は違うからな」
 青柳はそれは違うとした。
「法律は日本で絶対に守るものでな」
「常識は何っすか?」
「それぞれの場所で不文律で守るべきものだよ」
 そうだと話した。
「それでサラリーマンはな」
「いつも先輩が言ってる様にっすか」
「ああ、ホストみたいな恰好じゃなくてな」
「俺タトゥー入れてないっすよ」
「ホストでもタトゥー入れたらまずいだろ」
「だからしてないっす」
「そんなの言うまでもなくてな、お前のその恰好とな」
 それでというのだ。
「高校生みたいな喋り方はだよ」
「駄目っすか」
「そうだよ、自衛官の人達みたいにぴしっとしろとは言わないけれどな」
 それでもというのだ。
「周りの人みたいにだよ」
「サラリーマンの標準スタイルじゃないと駄目っすか」
「ここは会社だからな」
 それでというのだ。
「サラリーマンの場所だからな」
「バースさんに相応しい人ならっすか」
「そうだよ、サラリーマンの恰好と口調だよ」
「自己主張駄目っすか」
「それで告白して断られたいならいいけれどな」
「わかったっす」
 ようやくという感じで頷いてだった。
 西は次の日出勤するとだった。
 黒髪でスポーツ刈りになってだった、アクセサリーも着けず。
 口調も営業で他の会社の者と話す様にした、そうしてだった。
 暫くそれで過ごして定着した時にいよいよバースに告白しようとしたが。
 彼女はアメリカのオクラホマ支社に転勤となった、それで西は落胆しきって言った。
「世の中上手いかないですね」
「そうだよ、しかしな」
「しかし?」
「お前その方がいいぞ」
 青柳はその彼の肩に手を当てて話した。
「外見と口調はな」
「そうですか」
「サラリーマンらしくてな」
 そしてというのだ。
「似合っててな」
「そうですか」
「だからそのままいけよ、そうしたらな」
 西に笑って話した。
「またいい縁あるさ、だからな」
「気を取り直してですね」
「頑張っていこうな」
「そうします、励まして有り難うございます」
 西は青柳に礼を言ってだった。
 仕事に向かった、そして翌年バース以上に好みのタイプの女性と取引先で出会ってそうしてだった。
 交際まで至った、その上で幸せになったがもう彼はサラリーマン姿であり口調もそうだった。あのチャラチャラしたものは何処にもなかった。


純情チャラ男   完


                 2022・6・20 
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